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日本酒を世界酒に パリで醸す日本の若手集団 WAKAZE

世界で急増!日本酒LOVE(24)

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NIKKEI STYLE

近年海外でSAKE(日本酒)を醸す事例が増えている。"日本酒を世界酒に"というビジョンを掲げ、フランス国内でSAKEを醸造するベンチャー企業、WAKAZE(わかぜ、山形・鶴岡市)もその一つ。これまでにない日本酒造りを国内でまずは手掛け、その後、舞台を世界へと広げつつある。SAKEの世界に一石を投じるWAKAZEは現在社員14人、平均年齢30歳というパワーあふれる若手集団だ。

米どころ・山形で2016年に旗揚げした同社は、まず地元の酒蔵などを回り、新しいコンセプトでの日本酒造りを依頼した。新たなコンセプトとして打診したのは、洋食に合う日本酒として、ワイン樽(だる)熟成の「ORBIA(オルビア)」と、ボタニカルSAKE「FONIA(フォニア)」といった斬新な日本酒。2017年と翌年に相次いでリリースすると、さっそく話題を呼んだ。

「追求したのは洋食のボリューム感のある味付けに合う"ボディーの強さ"と、ワイングラスで楽しめる"香りの芳醇(ほうじゅん)さ"です。醸してすぐより、熟成させた方が、味がまろやかになり整うので、ワインの熟成に使われたオーク樽で酒を熟成させています。ワイン好きな外国人にもなじみのある要素(風味など)がプラスできるのでは、と考えたからです」と同社取締役CTOの今井翔也氏は説明する。WAKAZEではいつもテーブル(料理と酒)から逆算してイメージした酒を醸すのをモットーにしている。

ちなみに今井氏は群馬県の酒蔵の三男。WAKAZEの代表取締役CEO稲川琢磨氏の「世界のアルコールの歴史の中で最も大きな"クラフトSAKE革命"を起こそう」という思いに賛同し、一緒に起業した。今井氏は2015年から新政酒造(秋田)や枡田酒造店(富山)、阿部酒造(新潟)、聖酒造(群馬)などで蔵人として約3年間修業。その後、WAKAZEで杜氏として活躍することに。

ワイン樽熟成酒の「ORBIA LUNA 月」(白ワイン樽熟成、貴醸酒仕込み)はIWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)2019の「SAKE部門 普通酒の部門」で銀賞を受賞。「ORBIA GAIA 地球」(赤ワイン樽熟成、生酛変則三段濃醇仕込み)はKura Master2019「純米酒部門」で金賞を受賞。一方、国内でも「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2019」の「プレミアム純米部門」でいずれも金賞を受賞している。

一方、世界初となるボタニカルSAKEは、日本酒の発酵途中に、コメとともにユズやショウガ、サンショウといった国産のボタニカル素材を投入し、醸した。従来の日本酒にはない香りがあり、もろみを搾る際は自動圧縮機が使えない。専用の袋に入れて搾る"槽(ふね)搾り"にするため、手間がかかる分、繊細な香味まで表現できる。

かんきつやスパイスなどによって広がる香りに、コメ由来の酸味やうま味が合わさった独特のおいしさは、「まるでモノクロの日本酒が色彩を手にしたような感じ」(今井氏)で、全く新しい世界観を演出する。醸した後に素材を添加するリキュールとも違う製法で、日本酒の歴史に全く新しいジャンルを生み出すことに成功した。欧州最大の日本酒イベント「サロン デュ サケ」でも「日本酒では経験できない豊かさ、多様性が感じられる」と好評を博した。

今井氏は「酵母にコメ以外を食べさせる(発酵させる)のは未知の世界。まさに酒のバイオ・トランスフォーメーション。醸造家としてドキドキ、ワクワクしながら商品化した」と話す。例えばクラフトジンにはフレーバーを楽しめるものがあるし、世界のクラフトビールにはその土地ならではのローカル素材を加えたものが存在する。アルコールの味わいが多様化する中、「日本酒においても味の表現の多様性は重要」と同社は考えている。

ワイン樽熟成酒やボタニカルSAKEは、2018年にオープンした同社初の醸造所「WAKAZE三軒茶屋醸造所」(東京・世田谷)に併設されたバル「Whim(ウィム)SAKE&TAPAS」で味わったり購入したりできる。海外6カ国にも輸出されており、2019年にフランスにオープンした同社のパリ醸造所「KURA GRAND PARIS(クラ グラン パリ)」でも製造されている。

2019年3月、WAKAZEは100%子会社の「WAKAZE FRANCE SARL」をフランスに設立した。様々な投資家から計1億9000万円もの資金を調達し、パリ市内の450平方メートルもの敷地に醸造所「KURA GRAND PARIS」を建設。サーマルタンクが12基鎮座する巨大施設で、SAKEの醸造所としては欧州最大級の規模を誇る。

醸造初年度となる今年は、ワイン樽熟成酒(現地名称:La nuit porte conseil<ラ ニュイ ポルト コンセイユ=明日は明日の風が吹く>)と、ボタニカルSAKE(現地名称:Qui rit gurit<キ リ ゲリ=笑う門には福来る>)のほかに、フランス・テロワールにこだわった「C'est la vie<セラヴィ=これが人生>」をリリース。同商品は日本でも数量限定で輸入販売されたが、その斬新な味わいやスペックは日本酒ファンの間でも話題をさらった。これらは現在、フランスを始め欧州17カ国で販売されている。

「C'est la vie」の原材料はすべてフランス産だ。パリ郊外の硬水とフランス唯一の稲作地帯・南仏カマルグ産のジャポニカ米、それにフランス由来のBio規格ワイン酵母を用いて醸している。

日本では軟水が使われることが多いが、それとは比にならないくらいミネラルが豊富な現地の硬水を使うと、「SAKEの発酵が激しくなる」と今井氏。一方で、米は酒米ではなく食用米で、現地に精米機がないため、食用と同じ95%精米のものを使っている。発酵過程でコメが溶けにくい(糖化しにくい)ため、こちらもSAKEの発酵を激しく促進するため、「発酵のコントロールが難しい」(今井氏)。あえて日本とは異なるタイプの原材料や醸造法を編み出しながら、毎月、手法を少しずつ変えながら、より高度な発酵技術を追求している。

「SAKE(日本酒)はもともと生物多様性の上に存在するもの。これまで誰もやらなかったことに挑戦するからこそ価値があり、我々ベンチャーの役目でもあると考えています。硬水での醸造ノウハウは日本にはほとんどなく、世界の硬水地域でSAKE造りをしている同業仲間にも有用な情報になるはず」と今井氏は目を輝かす。

初年度に使用したのは12基あるタンクのうち3基のみ。フランスでの酒造りは緒に就いたばかりだ。フランス国内では飲食店などへの販売をメインに考えていたが、新型コロナウイルスの影響で、目下、家飲みニーズが増え、B to C 向けの販売に注力している。ワイン樽熟成酒とボタニカルSAKEと「C'est la vie」、これら3種セットも販売され人気という。

日本から輸出される日本酒に比べ、現地で醸造されたSAKEは関税などがかからない。一般消費者にとってはリーズナブルに味わえるメリットがある。販売価格は1本18ユーロ(約2200円)。フランス在住の日本人の間でも「割安に楽しめる」「日本で製造された酒にはないユニークなおいしさ」と好評だ。

パリ醸造所に今後、冷却機などが完備されれば、現地で生酒(加熱処理しない酒)の販売なども検討していくという。今秋にはフランス人の蔵人も仲間入りする予定という。

WAKAZEという社名には、「世界の食卓に和の風を吹かせる(和風)」という意味と、「若勢(=酒蔵の若手、つまり若い力で日本酒(SAKE)業界を盛り上げる)」という2つの意味を込める。WAKAZEの若手醸造集団は今後、さらに製造量を増やし、欧州全土にSAKE(日本酒)文化を花開かせ、"欧州で一番飲まれるSAKE"を目指す。

(国際きき酒師&サケ・エキスパート 滝口智子)

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