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久しぶりの演技 やっぱり役者って面白い(井上芳雄)

第77回

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NIKKEI STYLE

井上芳雄です。9月はミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の公演で全国を回っています。坂本真綾さんとの2人芝居で、2012年の初演以来、4回目の再演。劇場の再開後はショーやコンサートの公演が続いたので、最初から最後まで舞台で役を演じたのは久しぶり。やっぱり役者って面白いとあらためて思っています。

『ダディ~』は、8月に公演した『ナイツ・テイル in シンフォニックコンサート』と同じく、ジョン・ケアード(脚本・演出)とポール・ゴードン(音楽・作詞・編曲)の作品。ジーン・ウェブスターの小説『足ながおじさん』をミュージカル化したものです。孤児院で育ち、たぐいまれな文才を持つジルーシャを真綾さん。彼女の才能を見抜き、月に1度の手紙を自分宛に送ることを条件に、大学に行く学資を援助する慈善家のジャーヴィスを僕が演じます。2人は別々の場所にいるため、舞台上では顔を合わせることはなく、ジルーシャが書いた手紙を通して、お互いの気持ちを表現します。ディスタンス(距離)をずっととっている話なので、たまたま上演が決まっていたとはいえ、今の状況にあった作品です。

演出のジョンは英国にいるので、『ナイツ・テイル~』と同じくリモートでの稽古でした。3年ぶりの再演ですが、前回までよりもコミカルでエネルギッシュなジャーヴィスになっているかもしれません。というのも今回のジョンの演出は、ジャーヴィスは最初からジルーシャに心を開いていて、お客さまとも心を通わせてほしいということでした。なので、ちょっとやり過ぎかなというくらいリアクションをするし、それでお客さまの反応を見ながら演じるようにしています。

以前ジョンに言われたのは、ジャーヴィスは慈善家だけど、幼少期の経験もあって、人間関係を築いたり、人を愛することに臆病なところがある人物。だからジルーシャに興味を持ちながらも、すぐには心を開けないんだと。お客さまは、ジルーシャに対しては最初から味方になりたいと思うけど、ジャーヴィスにはそうでもない。けど、彼を知れば知るほど好きになっていくという演出だったと思います。

それが今回は、最初からジルーシャにひかれていることや、彼のチャーミングなところを出していいと言われました。理由は聞いてませんが、ジョンが考える今のジャーヴィス像なのかもしれません。この作品は世界中で上演されているので、それを踏まえて、少しずつ解釈が変わってきたのかもしれないです。

もともとジャーヴィスは、僕が役作りをしたというより、ジョンが創造した人物です。原作にはジルーシャが書いた手紙しか出てこなくて、そこにジャーヴィスはこんな人だという描写はあるけど、彼自身の言葉はありません。だからジャービスは、ジョン自身ではないにしても似ているところがあるし、彼の考えが強く反映されていると思います。

例えば、劇中でジャーヴィスが歌う『チャリティー』という曲では、人に何かを与えるのは難しいし、逆に受け取るのも難しい、本当に関係を築きたいと思ったときには与える立場が邪魔をすることもある、という悩みが語られます。原作ではこうした心情はほとんど描かれてないので、ジョンの思いといえるでしょう。そんなジャーヴィスの率直な内面に心を打たれるお客さまも多いでしょうし、僕もとても共感できます。

 とくに最近は、子育てをしているので、歌いながらそのことも浮かんできます。自分が与えているものと、彼らが受け取るものは、それぞれ思い通りではないだろうし、相手に何かをしてあげていると思っているうちは、うまくいかないこともあるだろう。ジャーヴィスの慈善と形は違うかもしれないけど、気持ちは分かる。その感覚は、前回までよりも強くなったように感じます。真綾さんは、今回歌っている『チャリティー』が今までで一番いいと言ってくれました。それは自分の心境の変化もあるのかな、という気がします。

それ以外にも、この3年の間にいろんなことが変わりました。お芝居も、自分で考えて動くというより、その瞬間の相手のセリフや動きに委ねるように演じたいと思うようになりました。前回まではジルーシャの手紙をそのまま読む感じだったのですが、今回は初めて読んだと思えるような瞬間がたくさんありました。そうなると、お芝居もやりやすくなって、驚いたり、喜んだりが自然にできているように感じます。

曲も歌いやすくなりました。のどのアイシングを始めてから調子がいいのです。劇場が再開してからはコンサートが続き、違う種類の曲をずっと歌っていたので、例えば1日2回公演だと、2回目はのどがむくむ感じがありました。以前は冷やすとよくない気がしていたのですが、試しにアイシングをしてみたら、むくまなくなったので安心しました。ミュージカルで長い公演をやるときの心配は、半分以上が声の調子なので、それがかなり軽減されましたね。コロナの自粛で、これまでのやり方を一度リセットしてみたのが、良かったのかもしれません。

覚悟を持って役に臨む坂本真綾さんの素晴らしさ

真綾さんは、いつも責任感が強くて、今回もしっかり準備してセリフをちゃんと頭に入れて稽古場に来ていました。声優が本来の仕事なのですが、声の現場で一緒になったときは、その大物感というか大御所感がすごくて圧倒されました。声の仕事は完璧だし、歌手としても第一線で活躍していて、若い人たちのあこがれの的。僕は『ダディ~』で真綾さんと出会ったので、あとからそれを知って驚きました。その真綾さんが、『ダディ~』ではいつも一生懸命に覚えてきて、しかも毎回の演技や歌に反省もしていて、常に向上心にあふれているのがすごいと思います。真綾さんにとって、舞台は慣れているわけではないから特別なもので、声優の仕事とはまた違うスタンスだろうし、覚悟を持って毎回ジルーシャの役に臨んでいるのでしょう。その仕事に対する真剣な取り組み方は真綾さんの素晴らしいところだと、あらためて感じています。

真綾さんとは、2月にパルコ劇場の『ラヴ・レターズ』でも共演しました。米国の劇作家A.R.ガーニーが書いた朗読劇で、幼なじみの男女が1930年代から80年代までの半世紀にわたってやりとりを続けた手紙を通して描かれるラブストーリーです。真綾さんと僕は並んで座り、手にした台本を順に読み上げるというシンプルな舞台です。これは同級生の男女の恋愛で、何十年もかけての手紙のやりとりだから、本当に人生そのものを描いているし、大人の恋愛感情にも踏み込んでいます。真綾さんと僕は実際に同い年なので、その点では自然にやれたというか、演じやすかったですね。

一方、『ダディ~』は年が10歳以上離れているであろう男女の話を、同い年の2人が演じているところが面白いと思っています。年はジャーヴィスの方が上という設定ですが、精神的な年齢はまた別だろうし、往々にして女性の方が賢くて、物事がちゃんと見えているということがありますね。だから成立している話でもあるのでしょう。

 いずれにしても真綾さんとは、人との接し方が似ているというか、一緒にいてストレスを感じません。堂本光一君と似ているというか、お互いにキャラクターは全然違うのだけど、同い年なのと、ある種の価値観が近いのかな。だから何をやっていても、やりやすさしかなくて、再演を重ねるほどに息が合ってきているように感じます。きょうはどんな調子で、どういう勢いで、どういうテンポでやるとか、あまり会話をしなくても、お互いの状態が何となく分かるようになってきた気がします。

今回は新しい試みで、配信限定のトーク&ソングイベントを実施しました。9月5日のシアタークリエでの公演終了後に、舞台から40分くらい配信したのですが、これも真綾さんとだからできたイベントだと思います。台本はなく、歌う曲だけ決まっていて、最初に20分くらい話してくださいと言われただけでした。真綾さんはおしゃべりも上手なので、どう転んでも大丈夫という安心感があったし、話し始めると、舞台上の箱や手紙などが実際どうなっているか種明かしをするという流れになって、配信だから見られる映像になったと思います。その後の公演では、休憩中に舞台の前にお客さまの人だかりができて、「この人形が毎日違う形をしているんだ」とか話されていたので、配信を見てくれたんだ、と思ってうれしかったですね。

話が進むにつれてお客さまの笑い声も

『ダディ~』は9月4日にシアタークリエから始まって、14日に大阪公演が終わり、19日から名古屋、24日から東京に戻っての公演となります。東宝としては、劇場再開後に東京以外で上演する初めての演劇作品です。演劇はその町へ行かないと見てもらえないので、その意味で公演再開の第一歩ともなりました。

『ダディ~』はどこの町で上演しても、お客さまの反応にそれほど差がないので、きっと万人が楽しめるのでしょう。今回は東京も大阪もそうでしたが、最初はお客さまも声を出してはいけないと思って、笑い声が少ないんです。けど、僕たちも面白がってほしいし、笑っていいんですよという感じでやっていると、話が進むにつれてお客さまの反応がすごく良くなります。やりがいがあるし、演劇っていいなと思いました。

僕にとっては、劇場が再開してからショーやコンサートの形式が続いていたので、最初から最後まで舞台で衣装を着て役を演じたのは久しぶり。春に公演中止となった『桜の園』の舞台稽古以来でしょうか。セリフを覚えているかなとか不安もあったのですが、実際にやってみると、手紙をこんなふうに読めるようになったとか、この歌に対して今こんなふうに感じるんだとか、得るものが多い公演になりました。やっぱり役者ってすごく面白いとあらためて感じています。

井上芳雄
 1979年7月6日生まれ。福岡県出身。東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、ミュージカル、ストレートプレイの舞台を中心に活躍。CD制作、コンサートなどの音楽活動にも取り組む一方、テレビ、映画など映像にも活動の幅を広げている。著書に『ミュージカル俳優という仕事』(日経BP)。

「井上芳雄 エンタメ通信」は毎月第1、第3土曜に掲載。第78回は2020年10月3日(土)の予定です。

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