ライブ再開も風景一変 ソロやバラードで感染防止

7月のハロー!プロジェクトの夏ツアーのスタート公演ではモーニング娘。'20のメンバーの譜久村聖(左)や生田衣梨奈(右)がバラードを熱唱した
7月のハロー!プロジェクトの夏ツアーのスタート公演ではモーニング娘。'20のメンバーの譜久村聖(左)や生田衣梨奈(右)がバラードを熱唱した

まだ収束が見えない新型コロナウイルス感染症。大人数が集まる音楽ライブ活動への影響はとりわけ大きく、2月ごろから自粛が相次いだ。しかし最近では、感染防止に工夫をこらし、ライブ再開の動きが出始めた。中でもドライブインコンサートは、これまでほとんどなかった挑戦だ。

5月25日に全都道府県で緊急事態宣言が解除された後、政府や各自治体が示したガイドラインに従って、会場の定員の50%以下に収容人数を抑えた上で、6月19日以降は1000人以下、7月10日以降は5000人以下でライブが開催できるようになった。

7月11、12日には、東京・中野サンプラザで、モーニング娘。'20などが所属するハロー!プロジェクトが約4カ月ぶりとなるライブを開催した。収容人数を会場定員約2200人の半分以下、1000人に限定。観客のマスク着用を徹底し、入場時の検温、消毒なども行なった。

公演内容も、これまでのものから大きく変更。観客が大声を出して飛沫が拡散するのを防ぐため、中島みゆきの「糸」や宇多田ヒカルの「FirstLove」、瑛人の「香水」といったJポップのバラード曲を中心に、メンバーたちがそれぞれソロでカバーする形式で行った。

政府は当初、8月1日に5000人を上限とする人数制限を撤廃する方針だった。スタジアムでのライブの準備を進めていたアーティストもいたが、7月上旬から都内を中心に感染者が3桁に膨れ上がるなど再び増加し、主催者は難しい判断を迫られた。

アイドルグループももいろクローバーZは、8月1、2日に埼玉県・メットライフドームで、各日観客を7000人に限定したライブを開催予定だった。しかし7月6日にマネジャーの川上アキラ氏が、ネット配信で中止をアナウンス。ホームページに、来場時における電車の分散乗車プランにまで言及した30ページに及ぶ「感染対策ガイドライン」を公開するなど慎重に対策を進めていたが、苦渋の決断をせざるを得なかった。

川上氏は「医療監修担当の医師からのアドバイスも参考に、最終的にはメンバーたちと話し合って決めた。悔しいが、感染が広がる可能性があるのであれば、今無理してやるべきではないという結論に至った」と明かす。

結局、政府は8月1日に予定していた人数制限撤廃を2回先送りし、9月末にすると決めた。ライブ再開の難しさを示す展開となった。

C&Kは6月、メジャーアーティスト初のドライブインコンサートを群馬県で開催した(写真・鳥居 洋介)

そんな中、スタジアムやホールと異なる新しいライブの形として注目されるのが「ドライブインコンサート」だ。野外に設置したステージの前にクルマを止め、カーステレオのFMラジオを通じて車内で演奏を聴く仕組みである。

6月13日には栃木県の岩船山中腹採石場跡で、7組のDJたちがイベントを開催。6月20、21日には2人組ユニットC&Kが、群馬県吾妻郡で来場者を県内に限定して公演した。

全国各地でこうしたドライブインコンサートは実施されており、8月21~23日には大阪万博公園内で、「Grand VIEWTY2020」が開催された。SIRUP、Chara、SKY―HIら計6組が、2組ずつ日替わりで登場した。

ただ、会場が決まるまでには転変があったという。企画したスタイリズムの森中崇之氏は、「関東近郊で開催する予定だったが、感染者が増えたことで候補地が全て使えなくなった。最終的に、8月からドライブインシアター会場になることが決まっていた万博公園になった」と語る。

ドライブインコンサートには、見やすさを考慮して、車高によって場所を適正配置するなど普通のライブとは違う苦労もあるようだ。

今後のライブエンタテインメントにはウイズコロナを踏まえた「新しいライブスタイル」が求められ続けそうだ。先のももクロが直前で公演を中止したように、臨機応変な対応も必要になる。

(日経エンタテインメント!9月号より再構成 文・中桐 基善)

[2020年8月29日付日本経済新聞夕刊]

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