綾野剛 みんなが幸せになれる作品ってどんなのだろう綾野剛インタビュー(下)

日経エンタテインメント!

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ドラマ『MIU404』で星野源とダブル主演している綾野剛。前回インタビュー「『MIU404』主演の綾野剛 『少年マンガの成分で役作り』」に引き続き、俳優としての心構えや過去・現在・未来の自分について語ってくれた。

1982年1月26日生まれ、岐阜県出身。03年に俳優デビュー。近年の作品は、連ドラ『コウノドリ』(15年、17年)、映画『楽園』(19年)など。主演映画『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』が11月に公開。21年に主演映画『ヤクザと家族 The Family』の公開を控える(写真:橋本勝美)

リモート取材で、移動中の車中から質問に答えることについて、「これもある意味、ニュースタンダード。時間はあるから何でも聞いてください」と言ってくれた。では今、新作が出るたびに注目される、塚原あゆ子監督の演出、野木亜紀子脚本についてはどう感じているか。

「塚原監督は、頭の回転がすごく速い方です。現場でもみんな愛情から、『監督はせっかちだから』って言ってますけど、僕、とっても相性がいいんです。『まずはやってみようよ』っていう感覚が常にあって。台本ありきだけど、活字上で僕たちが『うん』やら『すん』やら言ったところで、たかが知れてますし、何も始まらない。

僕たちは作品に出演している以上、歓声も罵声もどっちも受け止めながら向き合っていかなきゃいけないので、演技プランを固めていかないと恐いって気持ちも分かるんです。でも、ドラマってどこまでも総合芸術で、カメラワークとか全部含めて成立しているもの。塚原さんはそういうことを、頭の中で全部計算してる。しかも台本上ではなく、現場で芝居を見ながら。

だから僕は、セリフだけ覚えて現場に行ってます。自宅で『は!』『う!』とか言ってたって、限界ありますし、衣装着ないと気分だって上がらない。むしろ、セリフさえきっちり頭に入っていて、気持ちも何通りも理解できていれば、現場で臨機応変に変容できる。しなやかな竹のようにいたいんです。

野木さんの作品は、野木さんのデビュー作の『さよならロビンソンクルーソー』(10年)と、『空飛ぶ広報室』(13年)に続いて、3本目です。自分の血を通わせた本を書く人はたくさんいますが、自分の血を流して書いてる人にはなかなか出会えません。野木さんの本を読むと、毎回身を削って血を流しながら書いてる、そう思う瞬間がいくつもあって。本にも自身にも容赦がない」

評価された作品は最大の敵になる

「とても勇ましい脚本家です。宮本武蔵みたいだなって。二刀流で無敵と言われながら、圧倒的孤独と戦っている。今、『野木さんが書いたら面白い』ってみんなに思われて、その孤独と戦い続けている。僕はそんな野木さんに寄り添いたい。少しでも野木さんの太陽になりたい。

『空飛ぶ広報室』のときは、そこまで考えられなかったです。当時はギラギラして、ただ尖っていた。その頃は、鞘も持たずに抜いたままの刀を、そのまま引きずって歩いていたんですよ。障害物や邪魔が入れば、壊れるまで、道が開くまでその刀でぶった切って。刃こぼれしようが、折れようが構わなかったんです。

今は、常にいい状態を保つために精魂込めて刀を砥いで、鞘に納めてる。ここぞというときに全力で抜けるように。なんかそんな感覚が自分にあるし、野木さんにも感じること。『私はそんなことない』ってたぶん言うと思いますが。覚えているのが『空飛ぶ広報室』のとき、いきなりバイクで現場に来て、ヘルメット抱えて豪剣の武士のように、現場のど真ん中を普通に歩いてきたんですよ。そんな脚本家いないですよね(笑)。

塚原さん、野木さん、そしてプロデューサーの新井順子さん、この3人がやっぱり『アンナチュラル』なんですよね、どこまでも。この3人が作るものは、『MIU404』もそうですし、この後作られる作品にとっても、最大の敵になる。やった作品って、全然味方になってくれないんですよ。しかも、評価されたらなおさら。新井さんも、もしかしたら『アンナチュラル』って言われることが、プレッシャーを通り越して、コンプレックスの域までいってるかもしれない。

塚原さんも、『アンナチュラル』をなぞるつもりはないでしょう。だから『グランメゾン東京』(19年)では、圧倒的様式美のなかで、王道のカット割りで、木村拓哉さんや他のキャストの方々を、1番魅力的な目線で捉えて、視聴者を魅了しました。今回もそれができるのに捨ててしまって、また新しいスタイルを築いてる。次から次にステップアップし続けているんです」

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