コロナで「困った」 仕事とお金の不安Q&A

日経ウーマン

2020/10/1
写真はイメージ=PIXTA
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解雇、内定取り消し、在宅ワークで残業代カット……新型コロナウイルスで直面する仕事とお金のピンチへの対処法を紹介します。

会社に解雇と言われてしまったら

Q.会社の先行きが不安です。もしも「解雇」と言われたらどうすればいい?
A.その場で「分かりました」と言わない、サインしないこと

会社の体力に限界がくれば、退職勧奨や整理解雇もあり得ます。とはいえ「人員整理の必要性」「解雇回避努力義務の履行」「解雇者選定の合理性」「手続きの妥当性」の4要件を満たしていない整理解雇は、社会通念上、相当であると認められず、無効となる可能性があります。

また、派遣社員や契約社員など、有期契約の従業員を期間途中で解雇するには、相当の「やむを得ない事由」が必要です。解雇を迫られても、その場での了解や渡された書類へのサインをしないこと。説明を求め、話し合いを。「辞めたくありません」と意思表示をし、納得できなければ、都道府県の労働局(記事末参照)などの専門機関へ。無料で相談できます。

テレワークで残業代がカットされてしまった

Q.テレワーク中は残業代カットと上司。仕事量は変わらないのに……
A.「在宅勤務だから残業代なし」は法的にNG! 残業の証拠を残して

所定労働時間を超えて従業員を働かせる場合、残業代を支払うのは会社の義務。会社により異なりますが、法定労働時間を超えて働かせるには、会社は労働組合などと「36協定」という協定を結び、1.25倍以上の割増賃金を払わないといけません。この原則はテレワークも同じ。上司の認識は間違っており、在宅勤務でも残業代は発生します。残業代を会社に請求するには、残業した証拠が必須。会社の勤怠管理ツールなどがあるなら、始業時と終業時に欠かさず入力を。ない場合は上司に始業と終業のメール報告を行い、労働時間の客観的な記録を残しましょう。

コロナによる業績不振で転職の内定が取り消しに

Q.転職の内定をもらっていたが、コロナによる業績不振を理由に断りの連絡が入りました。諦めるしかないですか?
A.採用内定を安易に取り消すことはできません

採用内定が通知された時点で、会社と内定者の間には始期付き、解約権留保付きの労働契約が成立したと考えられるため、内定取り消しは解雇相当の重大行為。内定取り消しを防ぐため、会社は最大限の努力が必要とされます。新型コロナウイルスによる「景気への先行き不安」程度が理由の内定取り消しは、無効の可能性も。内定取り消しの連絡を受けたら、まず理由を確認。納得できなければそれをもとに労働局(記事末参照)の総合労働相談にアドバイスを求めて。

テレワーク中にウイルス感染したら……

Q.テレワーク中にPCがウイルスに感染し、会社の機密情報が漏れたら責任を問われますか?
A.情報管理のガイドラインを守っていたかがポイント

従業員が責任を問われるかは、会社のセキュリティー対策によっても異なります。会社が業務運用上必要なセキュリティー対策を怠り、守るべき情報管理のガイドラインも決めずにテレワークを実施していたのなら、従業員だけが責任を負わされることはないでしょう。一方、会社が十分なセキュリティー対策を取り、周知徹底を図ったにもかかわらず、従業員がガイドラインを守らず、不注意や怠慢などにより情報流出を招いた場合は、懲戒処分を受けたり、民事損害賠償責任が生じたりすることもあります。

テレワークで自宅の光熱費などが上がりました

Q.テレワークで自宅の光熱費がうなぎ登り。会社の補助は受けられないの?
A.在宅勤務手当を出す会社もあります。領収書は要保管

テレワークにより従業員宅で発生する光熱費や通信費、機材の費用などについては、あらかじめ在宅勤務規定などによりルール化しておくといいでしょう。ただし、新型コロナウイルス感染拡大を受け、急遽きゅうきょテレワークを始めた会社のなかには、労使間の光熱費などの負担比率を決めていないところも多いようです。会社が動かないなら、負担比率をどうするか、従業員が立て替えた経費はどう請求するのかなどをルール化し、就業規則などに明記するよう会社に提案することを勧めます。精算に備えて、光熱費の使用明細や領収書は保管しておきましょう。

シフト勤務の休日出勤を断りたい

Q.パートさんの休みが増えて、正社員がシフトに。土日出勤は拒否できますか?
A.就業規則等で認められた休日出勤は可能な限り応じて

「休日出勤を正社員に命じられる」と就業規則に記されている、36協定が結ばれている、割り増し賃金が払われるなど、法律で定められた条件が整い、業務上の必要性や合理性も認められる場合、従業員には休日出勤に可能な限り応じる義務があります。人手不足など業務に支障がある状況下で合理的理由なく拒否を繰り返すと、懲戒処分の可能性も。休日出勤が難しい事情を説明し、理解を求めて。

コロナに感染、有給休暇と傷病手当金のどちらが得?

Q.新型コロナウイルスに感染して休むとしたら、有給休暇と傷病手当金、どちらをもらうのが得?
A.有給休暇なら賃金全額、傷病手当金は賃金の約3分の2が支払われる

「傷病手当金」とは、健康保険加入者が業務以外の病気やケガで仕事を連続して3日間(土日・祝日、有給休暇を含む)休んだ場合、4日目から最長1年半、支給される手当てです。ただし傷病手当金の支給額は給料の3分の2程度(健保組合によっては上乗せ給付あり)。有給休暇は就業規則で規定した支払い方法の満額を受け取れるので、有給休暇を使うほうが得な可能性大。ただ新型コロナを発症すると何日休むことになるのか分かりません。まず有給休暇、次に傷病による休業で傷病手当金を受給する流れが自然でしょう。

傷病手当金には陽性の診断が必要?

Q.感染したかも……。陽性が確定しないと傷病手当金は出ませんか?
A.特例として、自覚症状があれば確定診断がなしでも対象に

通常、傷病手当金を受給するには、事業主と医療機関双方の証明が必要です。ただ新型コロナに関しては、希望してもPCR検査を受けられない例が多発、体調悪化で医療機関に行けないことも。そのため陽性の確定診断や医師の証明がなくても、発熱などの自覚症状と事業主の証明があり、労務不能と認められると、傷病手当金を受給できます。実際に手続きし、受給できた例もあります。自覚症状があるのに検査も受診もできず、やむを得ず自宅療養している場合は、その旨を会社に伝えた上で休んで。また傷病手当金は健康保険の加入者なら、正社員だけでなく派遣社員も受給対象となります。

出社して感染した場合、労災は認められますか?

Q.業務的にテレワークができず、多数の社員が在宅勤務するなかで出社しています。感染したら労災になりますか?
A.就業中や通勤中の感染が認められれば労災に。こまめに行動メモを

取引先の社員や社内の同僚が感染者で、濃厚接触したなど、感染経路が明確に特定でき、他の感染機会が認められなければ、業務が原因で新型コロナウイルスに感染・発症したと認められ、労災認定される可能性も(補償内容は下表参照)。申請時に感染経路を立証できるよう、打ち合わせ中の座席配置や時刻などのメモを残して。ただ、インフルエンザや風邪を例に考えると、通勤災害で感染経路や機会を特定するのは現実的にはかなり困難です。

*原則、労災発生日直前3カ月間の残業代などを含む賃金総額をその期間の暦日数で割った額

できれば時差通勤をしたい

Q.感染リスクを避けるため、時差通勤したいのに上司が渋い顔。どう説得すればいい?
A.就業規則に、時差通勤に関する項目があるかを確認して

まず時差通勤に関する規定が就業規則にないか確認を。「従業員の希望による繰り上げ出勤・繰り下げ出勤」「スライド出勤」などの規定があれば、たとえ上司が渋っても、それを根拠に説得しやすいでしょう。また始業・終業時刻は労使間の合意により変更が可能なため、規定がなければ時差通勤の制度化を会社に提案するのも手です。その際、時差通勤がないことでどう困っているのか、導入でどう職場環境が改善されるか、具体的にまとめると説得力が増します。

不安なので産休前に休みに入りたい

Q.妊娠中に肺炎にかかると重症化すると聞き、出勤が不安。産休前に休みに入りたい
A.「妊産婦を特定の有害な環境で働かせてはいけない」決まりが

有給休暇が残っていればまずその活用を。均等法や労基法には母性健康管理の措置、妊産婦の時間外や休日労働、深夜業、危険有害業務の就業制限など、妊産婦を守るための定めがあります。新型コロナウイルスはそうした法律の範囲に挙げられていませんが、感染リスクを否定できない職場環境が母体に有害と感じるなら、準ずるものとして休業を会社に相談しては。妊産婦さんの不安を受け、国も、妊産婦が休みやすい環境の整備を企業に要請しています。

■新型コロナに関する職場の悩みの相談先

●各都道府県労働局
厚生労働省のホームページで「新型コロナウイルス感染症に関する特別労働相談窓口一覧」や「労働相談」で検索

●全国社会保険労務士会連合会
「職場のトラブル相談ダイヤル」
TEL0570-07-4864平日11時~14時 相談料無料、通話料は有料

この人に聞きました

漆原香奈恵さん
特定社会保険労務士・キャリアコンサルタント・アンガーマネジメントファシリテーター。
かなえ社会保険労務士事務所 代表/合同会社かなえ労働法務 代表社員。

時代に合ったバランス良い人事・労務サービスの提供、障害年金の業務にも注力。二児の母。自らのライフワークとして2011年から「ママ士業の会(法律会計系専門家であり、母親でもある方のコミュニティー)」を主催、女性の育児と仕事の両立を応援。著書に『知りたいことが全部わかる! 障害年金の教科書』(ソーテック社)、『障害年金の手続きから社会復帰まで』(秀和システム)等。執筆・講演・雑誌等でも活動中。

(取材・文/籏智優子)

[日経ウーマン 2020年6月号の記事を再構成]

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