コロナは「再感染」ある 米国や香港で事例確認の論文

日経Gooday

ベルギーやオランダでも再感染例を確認との報道

再感染の報告はさらに続きます。香港の患者に関する報道の後、ベルギーにも再感染者がいたことが明らかになりました。ブリュッセルタイムズ紙の8月25日の記事[注4]によると、3月と6月の計2回、新型コロナウイルス感染症と診断された患者から検出したウイルスのゲノム配列を比較したところ、初回に比べ2回目では11塩基に置換が生じており、別のウイルスに再度感染したと判断された、とのことです。

また、オランダでも、オンラインニュースメディアNL Timesが、8月27日までに計4人の再感染者が確認されたと報道しています[注5]。初回と2回目に感染していたウイルスの遺伝子を比較した結果、全員が再感染と判定されました。4人はすべて60歳以上で、どの患者も2回目の感染時の症状は比較的軽症でした。初回感染から再感染までの期間は数週間から数カ月だったとのことです。

普通の風邪のコロナウイルスも再感染する

人に感染するコロナウイルスとしては、今回流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)以外に、2002年から2003年に世界的に患者が報告されたSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因ウイルスと、2012年にサウジアラビアで発見されたMERS(中東呼吸器症候群)の原因ウイルスがよく知られています。しかし、冬期に患者が増える普通の風邪の一部は、4種類のコロナウイルス(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)の感染により発生しています。

英国の研究グループが1990年に発表した論文[注6]では、普通の風邪を引き起こすコロナウイルスも、感染から1年後に再び感染しうることが示されています。著者らは、コロナウイルスの1つである「HCoV-229E」を15人のボランティアに感染させ、血液中の抗体の反応を観察しました。15人のうち、もともと持っていた抗体価(抗体の量や強さ)が低かった10人が感染し、8人が発症しました。抗体価は、感染から2週間後に最高値となり、その後低下しました。

1年後に、初回に感染した10人のうち9人と、感染しなかった5人について再び抗体価を調べたところ、初回に感染した人たちの抗体価は、感染実験の前に比べてやや高い程度にしか保たれていませんでした(感染しなかった5人は実験前から1年後までほぼ変化なし)。

さらに、同じウイルスを用いた再感染実験を行った結果、1年前に感染した9人のうち6人が再び感染しました。ただし、感染期間は前回より短く、症状が出た人もいませんでした。一方、初回に感染しなかった5人は、2回目の感染実験で全員が感染しましたが、症状は軽症でした。

この報告は、普通のコロナウイルスの感染によって獲得する免疫力は1年程度で弱まり、毎シーズン感染する可能性があること、しかし、感染しても軽症で済む程度の免疫は維持できることを示しています。

再感染がどのくらいの頻度で起こるかは不明

新型コロナウイルスの再感染の報告は、今後増加する可能性があります。しかし、現時点では、どのくらいの頻度で再感染する患者が発生するのかは不明で、初回感染時に十分な免疫が得られなかったごく一部の人にのみ生じる可能性も残っています。また、再感染した患者が、周囲の人に感染を広げるかどうかに関する情報は今のところありません。

それでも、再感染が発生する、という事実は、現在開発されているワクチンの有効性に不安を抱かせるもので、全く新しいアイデアに基づくワクチンや、画期的な抗ウイルス薬が登場しなければ、他のコロナウイルスと同様に、新型コロナウイルスも長期にわたって人の間を循環し続ける可能性が出てきました。

しかし、これまでに紹介してきた再感染患者の多くにおいて、2回目の感染は軽症または無症状であったことから、ワクチンを接種した人々が感染しても、入院や重症化を回避できる可能性はあります。そうであるなら、新型コロナウイルスも、冬期に流行する、インフルエンザのような感染症の1つとみなされる日が来るかもしれません。

わが国の新型コロナウイルス感染者は累計8万人を超えました。既に感染し治癒した人も、決して気を緩めることなく、感染予防を心がけることが大切です。

[注4]ブリュッセルタイムズ紙 2020年8月25日

[注5]NL Times. 2020年8月27日

[注6]Callow KA, et al. Cambridge University Press. 2009; 105(2): 435-446.

[日経Gooday2020年9月10日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。
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