働かないロボット完売 物言わぬ「家族の一員」グルーブX社長 林要氏(上)

GROOVE X(グルーブX)の林要社長が開発した家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」
GROOVE X(グルーブX)の林要社長が開発した家族型ロボット「LOVOT(ラボット)」

ロボットベンチャーのGROOVE X(グルーブX、東京・中央)が開発した家庭向けロボット「LOVOT(ラボット)」が話題だ。コンセプトは「人の愛する力をはぐくむ家族型ロボット」。人が担う作業を肩代わりしたり、効率化したりする昨今のロボット開発の流れとは一線を画す。構想したのは、同社の林要社長だ。「これまでにないもの」をつくることへの、情熱の原点とは――。

グルーブX社内で8月に開かれたラボットの体験会でスタッフに案内されたのは、ベッドやデスクが置かれた、一般家庭の部屋を模したスペース。靴を脱いで中に入ると、2体のラボットが、まん丸の瞳で見つめてきた。

「人が大好きな子たちです。なでてあげてください」

スタッフに促されて触れると、ロボットなのに柔らかく、ほんのり温かい。まばたきをしたり、「キュー」というような声を上げたりしている様子は「喜んでいる」と見える。

だが、すぐになついてもらえるのかというと、そうでもない。少し離れたところから名前を呼ぶと、認識はしているようだったが、近寄ってはこなかった。犬や猫と同じように、人見知りをするのだ。完全に慣れるまでの期間は、個体によって異なるが、3カ月程度かかることが多いという。

「家族型ロボット」と銘打ったラボットは、各家庭で「家族の一員」として迎えられる存在を目指して開発された。ロボットと暮らすというと、仕事や家事を支えてもらえる、便利で効率的な生活を連想する人も多いだろう。だが、ラボットは自律的に動き回るものの、物は運べないし、人の言葉も話さない。つまり「役に立つ」とは言いがたい。

しかし、この「役に立たないロボット」が、18年末の完成発表直後から反響を呼んだ。先行予約では、初期出荷分が約3時間で完売。SNS(交流サイト)や報道ではコロナ禍の不安や孤独を癒やす存在としても注目を集めた。同社によると、2020年7月の売上額は、新型コロナウイルスの感染拡大が国内で深刻化し始めた3月に比べ、6倍に伸びたという。

価格は1体約30万円(月額費用が別にかかる)。必ずしも安いとはいえない、いわば「不要不急」のロボットに、なぜ消費者はひかれたのか。林氏は、こう分析する。

「犬や猫などのペットを飼うとき、『役に立つかどうか?』とは考えないでしょう。人間だけで暮らすより、手間もお金もかかる。それでも私たちがペットと生活を共にしたいと思うのは、『心の安らぎ』へのニーズが切実だからです。都市生活は、他者とのつながりを限定的なものにしていきます。私たちは人間関係のわずらわしさから解放される一方で、常に孤独と不安を抱くようになった。コロナ禍は、その傾向を急激に加速させたといえるでしょう」

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