日経ナショナル ジオグラフィック社

──ホット・ゾーンに繰り返し向かうのはなぜですか?

「米国人が敵国から退避するとき、最後まで現場にとどまるのは医師と看護師です。私たちは、医療へのアクセスの不平等が気がかりでたまりません。自分が危険にさらされようと、感染症が大流行している現場に行かずにいられないという遺伝子を持っているのです」

「私は医学部に在学中、コンゴとルワンダの国境近くにあるゴマ難民キャンプでボランティアとして働きました。大量虐殺が発生したときに帰国しましたが、その不公平さを放ってはおけなくなりました。そのような辺境の場所に行き、地元の医師の1人に何らかの方法を教えることで、数千人の人生に影響を及ぼし、村や地域社会に持続的な変化をもたらすことができるかもしれないと気付いたのです」

――――コロナウイルスの危機はどのように終息すると考えますか?

「この危機から抜け出すには、すべての人が感染症にかかるかワクチンの接種を受けることによって免疫を獲得するしか方法はありません。すぐにどうにかしなければならないとしたら、とりあえずめどの立ったワクチンを使って一過性の免疫を獲得することでしょう。それが4カ月から6カ月ほど持続すれば、パンデミックの連鎖を断つことができます。次は、別のもっと良いワクチンを使って同じようにします。これで乗り切れます。最初のワクチンで大成功を収められるわけではありません」

──ワクチンが重要視されすぎていると思われますか?

「多数の犠牲者が出る感染症が発生したときには、従うべき優先順位のリストがあります。第一に重症化しやすい人を守ること。第二に新たな感染を防ぐこと。第三に患者を治療すること。そして第四がワクチンを作ることです。ワクチンの製造は最も時間がかかり、最も高い危険が伴うからです」

「しかし、新たな感染を防げていないことは見てのとおりです。コロナウイルスの治療に十分な資金も投入されていません。ワクチンを開発するには、ヒトの免疫系が過去に出合ったことのないウイルスにどのように反応するかを理解する必要があります。私はむしろ実験室で、抗ウイルス薬を大量に試します」

──今回のようなパンデミックがまた起こることを防ぐにはどうしたらよいでしょうか?「感染症の流行は、より大規模に、より急速に、より頻繁に起こるようになっています。(アフリカで)エボラ出血熱が発生するたび、人びとが首都に殺到します。そこからはヨーロッパやインド、中国への直行便が飛んでいます。病気はあっという間に世界中に広がるということです。政治の問題は棚上げして、協力してウイルスと闘う必要があるのです」

(文 BRENDAN BORRELL、訳 山内百合子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年9月2日付の記事を再構成]

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