株式投資の落とし穴 株主優待や高配当に目を奪われ…コロナの先の家計シナリオ ファイナンシャルプランナー 中里邦宏

2020/9/9

その2つとは、本業で利益があがっているかを見る「営業利益」、そして財務の安定性を見る「自己資本比率」です。これらの言葉を聞きなれない人がいるかもしれませんので、さらに詳しく見ていきましょう。

まず、営業利益は過去から今期予想も含めてその推移を見るのがポイントです。今期の業績予想が前期と比べて悪化している場合、それがコロナの影響だけなのかどうかを確認するためです。営業利益は本業の利益をあらわすものですから、これがコロナ以前から下落傾向だったり、すでに赤字だったりする場合、業績の回復が以前にも増して厳しいとも考えられます。

次に、ふたつめの「自己資本比率」を見ていきます。これは、いわば倒産リスクを見る資金繰りの指標でもあります。業種にもよりますが、一般に30%以上が財務が安定している目安とされています。

いずれの指標も、各企業がホームページ(HP)などで公表している決算短信(1ページ目)や情報媒体を見れば数分で確認することができます。

配当金は増え続けても株価は半値以下

さて、ここまで株主優待の話をしてきましたが、それと似た相談に「配当金が多く出る企業の株式なら、定期的にお金が受け取れるしメリットがあるのでは?」「配当金が出ているなら、その企業は順調ということか?」といったものがあります。果たしてこの考え方に落とし穴はないのでしょうか?

たとえ配当金が増えていったとしても、株価が大きく値下がりするケースはあります。株価に対する配当金の割合である「配当利回り」の上昇は、単に配当金が増えるだけの影響ではないことが配当利回りの計算式を見るとわかりやすいと思います(図1)。

日本たばこ産業(JT)の例を見てみましょう。JTは配当利回りが約7.8%(2020年8月末現在)と高く、株主優待もあります。配当利回りは株価が高値をつけた15年7月時点では約2.5%に過ぎませんでしたが、なぜ大きく上昇したのでしょうか? その理由は15年以降、配当金が増え続ける一方で、株価も半値以下まで下がったからです(図2)。

企業の将来、自分なりに見極める

このように株主優待や配当金だけに目を奪われ、株主優待や配当金を出せるならその企業が順調である証拠とばかりに株式投資をしていると、思わぬ株価の下落に遭遇して本末転倒の状態にもなりかねません。

そうならないために、最低限のポイントをおさえて、その企業の将来を自分なりに見極めて株を購入したいものです。財務はその企業の状態を如実に表し、また株価はその企業の将来性も織り込んでいくものです。

興味を持てる株主優待や高配当の企業を見つけたら、あと少しだけ手間をかけて確認してみてください。

中里邦宏
ファイナンシャルプランナー(CFP)、マネーディアセオリー株式会社取締役副社長。上場メーカーで設計担当後2004年にFP事務所を開業、16年に法人設立。顧客が納得するまでシミュレーションを繰り返すライフプラン相談を中心に、資産運用教育、ライフプランツールのプランニング、ロジック提供なども手がける。日本証券アナリスト協会検定会員、1級FP技能士、DCプランナー1級。

「ニューノーマル」「新常態」とも呼ばれる新しい生活様式が広がっています。コロナで一変した家計の収入や支出、それに伴うお金のやりくりをどうすればよいかも喫緊の課題です。連載「コロナの先の家計シナリオ」は専門家がコロナ後のお金にまつわる動向を先読みし、ヒントを与えます。

注目記事