2020/10/9
会話の減少がセックスレスの第一歩。会話と軽いスキンシップを増やしてみる(写真はイメージ=PIXTA)

痛みはホルモン補充で解決できます

患者さんの性に関する相談で結構多いのは、新しいパートナーができたときの悩みです。ずっと同じパートナーであれば、年齢とともに変わってくる自分の変化も自然に受け止められますが、ご縁があってパートナーが変わったとき、まあ盛り上がっているときですね。若いときと同じようにセックスの頻度が増すと、乾燥と摩擦によって痛みが生じます。でも、痛いからといって断りづらい。「なんとか相手の欲求に応じたい」という悩みで診察に来られる方も結構多いです。

このケースには2パターンあり、1つは自分にも欲求があるけれど性交痛を感じる場合。これは女性ホルモンを補充すると改善されます。萎縮性膣炎にはホルモン補充療法(HRT)が効果的です。全身に作用するHRTの経口剤や貼付剤、ジェル剤でも効果がありますし、局所的に作用する膣用のタブレット錠や軟こうなどで痛みを緩和することもできます。あとは適応外使用になりますが、シアリス(一般名タダラフィル)というED(勃起障害)治療薬を少量使うと症状が改善するというデータもあります。女性ホルモンの減少で痛みがあるときは、このいずれかでほとんどが解決しますね。

自分の気持ちを第一に

もう1つは、そもそも自分はあまりセックスがしたくないという場合。そのときは、「治療してまで頑張る意味はあるの?」ということは考えてもらっています。

セックスセラピーは、「相手を満足させる」「相手を受け入れる」ということが最終目標ではありません。あくまで本人が満たされるということが大事。なので、そこをまず考えて、本人がもっと楽しみたいのであれば薬で治療することはお勧めです。

そうではなく、「自分がしたいわけではないけど、相手が納得しないから」であれば、潜在的なモラハラやドメスティックバイオレンス(DV)の可能性もあります。今でも性の相手は「妻の役目」と思っている向きもあるかもしれませんが、そこは自分の気持ちを第一に考えてみてください。

もっと言えば、40代は望まぬ妊娠をする人も意外と多いのです。40歳以上の中絶件数も少なくないのが現状です。もう40代だからと油断しないで、妊娠を望まないのであれば閉経するまでは避妊をしましょう。

更年期をきっかけに体と向き合う

セックスレスは本来、治療するというより、予防するものと考えていたほうがいいかもしれません。男でも女でも、断られると心が折れることがありますから。「無理!」と一方的に拒否するのではなく、「応えたい気持ちはあるんだけど、最近痛みがあって……」と、自分の体の状態や気持ちを言葉できちんと伝えることが大切です。逆にパートナーの要求が過剰な場合も、更年期を一つのきっかけに自分の体の状態を伝えて考え直してもらう機会にできるといいですね。

宋美玄
産婦人科専門医、性科学者、丸の内の森レディースクリニック院長。1976年、兵庫県神戸市生まれ。2001年に大阪大学医学部を卒業、大阪大学医学部付属病院産婦人科に入局。周産期医療を中心に産婦人科医療に携わる。University College Of London Hospitalに留学し胎児超音波を学ぶ。12年1月に第1子を出産。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)、『産婦人科医ママの妊娠・出産パーフェクトBOOK』(メタモル出版)、『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』(小学館)など著書多数。女性の性、妊娠、出産について積極的な啓蒙活動に励んでいる。

(取材・文 竹下順子=日経ARIA編集部)

[日経ARIA 2020年5月27日付の掲載記事を基に再構成]

大人の「働く・学ぶ・遊ぶ」を讃える!40~50代の働く女性向けWebメディア

『日経ARIA』(日経BP)は、40~50代の働く女性に向けて、「働く・学ぶ・遊ぶ」の上質な情報をお届けします。無料登録していただくと、会員限定記事をお読みいただけるほか、日経ARIAメールをお届け。有料登録していただくと特集や連載をすべてお読みいただけます。さらに、有料会員限定のオンライン会議室やプレミアムイベントへのご招待など、様々な特典を受けられます。