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コロナは「再感染」ある 米国や香港で事例確認の論文

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日経Gooday(グッデイ)

新型コロナウイルス感染症を発症し、いったん治癒した人が、再びこのウイルスに感染する「再感染」の事例が、米国や香港から相次いで報告されています。

再びPCR陽性となった例が、本当に再感染かどうかは不明だった

これまで、新型コロナウイルスに感染すると、ウイルスに対する抗体が体の中に産生されるものの、比較的短い期間しか維持されない、という報告はありました。しかし、いったん新型コロナウイルス感染症を発症した人が、一定期間を置いて再び感染することがあるのかどうかについては、明確なエビデンスはありませんでした。

日本国内でもこれまで、新型コロナウイルス感染症と診断されて治療を受けた患者が、PCR検査で2回陰性となって退院したものの、その後に行ったPCR検査で陽性だったという事例や、治癒後に再び症状が現れて、検査をしたら陽性だったという事例の報告は少なからずありました。

この現象の説明として、「体内にはウイルスが居座っているものの、検体を採取する部位に存在するウイルスの量が検出限界すれすれだったために、一時的に陰性結果が出た(つまり、再感染ではない)」という考え方もあれば、「いったん治癒した後に再度感染した」という考え方も成り立ちますが、どちらが正しいのかは明らかではありませんでした。初回に検出されたウイルスと2回目に検出されたウイルスのゲノム配列を比較する作業は行われていないからです。

しかし今回、香港と米国において、確実に再感染したといえるケースが確認され、論文として報告されました。それぞれの事例を見ていきましょう。

香港では退院4カ月後の男性が検疫所で受けたPCR検査で陽性に

香港から報告されたのは、香港在住の33歳の男性の事例です。この男性は、せきとたん、咽頭痛、発熱、頭痛が3日間続いたため新型コロナウイルスのPCR検査を受けたところ、2020年3月26日に陽性と判定されました。3月29日に入院し、症状は改善。連続する2回のPCR検査が陰性となったため、4月14日に退院しました。

しかし退院から4カ月後に当たる8月15日、スペインから英国経由で香港に帰国したこの男性が検疫所でPCR検査を受けたところ、陽性となって、2度目の感染が発覚しました。患者は再度入院しましたが、退院まで一貫して無症状でした。

入院時のCt値[注1]は26.69で、気道には多くのウイルスが存在していましたが、ウイルス量はそれ以降、日に日に減少しました。胸部X線検査を複数回行いましたが、異常は見られませんでした。

[注1] Ct値:PCRで標的とするウイルス遺伝子を倍々増幅させる過程で、ウイルス遺伝子の量が設定された閾値(いきち)に達した時点までに要した増幅回数を意味する。標本中に含まれているウイルス遺伝子が多ければ、少ない増幅回数で十分に検出でき、ウイルス遺伝子が少なければ、検出可能になるまでに要する増幅の回数が多くなる。つまり、Ct値が低いほど、検体の中に含まれていたウイルス遺伝子量が多いことを示す。

1回目と2回目のウイルスの系統が異なることを確認

この男性の初回の発症10日目に採取した血液と、2回目の入院初日に採取した血液を対象に、新型コロナウイルスに対する抗体(IgG抗体)の存在を調べたところ、どちらの検体からも検出されませんでした。しかし、2回目の入院5日目の検査では、血液中に抗体が存在していました。これは、初回感染後に産生されたはずの抗体が、再感染が発覚した時点では検出限界以下になっていたが、数日後に再び現れたことを意味します。

続いて、3月と8月に採取されたPCR検査用の検体を用いて、ウイルスのゲノム配列を調べたところ、それらが異なる系統のウイルスだったことが分かりました。系統学的には、最初に感染したウイルスは、3月~4月に米国またはイングランドで同定されたウイルス株と極めて近縁で、2回目に感染したウイルスは、7月~8月にスイスとイングランドで同定されたウイルス株と極めて近縁でした。以上のデータは、この患者が新型コロナウイルスに再感染したことを示す確実な証拠といえます。論文は8月25日付のClinical Infectious Diseases誌電子版に公開されました[注2]

米国の20代男性は、再感染で肺炎を発症

米国で再感染が認められたのは、ネバダ州に住む25歳の男性です。4月18日に行われた住民対象のPCR検査イベントで陽性が判明しました。

実は、この患者は3月25日の時点で自覚症状があり、咽頭痛、せき、頭痛、吐き気、下痢などを経験していました。男性は陽性判定後に隔離され、4月27日には症状は消失しました。その後、5月9日と5月26日の計2回、新型コロナウイルスの検査(1回目はPCRよりも高感度といわれている核酸検査TMA、2回目はPCR検査)を受けましたが、結果はいずれも陰性でした。

その後、男性は5月28日までは健康でしたが、再び発熱、頭痛、めまい、せき、悪心、下痢が出現し、5月31日に医療機関を受診しました。このときは胸部X線検査で異常が見られず、帰宅しました。しかし、6月5日に再び受診した時点で低酸素状態が認められたため、酸素吸入を受け、その日のうちに入院してPCR検査を受けました。同日に行った胸部X線検査により肺炎を発症していることが判明し、PCR検査の結果も陽性でした。翌6日に新型コロナウイルスに対する抗体(IgG、IgM)の検査を行ったところ、こちらも陽性になりました。

この男性が4月に感染した新型コロナウイルスと6月に感染した新型コロナウイルスのゲノム配列を調べたところ、どちらも同じ系統に属していましたが、変異や挿入、欠失が複数見つかりました。

これまでに行われた研究では、新型コロナウイルスの自然な変異の速度は、1年間に23.12塩基の置換を生じさせるレベルであることが示されています。この患者の2回目の発症の原因ウイルスが、初回感染後に体内に残って自然な変異を繰り返したものだと仮定すると、その速度は年間に83.64塩基の置換が生じるレベルと推定され、既知のデータと大きく矛盾します。したがって、この患者は別のウイルスに再び感染したとみなされました。論文は、世界有数の査読前論文サーバーであるSSRNで、8月31日に公開されました[注3]

[注2]To KKW, et al. Clin Infect Dis. 2020 Aug 25;ciaa1275.

[注3]Tillett R, et al. SSRN. Published online 31 August 2020.

ベルギーやオランダでも再感染例を確認との報道

再感染の報告はさらに続きます。香港の患者に関する報道の後、ベルギーにも再感染者がいたことが明らかになりました。ブリュッセルタイムズ紙の8月25日の記事[注4]によると、3月と6月の計2回、新型コロナウイルス感染症と診断された患者から検出したウイルスのゲノム配列を比較したところ、初回に比べ2回目では11塩基に置換が生じており、別のウイルスに再度感染したと判断された、とのことです。

また、オランダでも、オンラインニュースメディアNL Timesが、8月27日までに計4人の再感染者が確認されたと報道しています[注5]。初回と2回目に感染していたウイルスの遺伝子を比較した結果、全員が再感染と判定されました。4人はすべて60歳以上で、どの患者も2回目の感染時の症状は比較的軽症でした。初回感染から再感染までの期間は数週間から数カ月だったとのことです。

普通の風邪のコロナウイルスも再感染する

人に感染するコロナウイルスとしては、今回流行している新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)以外に、2002年から2003年に世界的に患者が報告されたSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因ウイルスと、2012年にサウジアラビアで発見されたMERS(中東呼吸器症候群)の原因ウイルスがよく知られています。しかし、冬期に患者が増える普通の風邪の一部は、4種類のコロナウイルス(HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1)の感染により発生しています。

英国の研究グループが1990年に発表した論文[注6]では、普通の風邪を引き起こすコロナウイルスも、感染から1年後に再び感染しうることが示されています。著者らは、コロナウイルスの1つである「HCoV-229E」を15人のボランティアに感染させ、血液中の抗体の反応を観察しました。15人のうち、もともと持っていた抗体価(抗体の量や強さ)が低かった10人が感染し、8人が発症しました。抗体価は、感染から2週間後に最高値となり、その後低下しました。

1年後に、初回に感染した10人のうち9人と、感染しなかった5人について再び抗体価を調べたところ、初回に感染した人たちの抗体価は、感染実験の前に比べてやや高い程度にしか保たれていませんでした(感染しなかった5人は実験前から1年後までほぼ変化なし)。

さらに、同じウイルスを用いた再感染実験を行った結果、1年前に感染した9人のうち6人が再び感染しました。ただし、感染期間は前回より短く、症状が出た人もいませんでした。一方、初回に感染しなかった5人は、2回目の感染実験で全員が感染しましたが、症状は軽症でした。

この報告は、普通のコロナウイルスの感染によって獲得する免疫力は1年程度で弱まり、毎シーズン感染する可能性があること、しかし、感染しても軽症で済む程度の免疫は維持できることを示しています。

再感染がどのくらいの頻度で起こるかは不明

新型コロナウイルスの再感染の報告は、今後増加する可能性があります。しかし、現時点では、どのくらいの頻度で再感染する患者が発生するのかは不明で、初回感染時に十分な免疫が得られなかったごく一部の人にのみ生じる可能性も残っています。また、再感染した患者が、周囲の人に感染を広げるかどうかに関する情報は今のところありません。

それでも、再感染が発生する、という事実は、現在開発されているワクチンの有効性に不安を抱かせるもので、全く新しいアイデアに基づくワクチンや、画期的な抗ウイルス薬が登場しなければ、他のコロナウイルスと同様に、新型コロナウイルスも長期にわたって人の間を循環し続ける可能性が出てきました。

しかし、これまでに紹介してきた再感染患者の多くにおいて、2回目の感染は軽症または無症状であったことから、ワクチンを接種した人々が感染しても、入院や重症化を回避できる可能性はあります。そうであるなら、新型コロナウイルスも、冬期に流行する、インフルエンザのような感染症の1つとみなされる日が来るかもしれません。

わが国の新型コロナウイルス感染者は累計8万人を超えました。既に感染し治癒した人も、決して気を緩めることなく、感染予防を心がけることが大切です。

[注4]ブリュッセルタイムズ紙 2020年8月25日

[注5]NL Times. 2020年8月27日

[注6]Callow KA, et al. Cambridge University Press. 2009; 105(2): 435-446.

[日経Gooday2020年9月10日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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