閲覧サービスも開発 「社史」の人間ドラマはこう読め『20社のV字回復でわかる「危機の乗り越え方」図鑑』より

それは社史に、「リアル」を足すことです。具体的には、経済メディア(新聞・雑誌・ウェブ)による「企業分析」や、経営者や社員の「自伝」「インタビュー記事」を合わせて読んでいきます。

近刊『20社のV字回復でわかる「危機の乗り越え方」図鑑』では、無印良品を展開する「良品計画」を取り上げていますが、1990年代後半に順調に業績を伸ばし「無印神話」と称賛されていた良品計画に対し、2000年を過ぎた頃から各経済メディアは「『無印神話』が崩れた」と忖度なく経営問題を指摘しています。あるいは、社長を務めた松井忠三氏の著書『無印良品は、仕組みが9割』(角川書店)には、重大な危機に陥った時の生々しい証言が描かれています。これらが、当時のリアルを読み解く材料となるのです。

こうした生々しいリアルを組み合わせることで、社史は人間の本性を映し出す、たまらなく面白い素材へと変わります。社史に描かれた事実の羅列が、人間ドラマへと進化するのです。

さらに、社史を読み比べることで見えてくる面白さもあります。

たとえば、最近・30年前・50年前といった様々な時代の、様々な企業の社史には、ほとんどもれなく、「わが社は存亡の危機にある」「世の中は激動期にある」「今の日本はダメだ」という現状認識が描かれています。

この例一つ取っても、今も昔もビジネスパーソンの考えは変化していないことがうかがえます。

歴史に埋もれた「リアルな経営」「リアルな人々の姿」、そして時代を経ても変わらない「人間の本質」が垣間見えるからこそ、私は社史に取りつかれるのです。

転職動機は「社史のため」!? 自力で社史専用サイトを開設

社史の魅力に取りつかれて以来、私は、

「どうしたら、この面白い社史を人々に届けられるのだろうか?」

と考えてきました。そこで考えたのは、社史をウェブで発信することでした。「重くて分厚い」という社史のイメージの真逆に挑戦することにしたのです。

ただし、ブログやツイッターなどのSNS(交流サイト)は、社史をストックしていくには不適格に思われました。話題性よりも保存性を重視することで、ジワジワと社史を楽しむ方を増やしていきたいと考えたからです。

このような理由から、0から自分でコードを書いて社史閲覧サービスを開発することに決めました。当時、勤務していた投資ファンドを辞め、ウェブ業界にエンジニアとして転身し、作り上げたのが「The社史(https://the-shashi.com)」というウェブサイトです。

「The 社史」トップページ。一見シンプルだが、最先端技術で作られている

一見、単純なウェブページですが、インフラの中核部分にアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)を、社史コンテンツを描画する部分に「Nuxt.js (ナクスト)」という「JavaScript(ジャバスクリプト」)のフレームワークを採用することによって、表示スピードを高速化しています。Nuxt.jsは、19年にnote.com(note)が導入したことで話題になった技術で、20年には東京都が運営するコロナ感染症対策サイトでも採用されるなど、注目が集まっています。

また開発には、「GitHub(ギットハブ)」というコードを管理する開発プラットフォームと、CircleCIという自動テスト&自動デプロイ(配置)ツールを連携させることによって、コマンド一つで安全にウェブサイトを更新できる設計としました。

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