働かないロボット完売 物言わぬ「家族の一員」グルーブX社長 林要氏(上)

「ナウシカのメーヴェ」に憧れた

孤独と不安をやわらげてくれるという意味で、ラボットは犬や猫と通じる部分があるが、姿形は全くの別物だ。林氏はラボットを特定の動物に似せようとするのではなく、安らぎを与える存在としてふさわしい特徴をゼロから研究して具現化した。

ラボットは家事を手伝わず、人の言葉も話さない

「アニマル・オア・ラボット(動物か、ラボットか)?」。同社のパンフレットに記されているその問いかけは、ロボットとの共同生活が私たちにとってもはや空想ではなくなったことを示唆している。

林氏はもともとエンジニアだが、一貫して技術の先に「夢」を見ている。その夢とは、技術畑の人材が抱きがちな「いかに便利にするか、効率化するか」といった類いのものではない。「好奇心を刺激したい」「感動を与えたい」――。林氏の口から飛び出すのは、もっと根源的で、シンプルな言葉だ。ラボットは、そんな林氏の創造力からこそ生まれたといえるだろう。

林氏自身、「エンジニアとしては少し変わったタイプだったかもしれない」と語る。技術そのものにこだわりを持つというよりも、夢や願望を実現させるために技術を使いたいという思いが強かったからだ。

幼少期にはすでに、その芽生えがあった。宮崎駿監督のアニメーション映画が大好きだったという林氏。『風の谷のナウシカ』に登場する架空の飛行機「メーヴェ」に憧れ、「乗ってみたい」と、小型模型の自作を試みた。

「まさに、これまでにないものを作ろうというわけですから、最初は何から取りかかったらいいか分からなくて、悶々(もんもん)としていました。そんなとき、親戚からプレゼントされた模型飛行機の組み立てキットがあることを思い出した。与えられた手順書通りに作業をすることが本当に嫌いな子どもだったので、せっかくもらったのに、放置してあったんです。でも、メーヴェを生み出すためにその模型で実験をすればいいと気付いて、モチベーションがみるみるわいてきましたね」

「実験」を始めると、「調べること」や「やるべきこと」が次々に生まれてくる感覚に夢中になった。模型飛行機を、ただ、メーヴェと同じような形に改造しても当然飛ばない。物理の本などをむさぼるように調べ、試作を重ねた。ところが、一瞬は風に乗ったように見えても、今度は急にクルクルと回りながら落下し始める。それなら「なぜ回りながら落ちるのか」をまた調べる――。その繰り返しだった。

「今、振り返れば、おそらくこのときに初めて、ゼロからイチを生み出すという大きな命題に対する向き合い方を学びました。頭の中だけであれこれ考えていても、なかなか身動きがとれない。でも、大きな問題を、攻略できる小さな課題の集積として捉えることができれば、一歩一歩でも前に進んでいける。結局はメーヴェを生み出すには至らなかったわけですが、私にとっては大きな経験でした」

注目記事
次のページ
トヨタでスーパーカー開発に情熱を燃やす
今こそ始める学び特集