消えた旅客機『マニフェスト』 兄妹役が語る撮影秘話
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ/一期一会』を監督したロバート・ゼメキスが製作総指揮に名を連ねるSFサスペンスドラマ『マニフェスト 828便の謎』。ジャマイカから飛び立った旅客機が乱気流に巻き込まれ、ニューヨークに着くと、数時間のフライトのはずが5年半の歳月が過ぎていたという驚きの展開を見せる海外ドラマだ。米国では今年1月からシーズン2が放送。日本ではシーズン1がリリース・配信中で、10月からはシーズン2の初放送が始まる。旅客機に乗り合わせたニューヨーク市警の刑事ミカエラ役のメリッサ・ロクスバーグと、同じく乗客でミカエラの兄ベンを演じるジョシュ・ダラスが、自らが演じる兄妹役や番組の魅力をオンラインで語ってくれた。
――まずは、『マニフェスト~』の見どころを教えてください。
メリッサ ジョシュの答えを盗むようだけど、先に言わせてもらうと、ミステリー的要素と家族を描く要素のバランスがうまく取れているところ。ミステリー的な要素が登場人物たちの人間関係に根差しているところが特に良いと思うわ。
ジョシュ メリッサの言う通り。見事に答えを盗まれたよ。
――2人は兄妹役を演じていますが、ベンとミカエラの"兄妹の魅力"とは何だと思いますか。
メリッサ 2人は陰と陽というか、正反対でありながら互いに釣り合いの取れた関係だと思う。ミカエラは感受性が豊かで、信念を軸にしている女性である一方、ベンはとても合理的な男性よね。それでも兄妹は深く愛し合っているわ。シーズン1では、5年半が経過する間に母が亡くなっていたという、すっかり変わってしまった世界へ戻るから、それまで2人の間にあったちょっとしたズレや違いを乗り越えて、一心同体になるの。
ジョシュ まず言いたいのは、メリッサはいい人だから共演していて楽しいということだよ。
メリッサ ジョシュも悪くないわよ(笑)
ジョシュ 兄妹を主人公にしたシリーズというのが良いと思うし、2人の関係性の描き方もとても良いよね。シーズン2に入ると、この2人の関係は相当試されることになるんだ。でも、メリッサが言っていたように、ミカエラとベンは物事への見方やアプローチが対照的だから、見ていて面白いと思う。メリッサとは、出会った日からすぐに信頼し合える関係になったというか、相性がすごく良かった。その関係は意図して作れるものではないと思うからラッキーだったよ。
――割と重い内容のドラマですが、撮影現場の雰囲気はいかがですか?お2人も含めて、現場を盛り上げる一番面白い人はどなたでしょうか。
メリッサ ジョシュね。彼は本当にみんなを笑わせるのがうまい人なの。いたずらっ子というわけではないけれど、彼の言うことにはおなかを抱えて笑ってしまう。だから撮り直しが大変!
ジョシュ 現場は明るくなきゃね。撮影現場にいるみんなは、お互いに家族のような存在だから支え合うし、16時間労働で疲れるので、多少は笑いのある現場にしなければ。僕は別にいたずら好きではないけれど、メリッサを笑わせるのは楽しいね。それが僕の仕事だと思っている。
メリッサ 私のことも面白い人だと言ってよ。
ジョシュ そうか。現場で一番面白いのはメリッサだよ。メリッサの"ノックノック・ジョーク"は最高だよ!
メリッサ どなたぁ?(笑)
――シーズン1で印象的だったのは、ミカエラが物事を冷静に捉えて行動していく姿でした。もしも実際に5年半の空白の時が経過してしまうような出来事が起きたら、メリッサさんはミカエラのように対応できると思いますか。
メリッサ とてもミカエラのようには対処できないと思う。5年半が経過していたと知ったら、多分おかしくなってしまうわ。誰かに相談せずにはいられないし、ミカエラのように回復できないと思う。ベンもミカエラも事態に見事に対処しているわよね。
――ジョシュさんは、ベンと同じく2児の父親(妻はテレビシリーズの『ワンス・アポン・ア・タイム』で共演したジニファー・グッドウィン)ですが、息子を守るために全力を尽くすベンと重なる部分はありますか。 ベンという役柄を通して、改めて気づかされたことがあれば、それも教えてください。
ジョシュ ベンの子どもに対する愛情には大いに影響を受けているよ。ただ、シーズン1のベンは、子どもを守るためなら危険もいとわないけれど、僕自身がそういう状況にいたら、そこまでのことをする自信はない。そういう意味では、ベンは周りが見えなくなっている時がある。完全に自覚していなくても、子どもとその瞬間を精いっぱい生きなければという意識がどこかで働いているのかもしれない。骨を追いかける犬のように、ベンは事件の真相解明に夢中になるあまり、子どもの心がどういう状態にあるのかが二の次になってしまうことがあるけれど、そこは自分が親として大いに学びになる部分かな。子どもと一緒にいる時は、もっと注意深く子どもの心の状態に気を配らなければならないと気づかされたよ。
テレビシリーズはキャラクターの変化が醍醐味
――タイムスリップの経験をしたキャラクターを演じる上で、チャレンジだと感じた部分はありますか。
メリッサ 自分では到底想像のつかない状況を演じる難しさはあるわね。人間関係や恋愛関係を描くドラマなら、自分の経験をベースに演じることができるけれど、未来へのタイムスリップはさすがに未経験だから、表現するのが難しいわ。
ジョシュ 信ぴょう性を持たせるには、相当なエネルギーが必要で、長時間に及ぶ撮影だと特に難しいんだ。幸い脚本も素晴らしいし、スタッフもキャストも優秀なので、お互いにレベルアップしようと切磋琢磨(せっさたくま)しながら演じているよ。
――テレビシリーズに出演する場合、長期間にわたって同じ役を演じるわけですが、役柄を維持するために特別にしていることはありますか。
ジョシュ 役柄を維持するというよりも、こういう長期にわたるテレビシリーズは、キャラクターが変化を遂げるところに醍醐味があると思う。『マニフェスト~』の場合は、この先何が起こるか分からないから、登場人物はいやが応でも冒険を強いられ、その中で変化を遂げることになる。シーズンが進むにつれ、キャラクターが思わぬ成長を遂げるから飽きることがない。これは製作総指揮のジェフ・レークによるところも大きいのだけど、登場人物たちには様々なプレッシャーがのしかかってくるようなストーリー展開になっているから、変化を遂げないわけがないんだ。そういうキャラクターのあらゆる局面を余すところなく演じることができるのが、長きにわたるシリーズを演じる醍醐味だと思う。
――『マニフェスト~』に出演したことで、ご自身の生活に何か変化はありましたか。
ジョシュ 飛行機に乗るのが大変になったよ! ほかの乗客やパイロットに「縁起でもない」って言われるんだ。
メリッサ そう、飛行機に乗ったら、パイロットに「君に乗られたら困る」と言われたこともあるのよ。だから、その航空会社の便にはもう乗れない(笑)。でも、このシリーズで得た出会いは大きかったから、ラッキーだと思っているわ。
――興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございます。最後に、読者にメッセージをいただけますか。
ジョシュ 日本の"マニフェスター"のみなさん、愛してるよ~! シーズン2も本当に見どころ満載で、驚きの展開がたくさん待っているんだ。ベンとミカエラたちが乗った828便の謎にも迫っていくし、きっとビックリ仰天すると思うよ。
(ライター 清水久美子)
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