「アレクサンダー大王」を座右に 戦い続ける姿に共感環境相 小泉進次郎氏

「イッソスの会戦」のモザイク画を執務室に飾る

塩野さんの作品の中で、アレクサンダーはインド近くまで版図を広げました。私は読み終えた後、「もし若くして亡くならなければ、彼はどこまで行ったのだろうか」と思いを巡らせました。もしかしたら海を渡って日本にも来ていたかもしれない、とか。勝手な想像もできるのが歴史の面白さなんじゃないですか。塩野さんの本ははじめに「これを読破するのは大変だな」と感じる時もありますけど、終わりの頃には読み終わるのがすごく寂しくなる。塩野作品をいつかは全制覇したいと思っています。

父は海外の歴史作品はあまり読みません。「おまえ、よくそういうの読んでるな。俺は日本のだけで十分だ」みたいな感じですね。確かに登場人物のカタカナの名前を覚えるのは大変な面もありますけど。

猪瀬直樹さんの『二宮金次郎はなぜ薪を背負っているのか?』を読んだのは、自民党の農林部会長になってミカン栽培が盛んな農業現場に行ったのがきっかけです。そこでお会いした年配の方に「二宮金次郎は知っていますか。小泉さん、農林部会長になったのなら二宮金次郎を勉強して下さい」といわれた言葉がすごく自分の中に残っていました。私の地元である神奈川県の小田原の偉人でもあります。

この本の副題は「人口減少社会の成長戦略」。これこそ我々がまさに考えないといけないことです。二宮金次郎は子供たちの模範になる「勤勉な勉強家で努力の人」として学校に銅像があるイメージですが、それは一面の事実でしかありません。

実は薪はファンドの資本で、山で無価値に近いものを持ってきて街で売り、その利益でお金が必要な人に貸し付けるんだと。10両を貸したら2両ずつ5年かけて返済してもらい、「これだけ返せたんだから」ということで最後にもう2両のお礼をもらってファンドを大きくしていく。人口減少で財政に苦しんでいる地域を再興していった様子が描かれています。二宮金次郎を金融の観点でとらえているのが猪瀬さんの特徴ですね。二宮金次郎は人口減少の日本で再評価されるべき偉人だと改めて思います。

小泉氏の愛読書

鹿島茂さんの『日本が生んだ偉大なる経営イノベーター 小林一三』も、二宮金次郎と共通点があります。小林一三は近衛文麿首相から頼まれて民間人として商工大臣を務めました。統制経済には真っ向から反対していましたが、「外から言ってもダメなら中から変える」と言って引き受けた。

最終的には官僚とぶつかって追い落とされますが、鉄道、住宅ローンの礎を築き、タカラヅカなどエンターテインメントも手掛けた歴史に残る開拓者です。東宝を率い、最後に最高のスピーチを残しました。

NHKでドラマ化されていて阿部サダヲさんが演じているので、多くの人に見てほしい。「がんばれば報われる社会を創らなければいけない」という情熱に打たれます。大好きな偉人です。

山本皓一さんの『素顔の田中角栄 密着!最後の1000日間』は政治家を描いた最高傑作の一つだと思います。山本さんはカメラマンだった方しか表現できない政治家の臭い、景色を表現している。ジャーナリストがここまで政治家の懐に入り、密な関係を築くのは難しい時代になりました。功罪はあるにしても、こういう表現をされる政治家はうらやましくもある。角栄さんが上半身裸で背中の汗をぬぐっている一枚は歴史的な写真だと思います。

『素顔の田中角栄 密着!最後の1000日間』に感銘を受けた

『雲は答えなかった』は是枝裕和さんの著作です。映画監督のあの是枝さんが環境庁の役人の作品を書いているとは、世の中にほとんど知られていないのではないですか。環境相になった時に記者の方から「もしお時間があれば」といただきました。水俣の問題にかかわった実在のキャリア官僚を描き、残念ながら彼は最後に自殺をされました。環境庁が1971年に設置されたのは水俣病が原点です。水俣に触れた是枝監督の作品を読んで、失われた環境をもう一度取り戻すのがいかに大変か、環境省の歴史を含め多くの方に知ってもらいたいですね。

『海辺のカフカ』は、偏見や思い込みは良くないと私の中で証明してくれた一冊です。村上春樹さんは読まず嫌いで、むしろ村上龍さんの作品をよく読んでいました。ニューヨークで留学中に日本人の知人から渡され、読んでみてそこからはまりました。現実と空想のはざまに迷い込んだような気分になります。

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