社員を「部品」にしない 伸びようとする力を引き出すロート製薬 山田邦雄会長(下)

未来の世代に何を残すのか

――大組織の中で、情熱を失う人も多いようです。

「ビジネスマンの多くは会社の仕組みの中に埋もれてしまっています。特に大きな組織になるほど、一人一人の役割は小さくなってしまうのは当然のことです。会社の部品になって生きるということは、本当につまらないだろうし、不幸ではないかと感じています」

「特に日本では年功序列の風習が色濃く残っていて、ずっと駒としての生活を続け、少しずつのし上がってやっと上に立つ、という仕組みです。この仕組みはあまり面白くないとも言えるし、いい学校を出た優秀な人を会社の部品にしてしまいます。社会的に見ても、無駄なことをやっていると思います」

「自由にやらせないどころか、囲い込んで枠にはめて、会社がしてほしいことだけやってくれ、という仕組みになっています。これでは世の中はうまく回りません。それによって、日本の企業の多くが自己革新力を失ってしまったように感じます」

「さらに最近は目先をどうするかしか考えられなくなってきた印象です。未来の社会づくりや、未来の世代に何を残すかという発想が薄くなったことは、すごく残念です。せめて自分が関わる限りは、そうじゃない会社の仕組みをなんとかつくりたいと思ってやってきました」

10人ほどで乗るヨット競技にも挑戦している。「タイムなどの目標を掲げてチャレンジするというところが、ただ楽しいだけじゃなくて面白い」(帽子姿が山田邦雄会長)

――副業や他部との兼任の制度が話題になりました。

「サラリーマンの話でいうと1つの部署の1つの仕事というのは、よくよく考えたらその人の能力のうち、せいぜい3割ぐらいしかいらないのでは、と感じています。それは大変もったいないことです。せっかく持っている才能をもっと生かそうとすると、マルチにならざるを得ないと思うのです。そういう意味では今までの仕組みの方がおかしいと思います」

「戦後、集団就職で東京に出てきた人たちに代表されるような、いわゆる会社中心の生活が広まっていく過程で、自然とそうなってしまったのでしょう。もともと地方での暮らしはマルチでいろんなことをやっていたのが、専業化して、工業社会に適応してしまいました。今は少なくとも工業だけの社会ではないのは確かです。だから仕組みも変えていく必要があります」

「様々なプロジェクトを手がけましたが、会社の仕事をいかに上手にやるかではなく、個人の成長を促すためのしかけのようなものをつくってこられたのではないか、と思います」

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
アナログな「つながり」も大切に
今こそ始める学び特集