プロ厳選ご当地グルメが自宅に　サブスクで限定品も

コロナ禍で積極的に外食や旅行がしにくい状況が続く中、毎日の食事が単調になってしまっている人が増えているのではないだろうか。そんな中、自宅にご当地グルメが定期的に届く「グルメなおうちサブスク」を利用する人が増加中だ。サブスクリプション（=定額制）で専門家が厳選したご当地グルメが定期的に届き、自宅にいながら各地を旅しているような気分が味わえる。自分で探して取り寄せる手間も省けるので、忙しい人などにも好評だ。

一般的にサブスク・グルメは、料金を払えば一定期間、特定のメニューなどが利用し放題になるものを指す。その店を毎日のように利用する常連客にとってはお得な料金設定だが、現在の外食がしづらい状況にあっては毎日のように利用するということ自体が困難だ。その点、おうちサブスクは自宅にいながら楽しめる点で利用しやすい。多くが月に1度届くスタイルだが、定期購入と違うのは毎回違う内容であること。いろいろな商品がランダムに届き、何が届くかわからないワクワク感がある。

まずは、日本酒限定品のおうちサブスクをご紹介しよう。酒の販売や卸業を行うリカー・イノベーション（東京・足立）が手掛ける「KURAND CLUB（クランド クラブ）」という日本酒のサブスク。同社の酒のオンラインストアである「KURAND（クランド）」とパートナー契約を結んだ全国各地の酒蔵が、共同でこのサブスク企画のために日本酒を特別醸造。1カ月に1回、1本（720ミリリットル）が月額2980円（税別・送料込み）で自宅に届くというものだ。日本酒は毎回違う銘柄で、このサブスクでしか味わえない限定酒となっている。

冷蔵で届いた箱には、フクロウがデザインされたラベルの日本酒「君はほどよく絶妙なフクロウ」に、茨城県の地元のおつまみ2品、酒や酒蔵の魅力を解説したニュースレターが同封されていた。ニュースレターを読んでみると、酒蔵の情報や酒造りへの思いがつづられており、生産者との距離が近く感じられた。旅行先で酒蔵を訪れているような気分になって、普段スーパーで陳列されている日本酒とは違う、特別感のある日本酒に心躍った。

今回の日本酒は純米吟醸酒を「槽搾り（ふなしぼり）」という手法でやさしく搾（しぼ）った、ふくよかな甘みとうま味が堪能できる無濾過（ろか）生原酒。同社広報担当　中西麻弥さんは「コメ、水、酵母とも地元産にこだわっている酒蔵を選んでいます。本来ならばコメの栽培から酒造りまで1年はかかりますが、酒米の買い付け時から酒を発注することで生産数を確保し、酒蔵の安定した経営にも寄与できるよう取り組んでいます」と説明する。

おつまみも同じ考えで、基本的には毎回地元の特産品。今回のおつまみは田中酒造店の甘酒でほのかな甘みをつけた「甘酒あられ」と今回の日本酒の「酒粕」の2つ。酒かすを使ったおつまみレシピもニュースレターで紹介されており、簡単に試すことができた。

「日本酒は何を選ぶか迷う」「敷居が高そう」という消費者に向け、「気軽に日本酒に出合い楽しむ機会を作る」という目的で2013年にスタートしたサービスだが、コロナ禍で新規会員が増加したという。「家飲みやリモート飲みも話題になり、酒の消費行動は変容してきました。買い物も遠出もしにくい中、限定の銘柄で特別感があるので、おうち時間に喜ばれています」と中西さん。

一方、パンフォーユー（群馬県桐生市）が今年2月からスタートした「パンスク」は、毎月1回、月額3990円（税・送料込み）で、全国でパートナーとなっているベーカリー15店舗のうちどこかから冷凍パンが届くという仕組み。1箱に6～10個のパンが個包装で入っており、食べたいときに食べたい分を解凍してトースターで加熱するだけ。自宅にいながら見知らぬ土地のパンを味わうことができる楽しさも評判だ。

同事業責任者の包（つつみ） 直也さんはもともとベーカリー巡りが好きだったそう。「日本のどこにいてもまだ知らないパンとの出合いを楽しんでもらいたい、との思いで事業をスタートしました。それが偶然にも外出自粛期間と重なり、多くの方に興味をもっていただきました」と説明する。

冷凍での販売を可能にしたのは、同社独自の冷凍技術だという。冷凍用の袋と冷凍するタイミングを工夫したことで一般的な冷凍庫でも長期保存が可能となり、パンの賞味期限が1カ月以上になった。配送に必要な資材はパンフォーユーが店に支給し、梱包はベーカリーが行う。パン製造に手間がかかり、販売にまで注力する余裕のない小さいベーカリーが全国に多いが、新たな設備投資をせずとも販売ルートが開拓できた点でベーカリー側にも大きなメリットがあったという。

実際に家族でシェアしながら食べてみた。子供には軟らかく煮た栗が入っている「ライ麦酵母の栗とくるみのカンパーニュ」（上の写真下）が人気だった。大人は「黒七味と岩塩のフォカッチャ」（上の写真上中央）のピリッとスパイシーな味が気に入った。リーフレットにある店舗情報やこだわりを読むとその地域のことを想像することもでき、より深く堪能することができた。

パンの内容は月替わりなので、二度と食べられないかもしれないというのも旅先での朝食に似た感覚。「朝のパンが楽しみになった、いつか旅行ができるようになったらぜひ訪れてみたいと思ったという声を多数いただいています」（包さん）とのことだ。

最後に紹介するのは、「新感覚のデパ地下体験」というコンセプトの「PostFoods！（ポストフーズ）」。食品の製造・販売を行うナショナルデパート（岡山市）が外出自粛期間中の今年5月にスタートさせた試みだ。

「PostFoods！」は月額1880円（税・送料込み）で絶品スイーツとメッセージカードが毎月1つ届くもの。商品の考案に千葉県の超人気ベーカリー「Zopf（ツォップ）」の店主である伊原靖友氏や、神奈川県の有名ベーカリー「Bluff Bakery（ブラフベーカリー）」の栄徳剛氏など、腕利きのパティシエ4人が参加しており、今後も増えていく予定だという。毎回、有名シェフが手掛けた限定プレミアムスイーツが食べられるのが魅力となっている。

今回届いたのは、大阪を中心に6店舗を展開する人気ベーカリー「PAINDUCE（パンデュース）」のシェフである米山雅彦氏の「ガレット・デ・ロワ」。ほぼはがきサイズで届いたので一瞬小さいように思ったが、手に取るとずっしりと重量感がある。箱にぴったりと収まるように作られていて、商品自体はそれなりの大きさがあった。

上品にバターが香るパイ生地はサクサクと軽く、濃厚なアーモンド生地がサンドされていた。普段のお菓子より格段にぜいたくな味わいなので、週末の自分へのご褒美や、家族で切り分けてゆっくりとティータイムでおうち時間を楽しむのにいいかも。コロナ禍に関係なく、普段は大阪の名店まで気軽にスイーツを買いにいけないので、遠方の名店発掘もできてうれしい。

宅配便でなくポストで受け取りができる点も便利。利用者と配送スタッフが対面せずに済み、受取時に在宅の必要がなく常温でも安心だ。デパ地下のスイーツコーナーを気軽に長時間散策することが減っても、自宅で上質なスイーツを毎月味わえるのは確かにうれしいかも。

同社代表取締役　秀島康右さんによると「苦労したのは、参加シェフの確保とポスト投かんに耐えうる商品設計です。当初、声をかけたのが飲食店のシェフで、製菓の許可を保持していない方もいたので人選に苦労しました。今後もポスト投函に対応できる、信頼のあるシェフたちと発展させていきたいです」とのこと。

自宅にいながら目新しいグルメに出合える「グルメなおうちサブスク」は、withコロナ時代のこれからも人気が継続しそうだ。旅先でいろいろなグルメを味わえるときを楽しみにしつつ、今は日本各地のおうちサブスク・グルメを自宅で味わってみてはいかがだろうか。

（フードライター　古滝直実）