日経Gooday

免疫細胞を作るためにも食事は大切

生活面での注意すべき点を、さらに安部さんに教えていただいた。

「シャワーよりも湯船につかる、それもあまり熱くない38~40℃くらいの温度で、ゆっくり時間をかけて入るのがいいでしょう。ストレスも解消されますし、カラダを温めることによって、血流も促されます。また十分な睡眠も免疫力を上げるのに欠かせません。ただし、寝つきをよくしようと、寝酒を飲むのは逆効果です。アルコールは眠りを浅くしてしまう作用があるからです」(安部さん)

これなら、すぐに実践できそうだ。

そして我々、酒飲みが気になるのが食事(つまみ)であろう。先生、免疫力のために食べておいたほうがいいものはありますか?

「何か1つの食品“ばっかり”を食べるのはお勧めできません。なるべく数多くの食品から、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含むものなどをバランスよくとるといいでしょう。お酒飲みにはキツイかもしれませんが、塩辛いものは高血圧・動脈硬化につながるので、薄味を心がけましょう」(安部さん)

この「バランスよく」というのが非常に難しいものの、意識して心がけるだけでも食べ方は変わってくるはずだ。酒のつまみはどうしても塩辛くなりがちだが、しょうゆは減塩しょうゆにする、だしやスパイスをきかせるなど味に工夫すればいい。

「免疫機能がきちんと働く、健康なカラダを維持するために、食べることは基本中の基本です。免疫細胞は毎日3~5%死滅すると言われています。新しい細胞を作るためには、栄養が必要。残念ながらお酒で栄養は補えません。免疫のためにも、今一度、食生活を見直しましょう」(安部さん)

また安部さんは「ただし、生活習慣病をもたらす肥満を避けるためにも、食べ過ぎは厳禁」と付け加えた。血流を抑制する喫煙も、ほどほどにしたほうがいいという。

酒は休肝日を取り入れつつ、適量を守り、栄養バランスの取れた食事を腹八分目でとる。ストレス発散のためにも適度な運動をして、よく寝る。ザっとまとめると、こういうことだろうか。

これだったら、ムリなく実践できそうである。

安部さんは最後に「お酒を飲んで幸せな状態は何か? ということを、もう一度考えてみては」と一言。

ただ酔っ払うために酒を飲む人って、実はそうそういないんじゃないだろうか? 今は仲間と一緒においしい食事をシェアして、バカ話をしながら飲むのは難しいけれど、本来酒は酔うためではなく、楽しむもの。そう考えると、「量よりも質」となる。新しい生活様式へと変わっていく今、免疫力のためにも飲み方も変えていくよい機会なのかもしれない。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版制作:増田真一)

[日経Gooday2020年9月8日付記事を再構成]

安部良さん
帝京大学戦略的イノベーション研究センター特任教授 東京理科大学名誉教授。1978年、帝京大学医学部卒業。1983年、東京大学大学院医学研究科第三基礎医学(免疫学専攻)修了、医学博士。米国国立衛生研究所、米国国立海軍医学研究所、東京理科大学教授などを経て、2018年より現職。

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