頼んだことしかしない夫に落胆
女優、美村里江さん
夫は現役時代、「若い連中は説明しないと自分から動かない」とこぼしていました。退職後は家事を分担していますが、頼んだことしかしてくれません。掃除機のゴミフィルターの清浄など付随することには気が回りません。結局はやる気の問題でしょうか。(大阪府・50代・女性)
◇ ◇ ◇
素敵(すてき)なご夫妻と感じました。立派に働いてきた旦那様に、しっかりとした家事で家を守ってきた相談者さん。旦那様が会社の愚痴をこぼすのは、相談者さんが受け止め上手で、かつ分かってくれるという信頼感があるからですね。良好な関係が伝わって参ります。
さて、少し前「名もなき家事」のことが話題になりましたね。分かりやすい家事以外に、相談者さんが挙げられている掃除機のゴミフィルターの掃除など、メインミッションに細かく付随する瑣末(さまつ)な家事があることです。
旦那様も現役時代、こうした名もなき仕事をこなしてきたのでしょう。「そんなことやらなくていいのに」と周囲に言われる先に一歩進むと、道が開ける。そんな経験がある、誇り高きビジネスマンだったのかなと感じます。
「言ったことしかやってくれない」のは困りますが、逆に考えれば「言えばやってくれる」わけです。部下でいえば、器用ではないけれど素直なタイプ。伸びしろの多い新入社員に、一から仕事を教えていく。そんな気持ちが求められそうです。
手始めに「研修期間」を設けてみてはいかがですか?
毎日教えるのは骨が折れますから、数日間集中でイベント化するのです。「掃除機のこのフィルターが詰まると、吸引力が落ちて消費電力も増えてしまうの。目安は◎週間。吸いが悪いと思ったら交換してね」など、細かな点まで詳しく説明をする。
家事の一つずつには、結構しっかりした理由があります。この順番でやらないとほこりが舞うから。普通洗いだと縮んでしまうから。木製の食器を念入りに拭うのは水気でカビやすいから……。
道理がわかれば、それを守るのは男性の方が得意かもしれません。アドリブ的な家事は、おおむね女性の方が得意かなと思います。しかし、性別だけでない個人の得意・不得意はありますから、上司として、部下の特徴を見極めて伸ばしてあげましょう。
私は育児未経験ですが、大人を育てるのも悩ましいものですよね。新しい職場で、やったことのない仕事に一生懸命の新人。まずは言われたことをちゃんとやるのが必須ですから、旦那様は有望株。家事研修、頑張ってください。
[NIKKEIプラス1 2020年8月29日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。