氷川きよし 時には演歌界から脱線する「暴れん坊」に氷川きよしインタビュー(下)

日経エンタテインメント!

アルバムにはGReeeeN作詞作曲の『碧し』(既発曲)、いきものがかりの水野良樹が作詞作曲を手掛けた『おもひぞら』など、有名アーティストによる提供曲も収録。

(写真:小林ばく)

「水野さんには“お任せ”で書いていただきました。自分はいきものがかりさんの『ありがとう』がすごく好きで、ああいう希望にあふれた曲が来るのかな? と想像してたんですよ。そしたら、想像よりもかなり哀愁系の曲で。演歌・歌謡曲のイメージに寄せてくださったのかもしれませんね。アレンジが入ったらさらにかっこよくなって、聴けば聴くほど良い曲です。また、さすがヒットメーカーでいらっしゃるなというか、曲の構成に仕掛けとカラクリがちゃんと効いていて、すごい作家さんだなぁと、改めて感動しました。

あとプライベートでも交流のある上田正樹さんには、自分からお願いして『Never give up』という曲を書き下ろしていただきました。昔からアレサ・フランクリンが大好きでいつか本格的なR&Bを歌いたかったから、日本でR&Bの帝王っていったら正樹さんだろう、と。この曲では初めて作詞にも挑戦しています。ラップの部分は正樹さんですけど。

なぜ満を持して詞を書こうと思ったかというと、正樹さんから言われた『思いをそのまんま書いたらいいよ。ルールはないんだから』という一言に背中を押されて…ですね。歌手として20年歩んできて――20年でもまだおこがましいと思ってますけど――ようやく、大人の目で自分の幼少期を振り返れるかなと思って。『遠いあの日から探していた』で始まるんですけども、5~6歳頃の記憶をたどりながら…その頃から孤独感を持ち合わせていた自分にとって、歌は支えだったし、いろんな気持ちを紛らわすための手段だった。そんな思いをストレートに書かせてもらった感じです」

ストレスをためないこと、睡眠は大事

歌唱法についてはどうだろう。長年培ってきた演歌の発声とはまた違う歌いこなし方が必要だったのでは…?

「演歌はコブシが回らないと様にならない。それに比べるとポップスには『こうでないと』という特別な型はないように考えてるんですけど……。

ロック系の作品は『限界突破×サバイバー』の歌い方の延長線上。高いとこをシャウトして“カーン!”と声を出すのは気持ちいいですし、演歌では使えない極端に高い音域を使えるのがうれしいかな。ロックで叫ぶと心の中のものを吐き出させてもらってる感じですね、『Papillon』にしても『確信』にしても。何ていうか、気持ちよさと同時に体温が上がる感じ。

EDMの『キニシナイ』などは、自分の世代的に普通に体になじんでるサウンドなので。EDMはまだ年数浅いですけど、ハウスとかテクノはずっと好きだったから無理なく歌える。ああいうずっとループしてる音って、疲れないんですよ。

他にもジャズとか歌謡曲調とか、いろんなジャンルの曲を収録してますが、発声をジャンルによって変えるとかは特に意識してないかな。レコーディングスタッフや歌の先生からアドバイスを受けた、というようなこともほぼなく、歌いたいように歌わせてくれました」

素晴らしい歌唱力を保つために日々心掛けていることや、守っているルーティンワークといえば何があるのだろうか。

「1番には、ストレスを溜めないことですかね。歌は精神が深く関係してるんで、急に声が出なくなるっていう歌手の方は、そのへんの問題が関わっているケースが結構多いんですよ。『歌わなきゃいけない』という焦りがさらにストレスになったり。ほんとに楽に構えてないと……。自分もポリープができた時は毎日苦しかったですね。

あと、睡眠は大事です。歌う日の前は最低でも8時間は寝るようにして、食事も夜は摂らないようにしてます。消化物が残ってると胃酸が出て声が出にくくなっちゃうから。ただ、最近はコロナの影響で自粛生活でしたから、家でガッツリ食べてお酒飲んで、ちょっとだらしない生活してますけど(笑)。

そうすると翌日やっぱり声が出にくいんですよ。いっそ3日間ぐらいファスティング(断食)したほうがいいのかもしれないけど、そんなにストイックじゃないから(笑)、なるべく野菜ジュースだけにしたり、グルテンフリーの物だけ食べたり……」

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