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死亡率下げる薬、治療法の改善 米英で進むコロナ研究

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ナショナルジオグラフィック日本版

米オハイオ州にあるクリーブランド・クリニックの内科医アダーシュ・ビムラージ氏は、米感染症学会の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療ガイドラインを作成する16人の一人だ。

病院で患者を診察し、自らも新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染しながらも、ビムラージ氏は続々と流れ込むCOVID-19治療法の新たな情報を評価してきた。現在、世界では1000件以上にのぼるCOVID-19治療法の無作為化臨床試験が進められている。ビムラージ氏らガイドライン策定チームの人々は、この大量の情報の中から、最も有望な結果を見極めなければならない。

「ファウチ氏の言葉を借りれば、これらの治療法はどれも状況を一変させる『ゲームチェンジャー』ではありません」。米国立アレルギー感染症研究所所長のアンソニー・ファウチ氏の言葉を引用して、ビムラージ氏はそう述べる。「それでも、有望な兆候はたしかにあるのです」

ステロイド剤デキサメタゾン

COVID-19の治療法の有効性を検証する数多くの試みの中でも、早いうちから成果を上げているのが、英オックスフォード大学を拠点に進められている「COVID-19治療無作為化評価(通称RECOVERY)」試験だ。

現在、試験の対象となっている薬の一つに、ステロイド剤のデキサメタゾンがある。COVID-19は過剰な免疫反応を引き起こすことがあるが、他のステロイド剤同様、デキサメタゾンにはそうした反応を鈍らせたり、緩和したりする効果がある。

2020年6月16日に、研究チームはデキサメタゾンに関する初期の結果を発表した。それによると、酸素吸入や人工呼吸器を必要とするCOVID-19患者において、デキサメタゾンは標準治療のみの場合と比較して、死亡する割合を3分の1ほど減少させた。酸素吸入を必要としない軽症の患者に対しては、デキサメタゾンの有効性は認められず、逆に症状を悪化させることもあるというが、最も重篤な症例においては、デキサメタゾンは生命線となる可能性がある。

この研究は、7月17日付で学術誌「New England Journal of Medicine」に正式に掲載されている。

ビムラージ氏は、RECOVERY試験に関わる人々の熱意と、彼らがメディア発表を行い、その結果についても後日くわしく報告している点を評価している。たとえ有望な治療法についてのメディア発表が行われても、その後、続報がないまま何カ月もたってしまうケースもあるからだ。

ほかの試験が行き詰まる中、RECOVERYはどうして明確な成果を得られたのだろうか。オックスフォード大の心臓病専門医で、RECOVERY試験の共同研究主任であるマーティン・ランドレー氏は、開始の手続きを簡単にした点を挙げる。

臨床試験を始めるにあたっては通常、長くて複雑な同意書に署名してもらう必要があり、患者一人から回収するデータも非常に多い。RECOVERY試験の場合、これとは対照的に、できるだけ多くの患者を集めるために、実用的かつ簡素に設計されている。

この点は臨床試験にとって非常に重要だ。なぜなら、サンプル数が多いほど、検証可能な兆候を確認できる可能性が高くなるからだ。英国の国民保健サービス(NHS)と提携することにより、RECOVERY試験はこれまでに約1万5000人の患者の採用に成功しており、これは試験開始以来、英国で入院したCOVID-19患者の6人に1人に相当する。

6月25日、米感染症学会は、デキサメタゾンを条件付きで推奨するよう治療ガイドラインを更新し、米国立衛生研究所も独自のガイドラインについて同様の変更を行った。厳密には米食品医薬品局(FDA)が承認する治療薬ではないものの、デキサメタゾンは、COVID-19の生存率を高めることが示された最初の治療薬となった。

RECOVERY試験の目的は、有望な治療法の効果を立証するだけでなく、ある方法の有効性が疑われた場合、それを確認することにもある。RECOVERYの研究者らは、ドナルド・トランプ米大統領やブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領らが支持していた抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンについて、4716人を対象とした試験の結果を発表している。

7月15日に査読なしで発表されたその報告書によると、ヒドロキシクロロキンはCOVID-19の治療において明確な臨床的有益性を示さなかった。これについては、ほかの一連の研究においても同様の結果が得られている。

ランドレー氏は今後、回復したCOVID-19患者の血液から作られた、抗体を豊富に含む回復期血漿(けっしょう)の試験を行いたいとしている。

吸入型治療薬インターフェロンベータ

COVID-19の治療法の探究において、早い時期に発見された成果としては、回復期間をわずかに短縮できる抗ウイルス薬のレムデシビルがある。一方で研究者らは、体の自然な抗ウイルス反応を増強する方法も模索している。中でも有望な候補が、免疫系のサイトカインの一種であるタンパク質のインターフェロンベータだ。

通常、細胞がウイルスに感染すると、細胞は多くの種類のインターフェロンを放出して、近隣の細胞が防御のスイッチを入れて、さまざまな抗ウイルス化合物を産生するよう促す。ところが新型コロナウイルスは、こうしたインターフェロンによる罠をすり抜けるのが得意なようで、その結果、肺での初期反応が完全には活性化されず、ウイルスが大暴れしてしまう。

この点に注目したのが、英のバイオテクノロジー企業シネアジェンだ。シネアジェンは長年にわたり、重度の喘息(ぜんそく)や慢性閉塞性肺疾患の患者がウイルス感染症を撃退するのを助ける、インターフェロンベータの吸入型ミストを開発してきた。

7月20日、投資家向けのプレゼンテーションで、同社は101人の入院患者を対象とした無作為化試験の結果を発表した。それによると、インターフェロンベータを投与された患者は、標準治療を受けている患者に比べて、死亡したり、侵襲的な人工呼吸(気管を挿管するなど体に負担のかかる人工呼吸)を必要としたりして重症化する割合が79%減少した。また、インターフェロンベータを投与された患者は、回復した数も多く、息切れも減少しているという。

「率直に言って、この治療法の効果の高さには驚かされました」と、英サウサンプトン大学の免疫薬理学者で、シネアジェンの共同創設者でもあるスティーブン・ホルゲート氏は述べている。「ウイルスが肺に蔓延しつつある初期段階でこの薬を投与した場合、高い効果が得られるだろうということはわかっていました。しかし、今にも人工呼吸器をつけようかという患者にも効果を発揮し、回復を加速させることができたのです」

全体的な数字は有望に見えるものの、この初期の試験は小規模なものであり、薬の効果がどの程度のものかについてはまだよくわかっていない。ホルゲート氏によると、シネアジェンは今秋、英国でより大規模な臨床試験の協力者を募っているという。一方で、インターフェロンの使用はタイミングに依存するという別の研究もある。これによると、投与が遅すぎる場合、効果が低いか、あるいは末期の患者では炎症を増幅させることもあるという。

改善される標準的な治療法

COVID-19への対処に希望を与えてくれるのは、優秀な薬だけではない。それと同じくらい重要なのは、マスク、ソーシャルディスタンス、手洗いなどの基本的な予防法であり、また標準的な治療の改善だ。

この夏、COVID-19が再び増えた際、この病気に対する医師たちの理解が深まっていたことが、米国での死者数の減少に寄与したことはほぼ確実だろう。6月30日付で学術誌「Anaesthesia」に発表された論文でも、おそらくCOVID-19にうまく対処できるようになるおかげで、集中治療室の患者の死亡率が次第に下がっているとすでに指摘されていた。

たとえば、侵襲的な人工呼吸が挙げられる。人工呼吸は多くのCOVID-19患者を救ってきたが、リスクがないわけではない。呼吸による圧迫は肺に損傷を与える可能性があり、また気管内に挿管する不快感や不安から、心的外傷後ストレス障害の症状が引き起こされる場合もある。そのため研究者らは、挿管による損傷や苦痛を最小限に抑え、患者の呼吸や血中酸素濃度を改善する、より侵襲性の低い方法を模索してきた。

「よくある間違いは、難しく見える方法ばかりを喜んで採用し、効果があるとよくわかっているものをおろそかにしてしまうことです」と語るのは、米アリゾナ大学の研究者で、ICU医療部長のクリスチャン・バイム氏だ。

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)と呼ばれる、よく知られた症状がある。重症のCOVID-19患者もこの症状を示すことがある。バイム氏らは、ARDSに用いられる肺保護換気という技術を、COVID-19患者に用いて良好な結果を得ている。これは人工呼吸器の設定を調整して、肺に送り込まれる空気の圧力と量を制限し、さらなる圧迫による負荷を防ぐというものだ。

バイム氏はまた、もう一つ、驚くほど効果のある簡単なテクニックが存在すると指摘する。それはCOVID-19の患者をうつぶせに寝かせることだ。「これはCOVID-19患者全般に対して、非常に有効であることがわかっています」

おなかを下にして寝ることは、血液中に酸素を取り込む肺の能力を高める。心臓は胸の前寄りにあるため、仰向けになっている人をうつぶせにすれば、肺にかかっている心臓の重量を取り除ける。また、肺の後部には、前部よりも血流とガス交換室の数が多く、うつぶせで寝れば、ガス交換室が圧迫されにくく、効率もよい。

人手の面から言えば、患者をうつぶせにすることはそう簡単でない場合もある。点滴や人工呼吸器につながれている患者の体を安全にひっくり返すには、5人の手が必要になるだろう。しかし、世界各地での複数の症例研究や調査からは、酸素補給との組み合わせにより、うつぶせ寝は意識のある軽症患者の血中酸素濃度も改善させることがわかっている。さらには、この方法は侵襲的な人工呼吸器が必要になるリスクも下げる可能性があるという。

「これは魔法の治療法というわけではありません。それでも、うつぶせ寝に対しては驚くほど多くの患者が反応を示します。しかも多くの場合、かなり急速な反応が見られるのです」と、米イリノイ州シカゴのクック郡保健局で救急医療主任を務めるケビン・マクガーク氏は言う。「意識のある人に、おなかを下にして寝てくださいと頼むのは、そう難しいことではありませんしね」

(文 MICHAEL GRESHKO、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年9月2日付

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