試合会場に声援届け! リモート応援の新サービス

ヤマハの「リモートチアラー」はスマートフォンを使って歓声や拍手をスタジアムに届けられる
ヤマハの「リモートチアラー」はスマートフォンを使って歓声や拍手をスタジアムに届けられる

新型コロナウイルス感染症の影響で、開幕・再開が遅れたサッカーJリーグやプロ野球。7月には観客数5000人を上限に試合公開が始まったが、実際にスタジアムに足を運べないファンは多い。そうした自宅でスポーツ観戦を楽しみたい人向けに、現場の臨場感が味わえる新サービスが次々登場している。

6月下旬、リモートマッチ(無観客試合)で再開したJリーグ。選手たちが熱いプレーを披露する中、観客がいないはずのスタンドから「行けー!」「頑張れー!」などの声援や拍手が響いた。

実は声の主はヤマハが開発したスマートフォンによる遠隔応援システム「リモートチアラー」だった。スマホ上の専用アプリで「歓声」や「拍手」ボタンを押すと、スタジアムに設置されたスピーカーから音が流れ、選手に応援を届けられるしくみだ。

声援の声や音の種類は、主催者やチームが自由にカスタマイズできる。音を流すにはスタジアムの既存スピーカーを使えるため、導入コストも抑えられる。テレビやインターネットの試合中継を見ながらボタンを押すと実際の展開とずれが生じるため、ヤマハがクラウド上で処理し、スピーカーから音を流すタイミングを調整しているという。

スタジアムに設置されたスピーカーからファンの歓声や拍手の音を流す

開発を担当したヤマハクラウドビジネス推進部SoundUDグループの瀬戸優樹氏は「2年ほど前から、病気や子育てで会場に行けない人のために開発を進めてきた」と話す。そこに新型コロナでオンラインスポーツ観戦が一気に広がったため、サービスのリリースを早めたという。

JリーグではJ1の清水エスパルスやJ2のジュビロ磐田など、リーグ再開・開幕に合わせて26クラブが採用。阪神タイガースや千葉ロッテマリーンズなどプロ野球にも導入が広がっている。瀬戸氏は「今後、バスケットボールやテニスなど他のスポーツへも導入を広げたい」と話す。

一方、KDDIは8月から、プロ野球の横浜DeNAベイスターズと協力し、横浜スタジアム(横浜市)での野球観戦を仮想体験できるサービスを始めた。利用者は「cluster(クラスター)」というアプリを通じ、自分の分身「アバター」でバーチャル空間上に再現されたスタジアムを訪れる。

横浜DeNAベイスターズは仮想空間上で野球観戦を楽しめるサービスを始めた

仮想現実(VR)ヘッドセットなどを使うとあたかも現地に行ったような感覚を味わえる。試合中は試合展開に合わせて花火が上がるなどの演出もあり、参加者同士はチャットを使ってやり取りできる。

名古屋グランパスの公式アプリでは試合中にチャットで対話が楽しめる

8月11日の阪神戦で行われた無料トライアルでは延べ約3万人が参加した。バーチャル観戦会は今後も開催する予定で、KDDIの担当者は「コロナ禍で観客数が制限されている中、現地に行ったような感覚を楽しんでもらいたい」と話す。

同社はJ1の名古屋グランパスエイトと連携し、自宅で試合観戦を楽しむための公式アプリも提供している。選手を乗せたバスが到着した時や試合前のウオーミングアップ時の映像を配信するほか、応援歌を収録。試合中はクラブのマスコットなどとチャットで会話を楽しめる。

チーム側もこうしたバーチャル観戦でファンサービスに動く。千葉ロッテはテレビやインターネットで観戦するファンに向け、特典付きの「リモート応援チケット」を販売している。価格は2000円。購入者には試合当日のスタメンや試合結果が記載された観戦証明書のほか、小型扇風機やピンバッジなどのグッズを贈る。ZOZOマリンスタジアムで実際に試合を観戦した時と同様の来場ポイントも付与される。

新型コロナの収束は見通せず、Jリーグやプロ野球の観客数は上限5000人の制限が今後も続きそうだ。チケットが手に入らない人は、自宅でも臨場感に満ちたゲーム観戦ができるこうしたサービスを利用し、スポーツの新たな楽しみを発見してみてはいかがだろう。

(木村祐太)

[日本経済新聞夕刊2020年9月5日付]

注目記事
今こそ始める学び特集