そのスポイル、どのスポイル? カタカナ語は難しい立川談笑

飛行機の主翼の上面に立ち上がって揚力を抑える「スポイラー」には「妨害する人」「甘やかす人」の意味も(写真はイメージ=PIXTA)
飛行機の主翼の上面に立ち上がって揚力を抑える「スポイラー」には「妨害する人」「甘やかす人」の意味も(写真はイメージ=PIXTA)

このごろときたら、シナジーだのレガシーだのサステイナブルだの、ぞくぞくと登場し横行するカタカナ語たち。昭和世代のおじさんは、ついていくのがやっとです。日本語でやらかしてもらえないもんかい? と愚痴のひとつも言いたくなります。

今回はそんな中から「スポイル」に注目します。私にとっては、正確な意味や使い方がいまひとつ分からない言葉のひとつです。なのに、近ごろ妙に目につく言葉だなあと。

おっとっと、勘違いなさらぬよう! これは「スポイル」の正しい使い方講座ではありませんよ。落語家なりの言語感覚をもって、ウェブその他に散らばっている使用例をあれこれとながめた結果の、言ってみれば感想文のようなものです。「スポイル」をこの先使うことはないだろうけど、せめて理解はしたいじゃないか。

ややこしい話になるので、先回りして結論めいたことを明かしておきます。

なんと! 人によってずいぶん違う意味で使っているようなのです。そもそも、使われる場ごとに特徴的な意味合いを持つ「スポイル」が数種類ある。だから、単純な日本語に置き換えることがむずかしい。これは言葉を理解する上で大きなハードルです。

その上にファッション化というか、「何かかっこいいからちょっと使っとくか」みたいな、わりと自由な人たちがアレンジして使う。このあたりが、いくつもの顔を持つ「スポイル」という言葉のストライクゾーンを、さらにあやふやにしているようでもあります。まあ、そのつもりでゆるりとご覧くださいね。

勇猛な兵士が敗れてしょんぼり

カタカナ語として使われているのは主に、名詞としての「スポイル」、動詞として「スポイルする」、「スポイルされる」。また、スポイルされたの「スポイルド」、スポイルする人や物を指す「スポイラー」があります。

まずは元になった英語「spoil」の意味から見ていきましょう。Weblio英和辞典によると、他動詞としては「〈…を〉役に立たなくする、台なしにする」とか「〈食物を〉腐らせる」あるいは「〈人を〉過度に甘やかす」「〈ホテルなどが〉〈客に〉大サービスする」なんてのがあります。名詞では「ぶんどり品」「略奪品」「戦利品」。

ほほー、なかなかにネガティブな言葉が並んでいます。「駄目にする」が中心的のようでいて、一方で「戦利品」などポジティブとも取れそうな使い方もあるのが興味深い。

もともとは「動物の皮をはぐ」「略奪する」を意味するラテン語から来ている、ということです。狩猟民族の言葉だから、我々農耕民族の感性からはしっくりこない。実はそんな背景をもつ言葉なのかもしれません。ちょっと用心しつつ先に進むことにします。

語訳から想像力をふくらませるに、この言葉の原点には「鎧兜(よろいかぶと)で重武装した勇猛な兵士が戦いに敗れると一転すっかり丸裸にされちゃってしょんぼり……」と、そんな風景が浮かんできます。抽象的に言い換えて、「本来は活力に満ちたものに、誰かが手を加えることで劣化させる」ともなりそう。ひとまずはこれを「スポイル」のイメージとして一時保存しておきます。

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