日本と世界を変えるには 隠れた「とがった個」つなぐA.T.カーニー日本代表 関灘茂氏 (4)

それと同時に、「分野横断の広範な知識が無ければ、そもそも正しい課題設定ができない」ということを痛感し、「学ぶべき領域の広範さと深さ」を見直す機会にもなりました。そのような経緯もあり、共同執筆した記事のタイトルは、「『専門バカ』+『俯瞰(ふかん)バカ』=『前のめり人材』の3つの地力」にしました。

専門性を突き詰めるという「専門バカ」の側面に加えて、専門分野にとどまらずにあらゆる分野を俯瞰できるようになるという「俯瞰バカ」の側面をも持ち、複雑に絡み合うグローバル・日本の政治・経済・金融・医療・環境などの領域横断で連関する課題を設定し、解決に導く「前のめり人材」の必要性を提起しました。

世の中でいわれるところの、単純なSpecialist(専門家)でもなく、単純なGeneralistでもなく、広範で深い知識を有するDeep Generalistと言うべき人物を「前のめり人材」と定義し、「次元を動く力」「磁石になる力」「実験する力」の3つの地力を持つ人物と規定しました。

次元を動く・磁石になる・実験する、の3つの地力

1つ目の「次元を動く力」が必要と記したのは、課題を解決するための「知」=「ネクストモデル」は細分化された「知」を俯瞰して、それらを統合することで生み出されると考えたためです。この「知」の俯瞰のためには、自らの立場や専門領域にとらわれてタコツボにとどまることなく、空間軸や時間軸で思考の幅を広げてみる。つまり物事を多次元的に捉える力が必要と考えました。

私も含めた読者自身が、次元を動く力をチェックするための項目として、自身の言葉で、「皆さんの会社が5年後に直面する課題を言えるか?」「日本が50年後に直面する課題を言えるか?」「日本以外の3つの国のそれぞれが5年後に直面する課題を言えるか?」といった問いかけを設けました。

組織や立場が異なる人材が集まって、知を結集したい(写真はイメージ=PIXTA)

2つ目の「磁石になる力」が必要と記したのは、「ネクストモデル」は1人では生み出せないものであり、連関し合った複雑な課題を解決する「ネクストモデル」は、必然的にさまざまな「知」を結集してできた大きなものになると考えたためです。1人の頭の中にある「知」だけで生み出すのは限界であり、他人の頭の中にある「知」をも俯瞰して統合し、創発によって生み出す力が必要と考えました。

同様に、磁石になる力をチェックするための項目として、自身の周りを見渡して、「社内に同志と言える仲間が100人いるか?」「社外に意見交換できる仲間が100人いるか?」「過去1年で周りの人と共に『新しい』と誇れるアイデアを生み出したことがあるか?」といった問いかけを設けました。

3つ目の「実験する力」が必要と記したのは、「ネクストモデル」は誰かの頭の中で、ある日突然に完成形が生まれることはなく、「課題連関の時代」を迎えて、人類は複雑で解決が難しい課題に向き合っているので、完成形にこだわらずに、「ネクストモデル」の仮説が不完全なままでも、それを実世界で試し、その検証による紆余(うよ)曲折を楽しみながら、その仮説を進化させる力が必要と考えました。

同様に、実験する力をチェックするための項目として、自身はPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルにおいて、「100点に近い計画を作り込むのではなく、限られた情報やデータしかなくとも、60点程度の計画(仮説)を構築することができているか?」「計画(仮説)を口頭で、手書き資料で、動きまわって、素早く検証し、進化させることができているか?」といった問いかけを設けました。

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