日経ナショナル ジオグラフィック社

――――ヨセミテ渓谷で登山に熱中していた頃から、感染症に人生を捧げるようになるまでの経緯を教えてください。

「私は(米マサチューセッツ大学アマースト校の)カレッジで救急医療士になる勉強をし、山岳救助に携わるようになりました。そこで、生命の危険がある緊急時にどのように判断を下すかを学びました。その後、(米アラバマ大学の)医学部に在学中、海外での災害救助活動へと興味が移り、地震や津波によってすべての人が亡くなっているのではなく、その後に発生するマラリア、デング熱、水系感染症なども亡くなる原因であることに気付きました。感染症はゆっくりとやって来る災害です。そしていつまでも続きます」

――――COVID-19のようなパンデミックを自分が生きている間に経験すると予想していましたか?

「(DHHSで)感染症の大流行に備えて訓練を計画していたときは、最悪のシナリオを想定しましたが、それはあくまで仮説としてです。また、次にパンデミック(世界的な大流行)が起こるとすれば、インフルエンザだろうとも確信していました。2002年と2003年にSARSが流行した後もです。SARSは危険なウイルスですが、SARS-CoV-2ほどの感染力はありませんでした。私たちがどれほど謙虚でなければならないかが、よくわかりました」

――――新型コロナウイルスとの闘いをこれほど難しくしている原因は何ですか?

「とてつもない感染力です。このウイルスは、小さなスマート爆弾(誘導爆弾)のように静かに社会に身を潜めていて、傷つきやすい人を見つけると攻撃を仕掛けます。私はよく新型コロナウイルスは氷ではなく、氷山だと言っています。ほとんどが水面下にあるのです。今はその頂上を取り除こうとしているにすぎません」

──この危機によって、医療のルールは変わりましたか?

「私たちには地球上で最も裕福な、資源の豊富な医療システムがありますが、その豊かさはさほど役に立っていません。患者の致死率が、資源に恵まれない国と変わらないのですから。最大の武器は、相手を知ることです」

──現場で感染症にかかったことはありますか?

「感染したらプロとして失敗だと思っています。私は最良の見本になることが期待されています。日本に停泊していたクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に(DHHSから派遣された医師、上級看護師、看護師、薬剤師で構成される)災害救助チームを送ったとき、ホット・ゾーン(感染症の流行地)に足を踏み入れたことがある人はひとりもいませんでした。みんな地震やハリケーン時に出動する人たちです」

「彼らは今、新たなスキルを学んでいて、最も重要なのは不安を感じたときや確信を持てないときは、スローダウンすることだと伝えています。もしも彼らが感染したら、失敗の責任は彼らではなく私たちにあります」

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