日本の成長は「大阪にお任せ」 万博で目指す世界都市『大阪が日本を救う』

新型コロナで頑張る

大阪の勢いを示す最近の事例として新型コロナ対策を巡る様々な動きにも触れられています。

大阪の底力は、新型コロナへの対応でも発揮された。休業要請が出された後の自粛割合が大阪は総じて全国の他地域よりも高かったのだ。様々な会社がビッグデータを使って緊急事態宣言前後での交通量を公表しているが、大阪梅田駅界隈が最大のマイナスになっている。大阪人は日頃自由にふるまうが、一大事には一致団結することがある。
一例としては2019年6月のG20サミットの時の市内交通50%削減要請をあげよう。当初はそんなことはできないという空気であったが、結局は目標を達成した。
「吉村寝ろ」という言葉も一時話題になった。新型コロナへの対応で昼夜問わずメディアやツイッターで情報発信をしていた吉村洋文知事に対して、このままでは疲労困憊で倒れてしまうことを心配した人たちがネットで発した言葉だ。頑張っている人を応援する気持ちが伝わってくる。「人混み好き、夜飲むのも好き、外出するの大好き。でも今回は家にいるから、吉村知事、家で寝てて」といった内容のコメントを見たときには、知人の関西人が言い出しそうで、面白かったのと、少し懐かしい気持ちになった。
(第6章 大阪をみれば日本の未来がみえる 220ページ)

そんな大阪に、さらなるパワーアップをもたらす構想が進行しています。「大阪都構想」です。2015年に住民投票が行われ、僅差で否決されたことを覚えている読者も多いのではないでしょうか。前大阪維新の会代表の橋下徹氏が、大阪府知事時代の2010年に提唱した自治体改革構想です。当時は大阪府を5の特別区に再編し、大阪府と大阪市の間の「二重行政」解消と、行政効率化を掲げました。このほど、バージョンアップした大阪都構想について2回目の住民投票を実施することが決定。11月1日の投票日に向けて関西では再び自治体改革を巡る議論が熱を帯びています。

大阪都構想が実現したら、日本全体の地方自治にも大きな影響を与えると著者は期待します。「自治体の大合併や道州制の議論を再びはじめるきっかけになるのではないかと考えている」(著者)と指摘します。その理由について「民間企業がなぜ活性化するかと言えば、M&Aがあるからである。一方で行政については都道府県レベルでは再編は起きていない。実際に『大阪都』になるかはともかく、政令市や都道府県のM&A(合併)は真剣に議論する必要があるのではないか」と説明します。

ジェット機のエンジンは両翼に付いています。日本経済がコロナ危機を克服して「巡航速度」で飛行を続けるためには、大阪が東京と並ぶパワーを備えることに期待しましょう。大阪はとても頼りになる存在なのです。

◆編集者からひとこと 日本経済新聞出版・雨宮百子

昨年発売した『SDGs入門』(日経文庫)の著者が大阪で勤務しており、出張で関西に行く機会が多く、いくたびに「大阪が変わっている!」という思いをつのらせていました。雑談で大阪の変化についての話をするなかで、私の想像以上に、東京にはない希望や未来、熱意を大阪の人が持っていることに驚き、書籍にしたいと思い、大阪に詳しい石川さんをご紹介いただきました。

当初はオリンピック・パラリンピックの終了後に刊行予定でしたが、コロナ禍のなかでの発売となりました。リモートワークが大きくすすみ、セミナーなどもウェビナーでの開催が増え、地方と東京の格差は一気に縮まったようにおもいます。2025年の万博に向けて、変化を続ける大阪に驚いていただけると幸いです。

一日に数百冊が世に出るとされる新刊書籍の中で、本当に「読む価値がある本」は何か。「若手リーダーに贈る教科書」では、書籍づくりの第一線に立つ出版社の編集者が20~30代のリーダーに今読んでほしい自社刊行本の「イチオシ」を紹介します。

大阪が日本を救う (日経プレミアシリーズ)

著者 : 石川智久
出版 : 日経BP
価格 : 935 円(税込み)

ビジネス書などの書評を紹介
注目記事
ビジネス書などの書評を紹介