足寿命延ばす ヒール履いたらしっかり脚をマッサージいつまでも歩けるための健足術(12)

日経ヘルス

2020/9/14
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA
日経ヘルス

ヒール靴は体重を支える上で大切な「距骨(きょこつ)」に悪影響を及ぼすことを、前回「ヒール靴、体重支える『距骨』不安定に 筋肉にも負担」で紹介した。今回は、足の形や歩き方が変化する50歳以降における靴選びのポイントを教わる。

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下北沢病院院長の菊池守さんは、靴選びの重要性をこう語る。「自分の足に自然にフィットする『正しい靴』選びは、足の老化防止につながります。足は体のほかの部位よりも早く消耗する可能性があります。なぜなら、足は全身の体重を支えているから。人間の足には、歩くたびに体重の2~3倍の負荷がかかっています。私たち下北沢病院では、足の耐用年数は50年ではないかと考えるほどです」

自分に合った正しい靴選びとは?

菊池さんが注目するのが、アシックススポーツ工学研究所の発表だ。それによれば、人間の足形や歩き方は、50歳を境に大きく変化するという。同研究所では3次元足形計測機や歩行姿勢測定システムなどによる膨大なデータを分析。その結果は『究極の歩き方』(講談社現代新書)にまとめられている。

「同研究所の発表によると、外反母趾で悩んでいる女性の数は男性の2倍いるようです。日本人女性の足は50歳を過ぎると、かかとが前方向へ倒れていき、前足部に力がかかりやすい状態になっていきます。さらに加齢により、足の横アーチが潰れて足の幅が広くなり、内側の縦アーチの高さも男女ともに低くなっています。これにより靴が窮屈になって親指が靴の中で圧迫されるようになるのも、親指が人さし指の方に曲がる外反母趾(ぼし)が急激に増える一因と考えられます」と菊池さんは解説する。

外反母趾の人は、小指が薬指の方に曲がる内反小趾(ないはんしょうし)も併発していることが多いようだ。

「加齢とともに足のアーチの機能が低下してしまうことで窮屈な靴、誤った靴への対応ができなくなるのも外反母趾や内反小趾が進行する原因になるのです」(菊池さん)

では、50歳以降も足を健康な状態に保つためにはどんなことに気をつかいながら靴選びをすればいいのだろうか。

(イラスト:内山弘隆)

「靴選びの前にまず大切なのは、自分のつま先のシルエットがどんな形なのか観察することです」。人のつま先の形はエジプト型、ギリシャ型、スクエア型の3つに分類される。日本人に一番多いのは、親指が一番長いエジプト型。足のどの指が長いかによって、フィットする靴の形も変わってくる。つま先はできるだけ広く、中で足の指が当たらない靴がよい。

(イラスト:内山弘隆)

「しかし、靴は足長だけで選んではいけません。男性も女性も加齢とともに足のアーチもつぶれてきて、足の幅は広がってきます。同じ長さの靴でも、その幅によってはとても窮屈な靴もあるのです。ポイントストレッチャーなどを使って自分で靴の幅を広げることもできますが、シューフィッターなどのいる靴屋に行って、自分の“今の足”をきちんと計測してもらい、足にフィットする靴を購入するのも手です」と菊池さんは助言する。

各メーカーによって、靴の木型は異なる。さまざまなメーカーの靴を試着して、「このメーカーのこのラインの靴は自分の足に合っている」ことを知っておくのも大切だ。

(イラスト:内山弘隆)

菊池さんは「このほか、かかとの骨が安定するように、かかとがしっかりしている靴を選ぶこと。そして地面からの衝撃を吸収して足裏に負担をかけないよう、足底は硬くて頑丈、でも踏み返し動作をする足指の付け根はきちんと曲がる靴を選びましょう。また足の甲を固定した方が機能的に動けますから、できれば靴は、靴ひもを結ぶタイプを選ぶようにした方がベターです」という。

もし、仕事などでどうしてもヒールを履かないといけないなら、必要なときだけ着用し、こまめに履き替えることが大切だ。

そして靴の中で前すべりが起きないよう、靴の中はつるつるした素材より、スエード生地などが敷かれていて、足裏との摩擦が起こることによって、足が前にすべるのを止めてくれるものなどがよい。指先部分に緩衝材が組み込まれているタイプや、土踏まずの部分にふくらみがあるタイプも、足をすべりにくくしてくれる。

(イラスト:内山弘隆)

「ヒールを履くのは、なるべく必要最小限の時間にした方がいいでしょう。そしてヒールを履いた日は、家に帰ってきたら必ず脚をマッサージするよう心がけてください」(菊池さん)

ヒールで押さえつけられていた足指は、じゃんけんの「パー」の形に開いて、指をもみほぐす。きちんと指をストレッチしないと、足指はどんどん硬くなってしまうからだ。

「また、ヒールを長く履いていると、アキレス腱も硬くなります。アキレス腱が硬いと、すねの骨が十分に前に出ず、足のアーチをつぶしながら歩くことになるので、足の裏の足底腱膜(そくていけんまく)にも負荷がかかります。足底腱膜炎になると足裏が痛くてフラットな靴が履けなくなりますから、そういった事態を避けるためにも、アキレス腱は伸ばすようにしてください。足底腱膜炎の予防には、ゴルフボールなどを踏んで足裏をマッサージするだけでも効果的です」と菊池さんは話す。

そしてヒールを履いているときに緊張を強いられていた、ふくらはぎの筋肉や、すねの筋肉をもみほぐしていく。

菊池さんは「疲れを次の日に持ち越さないように、こまめにケアをしていきましょう。元気な足の“足寿命”を延ばすことも、健康寿命を延ばすことにつながります」とアドバイスする。

(イラスト:内山弘隆)
菊池守さん
下北沢病院(東京都世田谷区)院長。大阪大学医学部卒業後、米ジョージタウン大学創傷治癒センターに留学し、ポダイアトリー(足病学)に出合う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授を経て、現職。近著に『100歳までスタスタ歩ける足のつくり方』(アスコム)。

(ライター:赤根千鶴子、構成:日経ヘルス 白澤淳子)

[日経ヘルス2020年2月号の記事を再構成]

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