今求められる経営参謀 「正しい問い」で社長を動かす『プロフェッショナル経営参謀』

VUCAの時代に求められる人材

なぜ今、経営参謀なのでしょうか。新しい技術革新が世の中に大きく影響を与える第4次産業革命が背景にあります。キーワードは「乱世」です。先の読めない「VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」の時代が続く中で、企業の適切な意思決定に貢献できる人材が必要なのです。

これからも先の見通せない不確実な経営環境が続くと思われる今の時代において、経営参謀の役割はますます重要度を増している。
歴史を振り返っても参謀は平時より乱世において重用されてきた。三国志においても、日本の戦国時代においても、参謀は三顧の礼で迎えられるほど重要な存在だった。徳川幕府の時代も平時に見えて、実はある時期から乱世の兆しが見え始めている。そのときトップに対して、「今、意思決定すべきことは何か」「今、意思決定しなかったら手遅れになることは何か」といった本質的な問いを突きつけ、進言できる参謀こそが重要な役割を果たしてきた。上の言うことをうまくまとめて、下の人たちを丸め込むことが参謀の役割ではなかったはずだ。
(第1章 経営参謀の仕事とは何か? 24~25ページ)

ところが「現代の日本企業においては、経営参謀の役割が機能していないケースがほとんどだ」と著者は指摘します。本来は、難しい局面や大きなチャンスを目にしたときに、組織の中で良い議論や意思決定がなされて生まれ変わっていくことが望ましい。しかしながら参謀不在のゆえに、このことを達成できない企業が多いのです。

過去に頼った答えを出さない

優秀な参謀が果たす役割として最も重要なこと。それは「本質的な問いを経営層に突きつけて、はっとさせる気づきを与えること」です。

何度か繰り返してきたが、コンテンツにしてもファシリテーションにしても、経営層の発言や揃えた材料をただきれいに整理するだけが参謀に求められるスキルではない。
経営層に新たな視点を突きつけ、頭を刺激し、はっとさせる。それが参謀に必要な能力である。
難しい経営課題に立ち向かうとき、今までの経験をベースに議論するだけでは、あるべき答えにたどり着かない。過去に頼って答えを出したがる経営層に待ったをかけて、その危うさや誤った議論へ陥りかけていたことを気づかせるから、経営層ははっとするのである。
ドキュメンテーションであれば、経営層が読んだときに「これは違うよ」「それはおかしいのでは」という文句や反論を言いたくなるものを仕込んでおく。その引っかかりを手掛かりに議論を深めれば、本当に重要な論点が見えてくる。
(第6章 参謀としてのセンスに必要な能力 231~232ページ)

本来やるべきことができていない悪い例が、第2章の「センスのない参謀のケース」にまとめられています。典型的に「コケる」のが次の10パターン。著者の豊富なコンサルティング経験から得た具体的な「症例」が満載です。自分の会社の経営層と比べてみると、腹落ちする部分が多いかもしれません。

(1)トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる
(2)トップのいきなりの豹変についていけず混乱する
(3)トップの言うことだけに乗っかり、立場の弱い少数意見を無視
(4)「いいね、その方向で進めてくれ」を真に受ける
(5)最初に立てた予定調和のシナリオで押し切ろうとする
(6)答えの出せない問いを設定したまま堂々巡りをする
(7)自分が見えている世界だけで物事を判断する
(8)バカと思われたくないので、相手に聞き返さない
(9)自分が抱いた違和感を封印してしまう
(10)自分のチームメンバーに精鋭ばかりを集めたつもりだったが……
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