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丸山珈琲が落札 エチオピアNo.1の豆はどんな味?

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NIKKEI STYLE

コーヒーの「故郷」エチオピアで今春、高品質のスペシャルティコーヒーの国際品評会「カップ・オブ・エクセレンス(COE)」が初めて開かれた。上位入賞した豆のオークションは、売上総額がCOEの過去最高を記録。最高評価の豆は1ポンド(約454グラム)当たり185.1ドル(評価時の為替換算で約2万円)の高値をつけた。これを落札した業者の一つが、日本のスペシャルティの先駆者である丸山珈琲(長野県軽井沢町)だ。エチオピアNo.1のコーヒーはどんな味わいなのか? コロナ禍のもと、品評会をどうやって開いたのか? COE1位の豆を数多く落札してきた社長の丸山健太郎さんに聞いてみた。

エチオピア産コーヒーは日本でも「モカ」の名称で親しまれてきた。イエメン産モカと区別するため「エチオピア・モカ」と総称されたり、収穫する地域名をつけて「モカ・シダモ」「モカ・イルガチェフ」といった銘柄で呼ばれたりする。その持ち味を丸山さんはこう表現する。

「総じてエチオピアのコーヒーは、フルーツや花を思わせる甘~い香りが特徴。しっかりした酸味があるけど、それを甘味が包んでいる。そこが中米のパリッとした酸味と違うところ。角のとれた酸味は日本人好みですね」

COEについて説明しておこう。生産履歴が明確で、品質が高く、風味に個性がある「スペシャルティコーヒー」の概念が生まれたのが1970年代半ば。82年には米国スペシャルティコーヒー協会(SCAA、2017年に欧州協会と合併しSCA=スペシャルティコーヒー協会に改称)が設立された。90年代のコーヒー価格暴落を経て、各生産国の高品質の豆を高い価格で取引する国際的な事業モデルを構築しようとの機運が高まり、まず99年にブラジルで、品質の高い豆を選び出す品評会「ベスト・オブ・ブラジル」が開かれるに至った。これが事実上最初のCOEだ。

出品された豆はSCAAのカッピング(テイスティング)方式で審査し、上位入賞の豆はSCAAのオークションサイトで競売された。開催国は徐々に増え、現在は02年設立のNPO、アライアンス・フォー・コーヒー・エクセレンス(ACE)が主催。北中南米とアフリカの12カ国で毎年開かれ、品評会で100点満点中87点以上を獲得したCOE受賞豆が国際オークションにかけられる。

エチオピア初のCOEでは87点以上の豆が28、90点越えが3つ出た。1位は91.04点のニグセ・ゲメダ・ムデ農園(シダマ地区)の豆で、6月に実施したオークションでは丸山珈琲やサザコーヒー(茨城県ひたちなか市)など国内外の業者のチームと、猿田彦珈琲(東京・渋谷)が約595ポンドずつ落札した。丸山珈琲は2位と14位の豆も落札している。

「1位の豆は米国人好みのエキゾチックな風味。ブルーベリーのような甘い香り、ジャスミンの花やトロピカルフルーツを思わせる華やかさを感じました。2位は黒砂糖のような甘さに包まれて、ラベンダーの香りがある。後味にはナツメグのようなスパイスを感じましたね」

COEは通常、20人程度の審査員が現地に赴き、数日間共同生活しながら審査を進める。国際審査員の丸山さんも当初はエチオピアでの審査に加わるはずだった。ところが、コロナのため今年は従来方式での開催が不可能に。そこでエチオピアについては、国内で選別した豆を米国に送り、以降2段階でCOEのヘッドジャッジ経験者らが審査するリモート方式が採用された。

他の生産国のCOEも、今年は別方式のリモート審査に変更されている。まず各国内の予備審査で選別した豆を、ACEが指定したグローバル・コーヒー・センター(GCCs)と呼ぶ世界の6業者に送る。その各業者が一定の条件下でカッピングし、はじき出したスコアを集計するという段取りだ。すでにニカラグアなど4カ国のCOEがGCCs方式で実施され、丸山珈琲はいずれも1位の豆を落札している。

GCCsには日本から丸山珈琲と、コーヒー専門商社のワタル(東京・港)が選ばれた。丸山さんはこれまでに数多くのCOEに参加した経験があり、ACEの名誉理事でもある。カッピングは軽井沢の同社の施設で、もう一人のベテラン社員と「まるで僧院、禅寺みたいな雰囲気の中で、淡々と進めました」と振り返る。

「このリモート方式、やってみるとすごくいいんです。従来方式だと審査員の間でだんだん評価の方向性が合ってきて、高得点の豆がいくつも出る傾向がある。リモートでは各審査員がより素直に、比較的辛口な点数をつける。だから90点以上は4つも5つも出ないけど、評価にメリハリがつくんです」

「現地に行くと時差はあるし、気候も違うし、イベントで疲れちゃう。でもリモート方式では集中して取り組めるので精度が上がります。僕は審査だけ、このままリモート方式で続けてもいいと思いますね」

エチオピアでこれまでCOEが開催されてこなかったのは、生産履歴を管理するシステムの未整備や、ルーツ国としてのプライドの高さが理由だろうと丸山さんは指摘する。

「でも世界のコーヒー業界で情報の民主化が進み、レベルもどんどん上がる中で、いよいよ彼らも危機感を抱いたのでしょう。今回のCOEでエチオピアの生産者は自分たちの豆がこんなに高く評価されて、高く売れる、ということを知ってしまった。パンドラの箱を開けたんです」

今回興味深かったのは、1位と2位の豆の品種名が「74158」「74110」と数字表記で、一般的な「ブルボン」「ティピカ」といった名前がついていないことだ。

「エチオピアは探せばいい豆がまだいっぱいある。今回のは氷山の一角です。COEを契機に競争が起きて、この国のコーヒーの品質レベルはメチャクチャ上がりますよ。そしておそらく、この動きはCOE未開催の隣国ケニアにも飛び火する。両国は、品質と量で間違いなく世界最強の生産国ですから、今後が楽しみですね」

ちなみに今回落札した豆はいつごろ日本で味わえるのだろう?

「本当は空輸で10月1日の『国際コーヒーの日』に間に合わせたかったんですが、まだ少し時間がかかりそうです。なるべく年内には到着させたい。ギリギリ利益が出る価格水準で提供できれば、と考えています」

さて、世界の社会・経済活動をリセットに追い込んだコロナ禍は、丸山さんの社長業においても1つの転機となりそうだ。かつては1年の半分以上を海外の産地巡りなどに費やしていたが、今年は1月以来、ずっと日本にいる。

「その間に痛感したのが、当社も規模が大きくなり、組織をもっと整えなきゃいけない、ということ。信頼できる社員に仕事を任せて、僕は細かいことに口を出さず、味覚を中心にブランドのチェックに心を砕く。もう以前のようにずっと海外に行くことはないと思います」

企業としてさらに成長し、年商20億円の壁を越えたい。同時に、コーヒーに真摯に向き合うクラフトマンシップのDNAも残したい。この両立を可能にする人づくり、組織づくりが目下最大の課題と認識している。

丸山珈琲の売上高は7月には前年の95%まで戻った。下支えしたのは通販を中心とする豆売りだ。さらに客層を広げるべく、新たな仕掛けを模索し続けている。4~6月にはコーヒー好きだったベートーベンの生誕250周年の企画を実施。若手指揮者の水野蒼生さんとコラボしたオリジナルブレンドのコーヒーバッグは9日間で完売した。

「音楽などの文化とかスポーツとかに関心のある集団(クラスター)と、コーヒーを結びつけることで、新しいお客を掘り起こせる。そうした面白い切り口はいくつもあると思います」

日本に限らず、コロナ・リセットで浮かび上がるのは「日常生活のグレードアップ」「家の中の充実」といった消費のキーワードだ。そこでコーヒーという飲み物が存在感を発揮する余地は大いにある。スペシャルティコーヒーも、その一枚看板である丸山珈琲も、身近な楽しみの新しい価値を明示し続けることで、混沌の先に確かな足がかりを得られるはずだ。

(名出晃)

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