日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/9/19

生物や農地にも影響

科学者たちは、どこから食物網へ入り込むのかを追跡しながら、淡水中や土壌中のマイクロプラスチックについても調査を続けている。

英国では、サウスウェールズ州の河川沿いの15カ所で、科学者のチームがムナジロカワガラスの糞と吐き戻しを詳しく調査し、淡水性無脊椎動物を餌とするこの鳥が1日に約200個のプラスチックを摂取していることを発見した。プラスチックが食物網の上位へ移動している証拠だ。この調査結果は20年5月、「Global Change Biology」誌に発表された。

中国農業科学院の研究者たちは、プラスチック製の覆いを使用する農法が収穫量に長期的な脅威をもたらす恐れがあることを突き止めた。この農法は、ビニールシートで畑を覆うことにより、湿度を維持し、雑草の生育を抑え、土壌の温度を上昇させるもので、収穫量を平均で25~42%増加させる効果がある。この方法は、中国全土の耕作地の約13%を占める小規模農家で広く行われている。半乾燥地帯や乾燥地帯では干ばつが悪化しているため、中国や世界各地で拡大している農法だ。

広く普及しているタイプのビニールシートは裂けやすく、時間と共に使用に耐えなくなる。「Global Change Biology」誌に発表された論文によると、収穫後にビニールシートを回収するならば、この方法は安全だと、調査チームは判断している。だが、調査対象となった中国の農家の66%は、使用済みシートは回収しないと答えている。中国の土壌には、50万トン以上のプラスチックが堆積していると、研究者たちは推定している。

プラスチック片は、土壌の構成と性質を変えてしまう。フタル酸エステルなどの添加物は、土壌汚染をもたらすことが確認されている。プラスチック片を含む土壌で育つ穀物は、収穫量、作物の高さ、根茎の重量が低下する。この調査では、プラスチック汚染によって、すでに中国の綿の収穫量が減少していると報告している。

大気中を移動するマイクロプラスチック

マイクロプラスチックがどのように世界に広がるかを解明する研究では、以前は、海に焦点が当てられていた。地球規模のちりの動きは数十年にわたって研究されてきたが、ちりが「大量のマイクロプラスチック」を運んでいることがわかったのはごく最近のことだ、とロッシュマン氏は言う。

米ユタ州立大学の科学者、ジャニス・ブラーニー氏は、風が窒素やリンなどの栄養素をどのように米国西部に拡散しているかを調べていて、プラスチックに遭遇した。「ちりと、ちりが遠く離れた生態系にどのように栄養素を運ぶかを、私は研究しています」

だが、11の国立公園と自然保護地域で採集したサンプルを顕微鏡で調べている時、彼女は、小さなプラスチックの繊維を見つけてショックを受けた。

「最初は、自分がサンプルを汚染してしまったのだと思いました」と、ブラーニー氏は言う。「それから、これは驚くことではないと気づいたのです」

米国西部の自然保護地域と国立公園に、年間1000トン以上のマイクロプラスチックが舞い落ちていると、同氏は結論づけている。「Science」誌に発表された分析では、マイクロプラスチックがさまざまな高度で大気中を移動していることが明らかにされた。大きな粒子は、多くの場合、近距離しか移動せず、雨が降ると落下する。小さく軽い繊維は、大陸を横断して長距離を移動し、地球規模のちりの流れの一部となる。そして、多くは乾燥した天候の時に地面に落ちる。

「プラスチックは、空からどこにでも落ちてきます」とブラーニー氏は話す。「私たちはこの問題に気づき始めたばかりですが、新しい問題ではないということを、より多くの人に知ってほしいと思います。この状況は改善せず、むしろ、もっと悪化するでしょう。私たちが知らないことは非常に多く、どこにでもあるプラスチックの影響を完全に理解するのは、とても難しいのです」

(文 LAURA PARKER、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年8月28日付]