死亡率下げる薬、治療法の改善 米英で進むコロナ研究

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

エジプト、カイロのEVAファーマの研究施設で抗ウイルス薬レムデシビルを扱う検査技師 。2020年6月25日(PHOTOGRAPH BY AMR ABDALLAH, REUTERS)

米オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックの内科医アダーシュ・ビムラージ氏は、米感染症学会の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療ガイドラインを作成する16人の一人だ。

病院で患者を診察し、自らも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しながらも、ビムラージ氏は続々と流れ込むCOVID-19治療法の新たな情報を評価してきた。現在、世界では1000件以上にのぼるCOVID-19治療法の無作為化臨床試験が進められている。ビムラージ氏らガイドライン策定チームの人々は、この大量の情報の中から、最も有望な結果を見極めなければならない。

「ファウチ氏の言葉を借りれば、これらの治療法はどれも状況を一変させる『ゲームチェンジャー』ではありません」。米国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏の言葉を引用して、ビムラージ氏はそう述べる。「それでも、有望な兆候はたしかにあるのです」

ステロイド剤デキサメタゾン

COVID-19の治療法の有効性を検証する数多くの試みの中でも、早いうちから成果を上げているのが、英オックスフォード大学を拠点に進められている「COVID-19治療無作為化評価(通称RECOVERY)」試験だ。

現在、試験の対象となっている薬の一つに、ステロイド剤のデキサメタゾンがある。COVID-19は過剰な免疫反応を引き起こすことがあるが、他のステロイド剤同様、デキサメタゾンにはそうした反応を鈍らせたり、緩和したりする効果がある。

2020年6月16日に、研究チームはデキサメタゾンに関する初期の結果を発表した。それによると、酸素吸入や人工呼吸器を必要とするCOVID-19患者において、デキサメタゾンは標準治療のみの場合と比較して、死亡する割合を3分の1ほど減少させた。酸素吸入を必要としない軽症の患者に対しては、デキサメタゾンの有効性は認められず、逆に症状を悪化させることもあるというが、最も重篤な症例においては、デキサメタゾンは生命線となる可能性がある。

この研究は、7月17日付で学術誌「New England Journal of Medicine」に正式に掲載されている。

ビムラージ氏は、RECOVERY試験に関わる人々の熱意と、彼らがメディア発表を行い、その結果についても後日くわしく報告している点を評価している。たとえ有望な治療法についてのメディア発表が行われても、その後、続報がないまま何カ月もたってしまうケースもあるからだ。

ほかの試験が行き詰まる中、RECOVERYはどうして明確な成果を得られたのだろうか。オックスフォード大の心臓病専門医で、RECOVERY試験の共同研究主任であるマーティン・ランドレー氏は、開始の手続きを簡単にした点を挙げる。

臨床試験を始めるにあたっては通常、長くて複雑な同意書に署名してもらう必要があり、患者一人から回収するデータも非常に多い。RECOVERY試験の場合、これとは対照的に、できるだけ多くの患者を集めるために、実用的かつ簡素に設計されている。

この点は臨床試験にとって非常に重要だ。なぜなら、サンプル数が多いほど、検証可能な兆候を確認できる可能性が高くなるからだ。英国の国民保健サービス(NHS)と提携することにより、RECOVERY試験はこれまでに約1万5000人の患者の採用に成功しており、これは試験開始以来、英国で入院したCOVID-19患者の6人に1人に相当する。

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