3代目のオーナーシェフ、中台義浩さんは語る。「祖父は日本郵船のシェフとして各国に駐在した経験を生かし、カツレツなどを出す洋食店を開いたのです。戦後は牛肉、しゃぶしゃぶの洋食店として有名になりました。次の目玉メニューを考えていた矢先に、希少な土浦ブランドの飯村牛を扱ってほしいという依頼があり、ちょうどそのタイミングでC-1グランプリが開かれたのでこのカレーを出すと、おいしいと評判になりました」

福来軒の「ツェッペリンカレーコロッケ乗せカレーライス」
福来軒の「顔」ともいえる「土浦ツェッペリンカレーコロッケ」

土浦城址(亀城公園)近くの中華店「福来軒」は、1953年創業の庶民的な店だ。ジャガイモたっぷりのキーマカレーに細かく刻んだレンコンをまぶした「ツェッペリンカレーコロッケ」がグランプリを何度か獲得。カレーコロッケを乗せたカレーライスや、レンコン揚げの乗ったラーメン、カレーラーメンも人気だ。

「つちうら咖哩物語」の事業者部会長を務める藤澤一志さんは、「中心商店街に何軒も提供店があって、食べ歩きが楽しめるといいんですけどね」と漏らす。「土浦にはかつては『小江戸』と呼ばれる川越と同様、江戸時代以来の商家がたくさんあったのに、寂れてしまって……」。コロナ禍の影響は?「コロッケは80%減ですよ」。屈託ない笑顔ながら、まちおこしに注ぐ目は真剣だ。

火門拉麺の「カレーヌードル」と「カレーチーズ餃子」

土浦駅から郊外のイオンモール行きのバスに乗り、さらに10分ほど歩いたところにある「火門拉麺(かもんらーめん)」の「カレーヌードル」は、やはり何度もグランプリに輝いた名店だ。残念ながら、「取引農家のレンコンがシーズンオフ」で、この日は揚げネギでの代用だったが、シャキッとしたレンコンの食感を想像しながらのカレーヌードルも悪くない。「カレーチーズ餃子」も芳醇(ほうじゅん)な味わいだ。「また、ぜひ来てください!」。店主・斉藤秀樹さんの温かい言葉を聞くと、再訪を誓わずにいられない。

亀城公園の真正面にある古民家カフェ「城藤茶店」。ここで「レンコンとひよこ豆のカレー」を食した後、オーナーの工藤祐治さんとしばし話し込んだ。青森県生まれ、仙台育ちで、まちづくり・都市計画が専門だった工藤さんは、土浦の風景や歴史、人情にほれ込み、海軍将校が住んだという民家をリノベーションした。

「つくば科学万博」(1985年)やつくばエクスプレス開業(2005年)で、土浦の景観も活気も変わった。筆者がよく利用した筑波山に向かう筑波鉄道(土浦―岩瀬間)は1987年に廃線となり、廃線跡はサイクリングロードに整備された。

一方で、駅ビルは商業機能とサイクリングの拠点が整備され、3月には星野リゾート初のサイクリスト向けホテルも開業した。「適度な人口規模と筑波山や霞ケ浦の自然、歴史がほどよく調和するいい街ですよ」と工藤さん。

カレーの多様なスパイス同様、土浦には様々な歴史の面影と味覚がたゆたっている。

(ジャーナリスト 嶋沢裕志)