子どもにかかるお金は? 学校外の費用、かけ過ぎ注意
子どものいる人や、将来子どもがほしいと思っている人にとって気になるのは、「子どもにいくらお金がかかるの?」ということですよね。「1人当たり教育費が1000万円以上かかる」なんていうデータを見ると「えーっ、そんなお金ない!」と思うかもしれません。でも、これは大学を卒業するまでのトータルの金額。一度にかかるわけではないので、計画的に準備していけば大丈夫。
実際にかかるおおよその金額を知っておけば、教育費への不安がある程度解消でき、お金の準備もしやすくなるでしょう。
高校までは公的支援がいろいろ
まず出産にかかるお金。
正常分娩は病気ではないので、分娩費などは全額自己負担なのですが、健康保険から子ども1人について42万円が「出産育児一時金」として支払われます。これによって出産費用はおおむねまかなえるはず。
ちなみに、産休中に給料が支払われない場合は、健康保険から「出産手当金」が受け取れます。1日あたり給料の日額の3分の2で、受け取れる期間は原則として、産前42日から産後56日まで。
教育にかかる費用については、少子化対策として負担を抑える仕組みが次々にできています。
幼稚園・保育所・認定こども園は3~5歳児の利用料が2019年10月から無償化されています。公立の小学校・中学校の授業料はもともと無料ですよね。高校は公立に加えて私立も(所得による制限はありますが)今年の4月から実質無償化されています。
ただし、無償なのは授業料のみ。給食費や教材費、修学旅行、部活の費用などは別にかかります。こうした学校関係のお金を節約するのは難しいので、家計の中から払っていくことになります。
大学進学費用は計画的に準備
教育費で最もお金がかかるのは大学です。特に入学する初年度は入学金と1年分の授業料に、私立大学の場合は施設整備費も納めなければならず、かなりまとまった出費となります。
文部科学省の2018年度のデータによると、初年度納付金の平均は、私立文系で約117万円、私立理系だと約154万円、国立でも約82万円となっています。
この金額をそのときになって用意するのはなかなか難しいので、できれば子どもが小さいうちから少しずつ準備していきましょう。0歳のときから毎月5000円積み立てたとすると、18歳のときには108万円になります。それに加えてボーナス時に積立額を増やすなどすれば、用意できるでしょう。
教育費は、高校卒業までの費用は日常の家計費でまかない、大学にかかるお金は計画的にためていく、というのが基本的な考え方です。
習い事や塾などにお金をかけすぎない
子どもにかかるお金は、学校関係だけではありません。
スイミングに英会話、音楽教室や昔ながらの書道にそろばん、最近はプログラミングなど、たいていは何かしら習い事をさせるでしょう。学習塾へ行くのは普通だし、通信教育などもありますね。
文部科学省のデータでは、公立の小中学校だと、学校にかかるお金よりもこうした学校以外にかかる教育費のほうが多くなっています。
親なら誰しも「子どもの可能性を広げたい」と思うでしょう。そのため、あれこれと習い事をさせたくなるし、「少しでも学力を高めたい」と思えば、学習塾などへ行かせたくなりますよね。学校外の教育費は、かけようと思えばいくらでもかけられます。でも、お金をかければかけるほど、家計への負担が重くなります。
ですから、習い事はあれもこれもと数を増やすより、子どもが本当に興味を持つものに絞るのがよいでしょう。一度始めた習い事はなかなかやめられないのですが、子どもが興味を持っていないことがわかったら、きっぱりとやめることもムダな出費を抑えることにつながります。
学校外の教育費にお金をかけると、親はそのことに安心してしまうという傾向もあります。でも、大切なのはお金をかけただけの成果が得られているかどうか。子どもがやる気のない習い事をいつまでも続けさせたり、子どもの性格や学習能力に合っていない塾に行かせたりするのはお金のムダです。学校外教育費はただお金をかけるのではなく「費用対効果」をしっかり確認する必要があります。
教育費もライフプランの中で考える
教育費、住宅購入費、老後資金は人生の三大支出といわれます。
マイホームを購入するなら、資金の準備や住宅ローンの返済をしなければならないし、老後資金もできるだけ早くから準備したいもの。「子どもにはできるだけのことをしてやりたい」という親心から、教育費は「聖域」化しがちですが、教育費もライフプランの中で考えるべきです。
習い事や塾などへの支出が多すぎる→大学進学のための積み立てができない→それまでの貯蓄を取り崩して進学費用に充てる→親の老後資金が足りなくなる
というように、教育費のかけすぎは「老後破産」にもつながりかねません。
習い事や塾は親の希望や思いつきで行かせるのではなく、家計に負担がなく、大学進学費用の積み立てもできる範囲で予算を決め、教育効果の高いものを厳選するようにしましょう。
オフィス・カノン代表。ファイナンシャルプランナー(CFP)、1級ファイナンシャルプランニング技能士。千葉大卒。法律雑誌編集部勤務、フリー編集者を経て、ファイナンシャルプランナーとして記事執筆、講演などを手掛けてきた。著書に「だれでもカンタンにできる資産運用のはじめ方」(ナツメ社)など。http://www.m-magai.net
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