夫の海外転勤でも諦めない リモートで続ける会社経営仕事と遊びの境界線をなくす「公私混同力」のススメ(13)

2020/9/25
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

「キャリア迷路(モヤキャリ)」から抜け出すためのコミュニティーを主宰する池田千恵氏によると、キャリア形成には先回りの勉強よりもシンプルに「好き」を追求する姿勢が大切だそうです。今回はパートナーのベトナム赴任をきっかけに「駐妻」としてベトナムにいながら日本の会社を経営している米倉史夏さんに、シンプルに「好き」を追求した結果生まれたリモート経営の極意をインタビューしました。

米倉史夏さん
株式会社Waris共同代表。1975年生まれ。慶応義塾大学卒業後、日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)、ボストン・コンサルティング・グループ、リクルートを経て現職。2011年に取得した、米国CCE,Inc.認定GCDF-Japan キャリアカウンセラーの資格を生かして女性のキャリア支援に携わりたいと考え、12年にリクルートを退職。2013年に女性向けの就職支援などを手掛けるWarisを設立。19年2月よりベトナム・ホーチミン市在住。小4と5歳の母。

家庭も仕事も手放すことなく生きるには?

――この連載では、仕事も生活も同じ土俵に上げて人生を楽しく生きることを「公私混同力」と呼んでいます。米倉さんはパートナーの海外赴任でベトナムに帯同しつつ、会社経営もされている「駐妻経営者」ということで、まさに「公私混同」しながら生き生きと働いていらっしゃると思います。さっそくですが、「駐妻経営者」誕生のきっかけと、そのために準備したことについて教えていただけますか?

2018年秋のはじめに夫のベトナム赴任が決まり、3カ月後にはさっそくベトナムに行くことになりました。夫から「海外で働きたい」とは聞いていましたが、本当に実現するかは分からない、と心のどこかで思っていました。いざ現実になったとき、どうしよう?と戸惑いました。

選択肢としては3つありました。

1)会社を辞めてついていく

2)会社を経営しているので日本に残る

3)会社を経営しながらベトナムで家族と暮らす

私の中で家族の位置づけは大きいものです。いくら会社の代表とはいえ、人生の中の軸はWarisと家族と同じ。どちらかを諦めるのは片腕がもげる感覚で、どちらもうれしくないものでした。

会社にとっても、私にとっても、家族にとってもチャレンジでしたが、3番目の選択肢を思い浮かべたとき、大変そうだけどがぜんワクワクしたんです。そこで、自分の気持ちに素直に、シンプルにワクワクするほうを選ぼう!と思いました。

母社長3人が生み出した経営分担制

――共同代表3人で会社を経営し、担当を分担していることもチャレンジの後押しになったように感じますが、いかがですか?

そうですね。Warisは共同代表3人で経営しています。3人ともワーキングマザーです。共同代表の1人も16年から家族で福岡に移住しているので、「リモート経営」は2人目になります。もともと社名の「Waris」は、アフリカのソマリア語で「砂漠に咲く一輪の花」という意味で、「砂漠のように環境変化の激しい現代にあっても人生の様々なステージにおいて、自分らしく生きていける社会を創りたい」と思い創業しました。

そんな経緯があったので、創業メンバーの2人も私の「仕事も家族も」という意思を尊重してくれました。正直、自分の選択を伝えた瞬間は、躊躇(ちゅうちょ)がなかったといったら嘘になります。そんな私に、2人は「このチャレンジをWarisがやらなくて誰がやる!」と賛成してくれました。一番近い仲間が応援してくれたことが何よりの励みでした。ともに働くメンバーやお客様も、この選択を応援してくれてありがたかったです。

――「どんな環境下においても諦めない」という創業目的を体現していますね。いざ駐妻として働くための準備は、想像するだけで大変そうですが、実際どんな苦労がありましたか?

仕事ができる環境を整えるまでがとにかく大変でした。社会が働く駐妻に対応していないことが多く、ビザ(査証)、医療保険、保育の確保、納税などもなかなかスムーズにいきませんでした。手続きをなんとかこなし、ベトナムに渡ったあとは、2カ月半後に会社復帰することを決め、準備しました。

学童保育などの仕組みもないので、子供を預けるには外国人向けのサービスを探すしかありませんでした。どこに預けられるかもわからず、シッターさんの手配の方法もわからず、情報収集からはじめました。

仲介のプラットフォームも確立されていないので、ネットの掲示板から探したり、人づてでベビーシッターを知っていそうな人に声をかけたり、ベビーシッターとして子供の面倒を見ている人に、「仕事を探している友達を紹介してほしい」とプールサイドで声をかけて聞いてみたり……。情報の7割が口コミでした。

パートナーの転勤に帯同している日本人の駐妻にも多く会いました。働きたいのに、帯同ビザで来ているために働けない方、仕事を苦渋の決断で辞めた方、いろいろな方の話を聞き、「仕事をしたい」「家族と一緒にいたい」というシンプルな願いを同時に成立させることが、こうも難しく、諦めなければならない人がどれだけ多いのかも知り、会社の存在意義を改めて感じました。

注目記事
次のページ
徹底したリモート体制が「駐妻経営者」を後押し
今こそ始める学び特集