2020/9/25

6月25日、米感染症学会は、デキサメタゾンを条件付きで推奨するよう治療ガイドラインを更新し、米国立衛生研究所も独自のガイドラインについて同様の変更を行った。厳密には米食品医薬品局(FDA)が承認する治療薬ではないものの、デキサメタゾンは、COVID-19の生存率を高めることが示された最初の治療薬となった。

RECOVERY試験の目的は、有望な治療法の効果を立証するだけでなく、ある方法の有効性が疑われた場合、それを確認することにもある。RECOVERYの研究者らは、ドナルド・トランプ米大統領やブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領らが支持していた抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンについて、4716人を対象とした試験の結果を発表している。

7月15日に査読なしで発表されたその報告書によると、ヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療において明確な臨床的有益性を示さなかった。これについては、ほかの一連の研究においても同様の結果が得られている。

ランドレー氏は今後、回復したCOVID-19患者の血液から作られた、抗体を豊富に含む回復期血漿(けっしょう)の試験を行いたいとしている。

吸入型治療薬インターフェロンベータ

COVID-19の治療法の探究において、早い時期に発見された成果としては、回復期間をわずかに短縮できる抗ウイルス薬のレムデシビルがある。一方で研究者らは、体の自然な抗ウイルス反応を増強する方法も模索している。中でも有望な候補が、免疫系のサイトカインの一種であるタンパク質のインターフェロンベータだ。

通常、細胞がウイルスに感染すると、細胞は多くの種類のインターフェロンを放出して、近隣の細胞が防御のスイッチを入れて、さまざまな抗ウイルス化合物を産生するよう促す。ところが新型コロナウイルスは、こうしたインターフェロンによる罠をすり抜けるのが得意なようで、その結果、肺での初期反応が完全には活性化されず、ウイルスが大暴れしてしまう。

この点に注目したのが、英のバイオテクノロジー企業シネアジェンだ。シネアジェンは長年にわたり、重度の喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患の患者がウイルス感染症を撃退するのを助ける、インターフェロンベータの吸入型ミストを開発してきた。

7月20日、投資家向けのプレゼンテーションで、同社は101人の入院患者を対象とした無作為化試験の結果を発表した。それによると、インターフェロンベータを投与された患者は、標準治療を受けている患者に比べて、死亡したり、侵襲的な人工呼吸(気管を挿管するなど体に負担のかかる人工呼吸)を必要としたりして重症化する割合が79%減少した。また、インターフェロンベータを投与された患者は、回復した数も多く、息切れも減少しているという。

「率直に言って、この治療法の効果の高さには驚かされました」と、英サウサンプトン大学の免疫薬理学者で、シネアジェンの共同創設者でもあるスティーブン・ホルゲート氏は述べている。「ウイルスが肺に蔓延しつつある初期段階でこの薬を投与した場合、高い効果が得られるだろうということはわかっていました。しかし、今にも人工呼吸器をつけようかという患者にも効果を発揮し、回復を加速させることができたのです」

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改善される標準的な治療法
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