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写真はイメージ =PIXTA

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読み方でなく「読め方」の差が本当の差となる

同じ文章を読んでも、そこから何が読み取れるかは、人によって大きく違います。それを「読め方」と呼びましょう。

本や雑誌を人の2倍(たとえば年間100冊でなく200冊)読むことは容易ではありませんが、1冊から面白い点を人の5倍見つけることは十分可能です。10倍だって可能かもしれません。だとしたら、最後に大きな差を生むのは、読み方ではなく読め方なのでしょう。私はここが、ちょっと得意だったりします。

たとえばこんな文章があったとしましょう。日経ビジネス(2015.06.22)でのYKK特集記事『高品質の呪縛、「量」で断ち切る』です。6ページわたるその記事の概要はこうです。

リード文:ファスナー世界最大手が、「質」に加えて「量」も追求する戦略へとかじを切った。品質の良さを武器に金額で世界シェア4割を押さえたが、数量では2割にとどまる。「このままではジリ貧」という危機感から、攻めあぐねていたボリュームゾーン攻略に乗り出した。
小見出し:ファストファッションに出遅れ、試作3日・量産5日・遅れゼロ、門外不出だった材料の生産、「過剰品質」から「十分品質」へ
コラム:「YKKの基準」ではなく「服の基準」で品質を決める、「安かろう、良かろう」で勝つ

(1) 過去や他業界と「対比」して大局観を持つ

まず私がやることは、その記事を自分の頭の中(知識フィールド)で位置づけることです。その記事に入り込んでしまう前に、それがどういうものなのか、客観視するのです。それには「対比」が役に立ちます。

この記事を読んで、まず思ったのは「日経ビジネスで、昔、似たような特集記事があったゾ」ということでした。それは、8年半前の記事でした。『YKK 知られざる「善の経営」』として、そのファスナー事業の成長と超高収益性(売上高営業利益率14%)を絶賛する内容でした。

そして今回は、急激に興隆するファストファッション(ZARA、H&Mなど)への対応が出遅れ、このままではジリ貧になる、との状況を伝えています。見出しレベルで比べても、その差は劇的です。

・顧客への対応力で勝った   → 顧客対応に遅れた
・材料の国内生産こそが優位性 → 生産地にも材料生産を移す
・高品質へのこだわりこそ命  → 過剰品質から十分品質へ
・中国生産が大切       → 中国以外へのアジアシフトが必須

記事の内容を見ると、YKKがやっていることはほとんど変わっていないようなのに、それらへの評価は、エラい変わりようです。現状への評価は正しいのか、過去の評価の何が間違えていたのか、よくよく眉に唾して読まなくてはなりません。

経営陣も日経ビジネスも、いったい何を見誤っていたのでしょうか。

過去の事例や他業界の話と「対比」することで、新しい情報への客観的なスタンスが築けます。称賛記事にも批判記事にも流されることのない、客観的・中立的な自分が持てるのです。

ただしこれは、「基礎」ができていないとできない技でもあります。

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