子育ても人材育成も マネジメントでなくコーチングでアフターコロナをどう働く(下) モンキーブレッド代表 翠川裕美さん

子育てはコーチングという仮説

長女は1歳10カ月で「お姉ちゃん」になりました。保育園の1歳児クラスに進級した途端、「いつも一緒にいたママ」が入院&里帰りで、環境の激変に調子がだいぶ狂ってしまった様子でした。

最初は弟を警戒して遠慮している様子が、見ていて心苦しかったです。私も夫も長女の前では弟を抱かないようにしていましたが、退院後10日くらいで「ママ、赤ちゃん抱っこしてあげて」と言ってくれるようになりました。長女はすばらしい「母性」の持ち主で、あっという間に警戒しなくなりました。

その頃、とても大きな励みになったのが、家族とは別の「保育園という世界」の存在でした。家での時間が激変しても、保育園ではいつもの彼女の変わらない時間がある。それが本当にありがたかったのです。

2歳児クラスに上がるタイミングで私たちは神奈川県葉山町に引っ越し、保育園を転園。6歳の人生の中の4年間を彼女はそこで過ごしました。物心ついたときから一緒にいる友達は、ほぼ家族と同じです。機嫌が良い日も悪い日も、遠慮せずに何でも言い合える世界をつくり、彼女の頭の中はいつもこの大切な世界のことでいっぱいだったはずです。

子育ては子どもの中にある答えを引き出すコーチングのようなものだと感じている(写真は翠川さん家族)

私ははじめ、子育てに対して「マネジメント」のようなものをイメージしていました。しかし、実際に子どもたちと向き合う中で、こちらが管理したり誘導したりすることはほぼなく、子どもたちの中にある答えを引き出しているだけということに気づきました。それはまるで、会社という世界にいる社員が、外部からきた人に「コーチング」されているのと同じだと感じるようになりました。

長女には、多くの時間を過ごす「保育園」という世界と、密度の濃い「家族」という世界があります。平日の活動時間は保育園のほうが長いものの、家族との密度の濃い時間の中では、2歳年下と6歳年下の弟を従えているのです。さらに、小さい頃から感情の波が立つと止まらない性格だったこともあり、私と夫は、全部先回りしてなるべく波風が立たないようにしていました。親としてはそのほうが早いし、楽だったからです。

しかし、あるとき気付きました。このまま、いつも自分にとって都合のいいようにお膳立てされた中で育つと、世の中に出たときのストレスに耐えられなくなってしまう。

それからは、察して行動するのを完全にやめて、「ちゃんと口で伝えてくれないと何もわからないよ」と言うようにしました。「ママだって嫌なものは嫌なんだよ」と、負の感情もぶつけるようにして、将来いろいろな人に出会ったときのために、家の中にもいろいろな人がいるということに慣れてもらおうと考えました。

そんなときでも言葉で伝えられれば解決できることが多いということを、知っているのと知らないのでは、まったく違うからです。

保育園を出て小学校へ行けば、関わる人が圧倒的に増えて、何でも言える相手ばかりでなくなることに戸惑うと思います。言ってみたけど文化の違いで伝わらない、ということも起こるはずです。

それでも、家族だけの世界から社会に飛び出し、その都度そこで家族のような関係性をつくってきた長女なら、きっとまた自分の世界をつくれると信じています。6年かけて、私もコーチが板についてきました。「子育てはコーチング」ということに気がついたのは、実は最近のことで、まだまだこれからだと思っています。いいコーチングができるように、歩ませてもらおうと思います。

翠川裕美
2004年8月慶応義塾大学環境情報学部卒。在籍中は環境デザイン・メディアデザインを専攻し、デザインプロセスを研究。卒業後、スマイルズ(東京・目黒)に入社。08年イデー(現良品計画、東京・豊島)へ入社し、宣伝販促室でブランド全体の販促企画を担当。16年7月にモンキーブレッドを設立し、新しい時代のカタログを目指す「KATALOKooo」を新規事業として立ち上げる。

<<(上)私は「モチベーションクリエーター」 まず自分を知る

注目記事
今こそ始める学び特集