何が読み取れるかは自分次第 「読め方」で差をつけろ第6回 キャリアサバイバル(2)本や資料の読め方を変える

(5)得たものはちょっと「抽象化」して考える・覚える

記事の中で、私が一番面白いと思ったのは以下のくだりです。さすがのYKKも、かなり苦労している様子です。

「ファストファッションにYKKが選ばれるようになってきた」
「だが、管理システムが短納期に対応できていなかった」「従来のシステムは、1つの生産工程に1日かかることを前提としていたが、ファストファッションの納期に対応するには、1時間単位で工程を管理する必要がある」
「当初は専用ラインをつくり、人海戦術で乗り切った」「新システムの導入計画は3度も延期され、1年遅れで導入予定だ」

これを抽象化すると、組織が持つ「固有タクトタイム」の問題、ということになるでしょうか。

タクトタイムというのは生産工程における概念で、流れ作業のラインが何分で次の工程に動くかを示します。なので流れ作業であれば全工程で同じです。全工程とも、ひとりの指揮者のタクトに従って、次の工程に仕掛かり品(生産途中の製品)を渡すのです。

ファスナーの生産工程が、材料生産から完成品チェックまで、10工程あるとしましょう。おのおのの工程がどんなに頑張って素早く(たとえば1時間で!)仕上げたとしても、タクトタイムは1日なので次の日までは、次の工程の作業が始まることはありません。結局、最短でも生産には10日間かかることになります。これでファストファッション対応などできるわけがありません。

でもそれを1時間単位にすることが、恐ろしく大変そうであることが、記事からはうかがえます。新システムの導入は3度も延期されていると。

抽象化して考えることで、その本質が見えてきます。そして、他の業界とのつながりや差異がハッキリします。また、そういうレベルに昇華して覚えておくことで、次に別の情報が来たときに、心に引っかかりやすくなるのです。多くの本を斜め読みする効果・効率がぐっと上がります。たとえば「組織の固有タクトタイムと顧客ニーズのズレ問題」、みなさんの周りにはありませんか?

次回はキャリア構築のための基礎スキルの3つ目、論理的思考法についてお話しします。

三谷宏治
KIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授。
1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、BCG、アクセンチュアで19年半経営戦略コンサルタントとして活躍。92年INSEADでMBA修了。2006年から教育分野に活動の舞台を移し、年間1万人以上に授業・講演。無類の本好きとして知られる。著書に『経営戦略全史』『ビジネスモデル全史』『新しい経営学』など。『お手伝い至上主義!』『戦略子育て』など戦略視点での家庭教育書も。早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学で客員教授、放課後NPOアフタースクール・認定NPO 3keysで理事を務める。永平寺ふるさと大使、3人娘の父。

戦略読書 〔増補版〕 (日経ビジネス人文庫)

著者 : 三谷 宏治
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,100円 (税込み)

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