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世界遺産から外れる? モスクとなったアヤソフィア

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ナショナルジオグラフィック日本版

アヤソフィア――ここはユネスコの世界遺産であり、トルコ国内最大の観光名所であり、キリスト教帝国とイスラム教帝国のどちらもが、自らのものにしようと争った宗教的な重要拠点でもある。

トルコ政府は2020年、1500年の歴史があり1934年以降は博物館となっていたアヤソフィアをモスクに変更すると発表した。もとは正教会の大聖堂として建てられ、後にモスクとして何世紀にもわたって使用されていたこの荘厳な建造物については、ここ数十年の間、複数の宗教団体が、イスラム教の礼拝所としての復元を目指して動いていた。

モスク化の発表は多くの関係者を驚かせた。ユネスコは、トルコ政府からは何の相談もなかったと表明している。東方正教会と、数百万人の正教会信徒を抱えるギリシャには衝撃が走った。「エルドアン大統領が標榜するナショナリズムは、トルコの時間を600年分巻き戻すものです」と述べたのは、ギリシャの文科相リナ・メンドーニ氏だ。ローマ教皇フランシスコは、日曜の祈りの中で「非常に悲しい」と発言。見事なビザンチン様式のモザイクや、絵画に対する懸念を表面する人もいる。

一方で専門家は、アヤソフィアが変化にうまく対応して、今後も観光名所として機能し続けるだろうという。米ワールドモニュメント財団のジョナサン・ベル氏は「懸念は2点です。トルコ当局が今後も保存のために力を入れること、今後も一般公開を続けるのかです」と話す。「個人的には、アヤソフィアは礼拝の場として存在しつつ、世界遺産としての役割も果たしていくと考えています」

ふたつの宗教

アヤソフィアの歴史を振り返ってみよう。元々は、6世紀に東ローマ帝国(ビザンツ帝国とも呼ばれる)の首都の大聖堂として建てられたものだ。1453年にコンスタンティノープルがオスマン帝国に征服されると、それを機にモスクとなった。その後はイスラム教の礼拝所として機能。1934年にトルコ政府がこれを博物館とし、ユネスコが「イスタンブール歴史地区」を世界遺産に登録。アヤソフィアももちろん含まれている。

ビザンチン様式の建築、精巧なモザイク、キリスト教徒とイスラム教徒の両方にとって宗教的にも重要である建造物は、例年たくさんの観光客で溢れていた。2019年に、アヤソフィアを訪れた人は370万人以上。今後、世界遺産であるアヤソフィアに改造や変更が加えられるのか、加えられるとすれば、それはどんなものなのかについては、「文化遺産の専門家にもまだ分かっていない」(ナショナル ジオグラフィックのクリスティン・ロムニー記者)のが現状だ。

ところで、ある宗教団体が「1934年のアヤソフィア世俗化の決定は違法」との裁判を起こしていたが、2020年7月10日、トルコの最高行政裁判所はこの訴えを認める判決を下した。この団体の主張の根拠は「アヤソフィアは現在も、1453年にコンスタンティノープルを征服したオスマン帝国のスルタン、メフメト2世の個人的所有物であるから」というものだ。

それから数日後、米のラジオネットワーク「NPR」は、アヤソフィア内部でイスラムの礼拝が行われたと報じた。

トルコのエルドアン大統領は、アヤソフィアはこれからも宗教や国籍にかかわらず、あらゆる訪問者を受け入れると発表している。それでも、アヤソフィアの未来は不透明なままだ。ギリシャやロシアなどトルコの近隣諸国は、博物館としてのアヤソフィアは東西文化の交差点であり、キリスト教とイスラム教の共存を象徴する存在として、今回の決定を非難している。

ユネスコも「事前協議なしにアヤソフィアの地位を変更したトルコ当局による決定を深く遺憾に思う。世界遺産としての普遍的価値が保たれることを求める」との声明を発表した。世界遺産憲章においては、建物の状態を変更するには、トルコは事前にユネスコに通知をし、必要に応じて世界遺産委員会の審査を受けることが義務付けられている。

ただし、アヤソフィアが現役の礼拝施設として復活したとしても、それだけで世界遺産としての認定が取り消されるわけではないだろう。世界遺産リストに含まれる1000以上の登録地のうち、精神的・宗教的な性質を持つものは約20%にのぼり、その中にはバチカン市国やイランのイスファハンにあるジャーメ・モスクなども含まれている。

アヤソフィア(ギリシャ語で「聖なる叡智」の意)の建築を命じたのは、ビザンツ帝国皇帝ユスティニアヌス1世だ。当時この建物は、世界最大の屋内空間だった。モスクとなったとき、建物にはいくつかの変更が加えられた。

メフメト2世がオスマン帝国を統治していた1451年から1481年にかけて、イスラム教の信仰との一貫性をもたせるために、アヤソフィアの見事な芸術作品の多くは漆喰で覆い隠された。六翼の天使など、キリスト教関連の壮大なモザイク画は姿を消し、代わりに太く流麗なアラビア文字が刻まれた円盤が天井から下げられ、美しい大理石のミフラーブ(メッカの方角を示す装飾パネル)が設置された。

博物館としての役割を担うようになってからは、漆喰を丁寧に削り取って隠されたモザイク画を蘇らせるなど、大規模な改修が行われた。そうしたモザイク画の一部は、上部回廊沿いに見ることができる。そして今、この建物は再びモスクとなり、トルコ当局者は、イスラムの礼拝の時間は、中央ホールに描かれているキリスト教関連の装飾をカーテンで覆い隠すとしている。

イスタンブールの空に堂々とそびえるアヤソフィアは、スルタンアフメト地区中心部の、ブルーモスクの向かい側、トプカプ宮殿からも歩いてすぐの場所に位置している。もとの建物の建築当時、この教会のあまりの壮麗さに、人々は神の導きを受けて作られたに違いないと信じていたと言われる。

ここを訪れる人の多くは、その内部装飾のすばらしさに目を奪われるが、建物の外も一見の価値がある。アヤソフィアの4本のミナレット(尖塔)、小学校の噴水、時計室、宝物館などの要素は、このモスクらしい大胆な設計の象徴だ。オスマン帝国のスルタンたちの霊廟も、ぜひとも訪れたい。

現在もトルコで最も人気の高い観光名所であるアヤソフィアは、引き続き観光客を受け入れている。トルコ政府の最新の声明では、入場は無料で、礼拝の時間を除いてモザイク画はすべて公開されるという。建物の扉は礼拝の1時間前に閉じられ、30分後に再度開かれるということだ。

次ページでは、アヤソフィアだけではない、イスラム世界が生んだ美しいモスクの数々をご覧いただこう。その壮麗さに、思わず見入ってしまう。

(文 STARLIGHT WILLIAMS、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年8月23日付の記事を再構成]

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