
「1位の豆は米国人好みのエキゾチックな風味。ブルーベリーのような甘い香り、ジャスミンの花やトロピカルフルーツを思わせる華やかさを感じました。2位は黒砂糖のような甘さに包まれて、ラベンダーの香りがある。後味にはナツメグのようなスパイスを感じましたね」
COEは通常、20人程度の審査員が現地に赴き、数日間共同生活しながら審査を進める。国際審査員の丸山さんも当初はエチオピアでの審査に加わるはずだった。ところが、コロナのため今年は従来方式での開催が不可能に。そこでエチオピアについては、国内で選別した豆を米国に送り、以降2段階でCOEのヘッドジャッジ経験者らが審査するリモート方式が採用された。
他の生産国のCOEも、今年は別方式のリモート審査に変更されている。まず各国内の予備審査で選別した豆を、ACEが指定したグローバル・コーヒー・センター(GCCs)と呼ぶ世界の6業者に送る。その各業者が一定の条件下でカッピングし、はじき出したスコアを集計するという段取りだ。すでにニカラグアなど4カ国のCOEがGCCs方式で実施され、丸山珈琲はいずれも1位の豆を落札している。

GCCsには日本から丸山珈琲と、コーヒー専門商社のワタル(東京・港)が選ばれた。丸山さんはこれまでに数多くのCOEに参加した経験があり、ACEの名誉理事でもある。カッピングは軽井沢の同社の施設で、もう一人のベテラン社員と「まるで僧院、禅寺みたいな雰囲気の中で、淡々と進めました」と振り返る。
「このリモート方式、やってみるとすごくいいんです。従来方式だと審査員の間でだんだん評価の方向性が合ってきて、高得点の豆がいくつも出る傾向がある。リモートでは各審査員がより素直に、比較的辛口な点数をつける。だから90点以上は4つも5つも出ないけど、評価にメリハリがつくんです」
「現地に行くと時差はあるし、気候も違うし、イベントで疲れちゃう。でもリモート方式では集中して取り組めるので精度が上がります。僕は審査だけ、このままリモート方式で続けてもいいと思いますね」
エチオピアでこれまでCOEが開催されてこなかったのは、生産履歴を管理するシステムの未整備や、ルーツ国としてのプライドの高さが理由だろうと丸山さんは指摘する。
「でも世界のコーヒー業界で情報の民主化が進み、レベルもどんどん上がる中で、いよいよ彼らも危機感を抱いたのでしょう。今回のCOEでエチオピアの生産者は自分たちの豆がこんなに高く評価されて、高く売れる、ということを知ってしまった。パンドラの箱を開けたんです」