
新店を炭火焼きのトラットリアではなく居酒屋としたのは、住宅地が広がる土地柄、客に週1度は訪れてもらえるような気軽な店としたかったから。「肉料理はどうしても値段が高くなってしまう。オープン前にシェフである山口が考えたニショクのメニューの中には、和牛を使った2000円近い価格を想定した料理もありました。おいしい料理でしたが、そんな値段のメニューをこの店でお客様に召し上がってほしいとは思いませんでした」と渡部さんは明かす。
実際、ニショクの料理はほぼ1000円を切る料理ばかりだ。唯一1000円を超えるのは「本日のおまかせ揚げ物盛り」。5種から10種まで3種類の盛り合わせがあり、900~1500円(税別)の値付け。そう、ニショクの看板料理は揚げ物なのである。
「僕は居酒屋が好きでよく行くのですが、みんなレモンサワーやハイボールを飲んでいる。ワインや日本酒に力を入れた店もやっているのですが、肩ひじ張らずに飲めるのは、やはりそうしたお酒だなと。だからニショクでは、レモンサワー、ハイボールをドリンクの柱にしました。看板料理を揚げ物としたのは、このお酒に一番合う料理だと思ったからなんです」(渡部さん)
揚げ物の盛り合わせのこだわりは、「どの盛り合わせにも、野菜と肉、魚がバランスよく入っていること」(同)。「肉はハムカツのときもあれば、メンチカツのときもある。ピザ生地に海藻を練り込み揚げたイタリア料理の『ゼッポリーニ』が入ることもありますが、決めているわけじゃない。作る人が違えば味も違ってもいいと思いますし、色々な個性が出た方が面白いと考えているんです。訪れる度に盛り合わせの内容が異なる方が、お客様も楽しめるでしょう?」

実は、揚げ物の盛り合わせは開店直前に新しく決まった料理。アラカルトの揚げ物メニューには、アジフライといった定番料理のほかに創作揚げ物も目立つ。肉はすべてと畜場から直接仕入れており、内臓肉も新鮮でくさみがない。ラム肉のカツは驚くほど軟らかく、トッピングされたミモレットチーズやクミン風味の塩が絶妙なアクセントに。
リードヴォー(子牛の胸腺)とトウモロコシのかき揚げは、系列店である「kogane(こがね)」でも人気のメニューだ。トウモロコシの揚げ物は近年よく見られるようになった居酒屋の人気メニューだが、脂がのったリーヴォーと甘いトウモロコシの取り合わせは格別だ。
