中国ティー専門店「奈雪の茶」 パンも合うフルーツ味

日経クロストレンド

ティー専門店初のユニコーン企業

奈雪の茶を展開する品道餐飲管理公司は15年11月、中国広東省深圳市で創業。2年後から中国全土に店舗拡大し、18年12月にはシンガポールに海外初出店を果たす。伝統的なお茶をモダンにアレンジして表現する企業姿勢が若者世代から支持され、新店オープンのたびに話題を集めてきた。

現在、中国50都市とシンガポールに直営店約360店舗を展開。19年11月、深圳・南山区のショッピングモール「海岸城」にオープンした「奈雪夢工場」は、店舗面積1000平方メートルもの広さだ。18年には資金調達により時価総額が60億元(約1000億円)を超え、ティー専門店初のユニコーン企業に認定された。20年度内には米国への進出も予定しているという。

中国ではチーズティードリンクでブレークした「喜茶」(ヘイティー)が奈雪の茶と人気を二分している。中国内に600店舗以上展開する喜茶も日本進出の噂があり、2大巨頭がそろえば、日本にも本格的なフルーツティーブームが到来するだろう。

そんな中、奈雪の茶が海外2拠点目に選んだのが大阪だ。その理由について黄副社長は「大阪はグルメの聖地であり、道頓堀は多くの人が足を運ぶ素晴らしい立地。国際事業部のゼネラルマネジャーが視察に来たとき、大阪の友好的な気風がブランドコンセプトにマッチすると話していた」と説明する。

海外ブランドが日本に上陸する際、マーケティング戦略の観点から1号店を大阪に出店するケースがたまにある。東京に比べてマーケット規模がコンパクトなため、話題になれば、一気に広まるからだ。価格や商品に対する大阪人のシビアな目も参考になる。

道頓堀はインバウンドに人気の観光スポットだが、黄副社長は「旅行客だけをフォーカスする商売は続かない。日本で長く発展していきたいので、外国人観光客ではなく、日本人をメインターゲットにしている」と強調。奈雪の茶が入るラオックス道頓堀店も免税店から日本人向けビジネスに転換している。

国産のカスタードを使用、優しく飽きないパンに仕上げた「クリームパン」(250円)、宇治抹茶を使用した「クリームパン抹茶」(280円)、レモンを加えると青からピンクに変色するハーブを使用した「クリームパンバタフライピー」(280円)

同社ではまず道頓堀店を軌道に乗せ、20年末をめどに東京にも出店する計画だ。さらに、5年以内に日本国内で100店舗の展開を目指している。新型コロナウイルス感染拡大の状況次第では計画の見直しもあり得るが、今のところ出店には意欲的。「本国では(感染拡大により)甚大な影響を受けたが、逆に好機と捉えている。日本でも今後、店舗物件の空きが増えるため、次の店舗を探しやすくなると思う」(同)。

積極的な出店計画の根拠となっているのが、デジタル化への取り組みだ。ECでの販売拡大とデータを活用した商品戦略を進め、オンラインとオフラインの融合を加速させていく。

デリバリーサービスで売り上げ確保

コロナ禍により、中国では全店1カ月の休業を余儀なくされた「奈雪の茶」。現在はほぼ通常営業に戻っているが、感染拡大防止策の一環として、中国の大手ECサイト「天猫(Tmall)」に公式オンライン旗艦店を開設した。お茶やギフト券、グッズの他、アーティストとコラボしたグリーティングカードも期間限定で販売。ECショップには1カ月で数千万人が訪れ、「Tmall」ではスターバックス、ケンタッキーフライドチキンに続く人気のケータリングブランドとなった。

女性の手と唇のラインに配慮して開発した「奈雪カップ」。期間限定でアーティストとコラボしたパッケージデザインがかわいらしく華やか

さらに20年2月以降、配送料金を無料化。デリバリーアプリやWeChatミニプログラムでの注文に、非接触配達サービスも導入した。「中国ではデリバリーサービスがはやっている。デリバリーに特化したり、新商品を打ち出したりすることで、コロナ禍でも消費量を維持してきた。中国での成功例をいずれは日本でも取り入れていきたい」(同)。

マーケティング調査会社の富士経済(東京・中央)によると、日本のティースタンドカフェ市場は19年で前年比49%増の約249億円。タピオカドリンクブームの火付け役となった台湾の人気チェーン店を中心に店舗数が増え、日常的にティードリンクを飲むユーザーが増えているという。今後も市場拡大が期待される中、奈雪の茶のフルーツティーが日本でも若者をとらえ、けん引役になれるかどうかが注目される。

(文・写真 橋長初代)

[日経クロストレンド 2020年8月24日の記事を再構成]

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