半沢直樹原作の池井戸氏「見せつけられた役者の底力」作家 池井戸潤氏

書き進めるうちに
物語に命が宿り動き出す
その勢いを大事にしたい

――1枚の絵に秘められたミステリーや、不条理を突き付けてくる銀行の上層部と半沢の対決、意外性に満ちたエンディングと、今回も息もつかせぬストーリー展開を楽しませていただきました。物語のプロットはどのぐらい固めて執筆されるのでしょうか。

しっかりしたプロットをつくることはしません。ゆるゆる、「こんな感じかな」というぐらい。そもそも書き始める時に600枚ぐらい先のことが予測できるかというとそれは無理で、仮にその通り進んだとしたらそれは駄目な作品だと思います。小説は、登場人物のたった一言で話がガラッと変わってくるもの。書き進めるうちに物語に生命が宿り、化学変化がどんどん起きていく。その勢いを大事にして書くことが、すごく重要だと思っています。

――半沢直樹シリーズは小説のみならず、コミック、そしてドラマでも多くのファンの支持を集めています。この夏7年ぶりに制作されたテレビドラマ「半沢直樹」も大きな話題になりました。池井戸さんもドラマ制作に関わられたのでしょうか。

脚本以外は関わっていません。原作とドラマは別もので、僕は部外者です。キャストに口出しすることは一切ありませんし、脚本についても意見を求められなければ何も言いません。制作サイドには、自由にストーリーを変えてもらっていいと伝えています。

――ドラマは初回から20%超の視聴率が続く大ヒット。半沢役の堺雅人さんをはじめ、半沢と反目し合う大和田役の香川照之さん、伊佐山役の市川猿之助さんらの演技も話題になりました。

舞台出身の役者さんの底力を見せつけられました。まさに「芸達者」な役者さんたちの力がテレビドラマでも発揮された。ドラマ半沢直樹が本家本元の「顔芸」もすごい迫力で、視聴者を大いに楽しませてくれたと思います。

伊佐山といえば面白い話がありました。昔僕が勤めていたメガバンクの人たちと食事をしていた時に伊佐山の話が出て、僕が「あれはやり過ぎかな」と言ったら、その中の一人が、「いや、最近ああいう人いるんだよ、俺知ってるもん」と。驚きましたよ、あんなのが本当にいるんだ!と(笑)。

絶対にいないとは言い切れない、もしかしたらいるかもしれないと思えるギリギリのラインのキャラクターが、見る人を引き付けるのかもしれません。

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