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お酒は免疫力にも響く 肝機能低下が招くリスクは?

飲酒と免疫(下)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

アルコールは免疫力を下げる…。酒好きの人々にとって非常に気になる研究結果を、前回このコラムで紹介した。免疫学を専門とする帝京大学特任教授の安部良さんによると、アルコールは人間の免疫システムに直接的に悪影響を及ぼすだけでなく、さまざまな病気を誘発することによる"二次的"な影響を与え、そちらのほうがより深刻である可能性があるという。酒ジャーナリストの葉石かおりが、対策を詳しく聞いた。

◇  ◇  ◇

アルコールは免疫力を下げる。

巷(ちまた)で言われてきたこの一件。

「単なるウワサであってほしい」と思っていたが、前回の記事(「強い酒ほどリスク大! アルコールは免疫力を下げる」)において、悲しいかな、真実であることが判明した。

私たちのカラダには、ウイルスをはじめとする病原体から身を守る、非常によくできた免疫のシステムが備わっている。自然バリア、自然免疫、獲得免疫という3段階で構成され、それぞれのステージでさまざまな免疫細胞が働き、病原体を排除するのだが、どの段階においてもアルコールは直接的に悪影響を及ぼすという。

例えば、のどがチリチリするようなアルコール度数の高い酒は、自然バリアであるのどの粘膜を傷つけ、免疫力を低下させてしまう。そして、自然免疫で活躍する、病原体を食べてくれるマクロファージは、アルコールによって機能が低下したり混乱したりする。さらに、獲得免疫で働くT細胞やB細胞などのリンパ球がアルコールから何らかの影響を受けるという動物実験の研究もあるという。

免疫は3段階

だが恐ろしいことに、「アルコールによる免疫への影響はこれだけで終わらない」と話すのは、帝京大学戦略的イノベーション研究センターの特任教授で、免疫学を専門とする安部良さん。このような直接的な影響だけでなく、「アルコールはさまざまな疾病につながり、それによる二次的な免疫への影響のほうがより深刻である可能性もある」というのだ。

引き続き安部さんにお話をうかがっていく。

飲酒からの生活習慣病や肝機能低下のほうがコワイ

先生、アルコールが免疫システムに直接的に悪影響を及ぼすだけでなく、二次的にも免疫力を下げてしまう、とはいったいどういうことなのでしょうか……?

「前回、お話したように、自然バリアをはじめとする免疫システムにアルコールが影響を及ぼすことは事実です。しかしながら、それよりも、もっと影響が大きい可能性があるのは、アルコールを飲むことによる二次的な弊害なのです。分かりやすく言うと、アルコールの慢性的な飲み過ぎ、おつまみの食べ過ぎによって、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の罹患(りかん)リスクが上がったり、肝機能が低下したりすることが、免疫にも悪影響を及ぼすということです」(安部さん)

確かに、酒を飲み過ぎたとき、アルコールが免疫システムに直接的に悪影響を及ぼしたとしても、それは一時的なもので、二日酔いもよくなっていけば、次第に免疫システムのほうも回復していくのかもしれない。それに対して、長年の飲酒により生活習慣病になってしまったら、今度は慢性的に免疫力を低下させることにつながる。

アルコールが免疫に及ぼす"二次的"な影響

このコラムで幾度となく言及しているように、アルコールの飲み過ぎは糖尿病、高血圧、動脈硬化、肝臓の機能低下、がんなどを誘発する。こうした病気に罹患している人は免疫力が低く、新型コロナウイルス感染症が拡大する今この状況において、リスクに直面していると言われている。ではいったい、どのような仕組みでこうした病気が免疫に影響を及ぼすのだろう?

 「考えられるのは、"血流"です。糖尿病では高血糖により血液がドロドロになることで、また動脈硬化では血管が硬くなることで、血流が悪くなります。血流が悪いと、必要な免疫細胞が、カラダの必要な場所へと届かなくなってしまうのです」(安部さん)

どんなに高度な免疫システムがあっても、「血流」という弱点があったとは……。近年、血管年齢の重要性が叫ばれているが、血管の状態や血流は免疫にも大きく影響しているようだ。それでは、肝臓の機能低下についてはどうだろうか。

「アルコールが肝臓で代謝されるとき、その過程でアセトアルデヒドが生成されます。大量の飲酒を続けていると、肝臓がアセトアルデヒドを分解しきれなくなり、今度はアセトアルデヒドによって肝臓の細胞が攻撃されてしまいます。これによって肝機能が低下し、免疫力も落ちてしまうのです」(安部さん)

肝臓には、食事で得られた栄養をカラダが使いやすいように作り直し、必要に応じて供給する役割がある。この機能が低下すると、免疫細胞や抗体など、免疫システムに必要な要素が不足してしまう。また、アルコールや薬剤、体内で作られるアンモニアなどの有害物質を代謝するのも肝臓の役割だが、こうした働きが鈍って有害な物質がたまると、免疫細胞の機能に悪影響を及ぼすことも考えられるという。

そして安部さんは、こう続けた。

「糖尿病や動脈硬化になると、心臓の働きも悪くなります。心臓は血液を全身に送り出すポンプとして重要な臓器です。心臓の働きが悪くなると、さまざまな障害がカラダのあちこちに現れ、血流も悪くなり、それがさらに免疫に影響を及ぼすのです」(安部さん)

「ストレス解消」は別の方法で

話が進むにつれ、酒好きには耳が痛い内容ばかり……。

免疫力を下げないためにも、先ほど挙がった糖尿病や動脈硬化などのリスクを上げてしまうような飲み方は控えなければならない、というのは百も承知である。

しかし「全く飲まない」というのは、酒好きにとってかえってストレスになってしまう。安部先生、ストレスをためないためにも、何かいいアドバイスをいただけないでしょうか?

「おっしゃる通り、お酒好きの方にとって、断酒はかえってストレスになりますよね。ストレスは免疫に悪影響を及ぼしますので、飲み方に工夫をされるとよいと思います。免疫の第1段階である自然バリアの粘膜を傷めないよう、のどがチリチリするようなアルコール度数の高いお酒は、避けたほうが無難です。どうしても飲みたいなら、炭酸水や水などで割って飲むことをお勧めします。また、生活習慣病やがんなどのリスクを上げないためには、飲み過ぎないようにしましょう。休肝日も取り入れてほしいですね」(安部さん)

日常的にウイスキーやジンなどをストレートで好んで飲む方は気を付けたほうがよさそうだ。病気にならないためにも、もちろん多量飲酒の習慣は避けたい。適量といえば、1日当たり、日本酒なら1合、ビールなら中瓶1本、ワインならグラス2杯程度だ。さらに安部さんは、こんなアドバイスもしてくれた。

「新型コロナウイルスによって家飲みが増えた方も多いと思うのですが、私はこれを機に飲み方をアップデートしてほしいと考えています。一つはお酒をストレス発散のツールにしないということです。ストレス解消のために飲むと、どうしても酒量が増えてしまいますから。ストレスは運動など、お酒以外のことで発散するようにしましょう」(安部さん)

緊急事態宣言以降、家飲みが増え、人によってはこれまで以上に酒量が増えた方も多いのではないだろうか。また、生活様式の変化によって、ストレスが増大し、ついお酒に走ってしまう人も少なくないはず。しかし、出社する必要がなくなったので自由な時間が増え、ジョギングやウオーキングを始めたというポジティブな話もよく耳にする。

先生、運動といえば、お酒に代わるストレス解消ツールとしてはもちろん、免疫力をアップさせるのに効果的なんですよね?

「その通りです。しかしあくまで適度な範囲にとどめておきましょう。というのも、運動することが"義務"となってしまうと、かえってストレスになってしまうからです。また激しい運動は免疫力を下げるというデータもあります」(安部さん)

そういえば、「アスリートは風邪を引きやすい」という話を耳にしたことがある。「激しい運動によって体にストレスがかかると、コルチゾール(副腎皮質ホルモン)というストレスホルモンが分泌され、これによって免疫が抑えられてしまう」と考えられている。

「自分にあったペースで継続できる、適度な運動を行うことが免疫にとってはいいのです。軽いウオーキング、エレベーターの代わりに階段を使う、くらいでも十分です。ゆっくりとした動きのヨガもいいと思います。私自身もやってみたいと思っています」(安部さん)

汗だくになるような激しい運動ばかりが運動ではない。要は「続けられること」が大切なのだろう。

家にいることが良しとされる今、オンラインで気軽にできるヨガは確かにいい。私事で恐縮だが、コロナ禍の2020年2月からオンラインヨガを始めてたところ、家にいるストレスが大幅に軽減された。また血流も改善したと感じる。きつくないヨガならば、年齢を重ねた人でも無理なくできると思う。

免疫細胞を作るためにも食事は大切

生活面での注意すべき点を、さらに安部さんに教えていただいた。

「シャワーよりも湯船につかる、それもあまり熱くない38~40℃くらいの温度で、ゆっくり時間をかけて入るのがいいでしょう。ストレスも解消されますし、カラダを温めることによって、血流も促されます。また十分な睡眠も免疫力を上げるのに欠かせません。ただし、寝つきをよくしようと、寝酒を飲むのは逆効果です。アルコールは眠りを浅くしてしまう作用があるからです」(安部さん)

これなら、すぐに実践できそうだ。

そして我々、酒飲みが気になるのが食事(つまみ)であろう。先生、免疫力のために食べておいたほうがいいものはありますか?

「何か1つの食品"ばっかり"を食べるのはお勧めできません。なるべく数多くの食品から、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含むものなどをバランスよくとるといいでしょう。お酒飲みにはキツイかもしれませんが、塩辛いものは高血圧・動脈硬化につながるので、薄味を心がけましょう」(安部さん)

この「バランスよく」というのが非常に難しいものの、意識して心がけるだけでも食べ方は変わってくるはずだ。酒のつまみはどうしても塩辛くなりがちだが、しょうゆは減塩しょうゆにする、だしやスパイスをきかせるなど味に工夫すればいい。

「免疫機能がきちんと働く、健康なカラダを維持するために、食べることは基本中の基本です。免疫細胞は毎日3~5%死滅すると言われています。新しい細胞を作るためには、栄養が必要。残念ながらお酒で栄養は補えません。免疫のためにも、今一度、食生活を見直しましょう」(安部さん)

また安部さんは「ただし、生活習慣病をもたらす肥満を避けるためにも、食べ過ぎは厳禁」と付け加えた。血流を抑制する喫煙も、ほどほどにしたほうがいいという。

酒は休肝日を取り入れつつ、適量を守り、栄養バランスの取れた食事を腹八分目でとる。ストレス発散のためにも適度な運動をして、よく寝る。ザっとまとめると、こういうことだろうか。

これだったら、ムリなく実践できそうである。

安部さんは最後に「お酒を飲んで幸せな状態は何か? ということを、もう一度考えてみては」と一言。

ただ酔っ払うために酒を飲む人って、実はそうそういないんじゃないだろうか? 今は仲間と一緒においしい食事をシェアして、バカ話をしながら飲むのは難しいけれど、本来酒は酔うためではなく、楽しむもの。そう考えると、「量よりも質」となる。新しい生活様式へと変わっていく今、免疫力のためにも飲み方も変えていくよい機会なのかもしれない。

(文 葉石かおり=エッセイスト・酒ジャーナリスト、図版制作:増田真一)

[日経Gooday2020年9月8日付記事を再構成]

安部良さん
帝京大学戦略的イノベーション研究センター特任教授 東京理科大学名誉教授。1978年、帝京大学医学部卒業。1983年、東京大学大学院医学研究科第三基礎医学(免疫学専攻)修了、医学博士。米国国立衛生研究所、米国国立海軍医学研究所、東京理科大学教授などを経て、2018年より現職。

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