女性校長を増やせ 残業減らし、管理職試験の改革も

まず着手したのは事務作業の効率化だ。17年度にクラウドを導入し、学習記録などを紙に記入する手間をなくした。授業で使うプリントも前年分のデータを加工すれば済むようにした。

部活動も週5日に制限。地域のクラブチームと部活は異なるため「時間内にできることをすればいい」(田原氏)。今後は少子化が進む学校同士の部活の統合や外部コーチの活用も検討し、教員の負担を減らす。

教員や管理職1人あたりの残業時間は19年度に月平均33時間と、2年前に比べ16.4時間減った。生徒のためにという長時間労働を容認するのではなく「仕事の優先順位を付けることが大切」(同)と話す。

管理職試験の改革を進める自治体もある。東京都教育委員会は17年度に46歳以上のベテラン教員が受験資格を持つ主幹教諭に昇格していなくとも、管理職試験を受けられるようにした。該当年に子育てなどで昇格試験を受けられなかった事情に配慮。18年度には育児で休職中の教員も選考を受けられる制度も整えた。

併せて管理職の負担減にも取り組む。17年度に副校長の補佐人材を配置する制度を設けた。申請があった公立小中学校に校長経験者などを紹介し、費用は都が負担する。20年度は3割が試験導入し、小学校で週約8時間、中学校で約4時間分の残業を削減した。

教育現場も多様性が求められている。広島県教育委員会の平川理恵教育長は「外国人やLGBT(性的少数者)など生徒が多様化する中、指導者も変わる必要がある」と指摘する。リクルート出身で、民間人の登用制度を利用し横浜市立中学の校長に就いた「異端」だ。自身も当時小学1年生の娘を育て、「関心がある」と未経験の教育現場に足を踏み入れた経験を持つ。

平川氏自身も校長時代は業務効率に取り組んだ。「子供のどんな資質を伸ばしたいのか明確にすればやるべき仕事が見えてくる」。地域の祭りの焼きそば提供など「子供の成長に直接つながるとは言いがたい」業務はやめた。定例だった2年生の遠足も「教員の繁忙期と重なる」と廃止した。

反対に生徒のためになることは積極的に取り入れた。例えば高校入試の面接対策は地域の人事経験者に協力を得て生徒が練習できるようにした。保護者と連携を深めるため、月1回「茶話会」も開いた。カウンセラーを招くなど子育ての悩みを打ち明ける場にした。参加するのは母親が多く「母親同士分かり合える」。

大阪市立今里小学校の山口祐子校長は「家事も仕事も完璧にこなそうと思わないことも大切」と話す。教頭時代は残業時間が月110時間を超えることもあった。「家がぐちゃぐちゃでも、決して自分を責めないようにしていた」

国立女性教育会館の飯島研究員は「教員の働き方が子供たちの性別の役割分担意識に影響を与える可能性がある」と話す。19年に約150人の小中学生に「なぜ女性校長が少ないと思うか」と聞いたところ「だんしのほうがえらいから」「男の先生の方がしっかりしているから」などの回答が目立った。子供たちの眼前で女性リーダーが活躍する姿を見せることは、社会全体の意識改革を進める早道になる可能性がある。

慣習見直しの契機

新型コロナウイルスの影響で、教育現場の負担は増えている。授業や行事の変則的な対応に加え、教員は消毒など本来の業務でない作業にも追われているという。ただ、コロナはIT(情報技術)を活用した働き方改革のきっかけにもなる。既に各校でオンライン授業に向けたインフラ整備や遠隔会議が広がっている。これを機に家庭と両立しやすい職場を整備できるだろう。

当然、学校にはオンライン授業で得られない学びがある。ITを使えば何ができて、反対に何ができないのか。本当に子供たちのためになる学校とは何か。今までただ慣習的にこなしてきた業務を見直す局面にあるのかもしれない。

(渡辺夏奈)

[日本経済新聞朝刊2020年8月31日付]

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