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「オムニポロス・トウキョウ」「ヒューマン ネイチャー」「ストックホルム ロースト」の3店が入るのは築70年で、一昨年閉店した老舗うなぎ店「松よし」の建物

いち早くオープンした複合商業施設の「K5」は東京証券取引所の西隣に位置しており、建物は渋沢栄一氏が創設した旧第一国立銀行の業務を継承した旧第一銀行の別館として1923年に竣工した歴史的建造物だ。駆体に耐震工事を施し、重厚な外観を生かしながら内部をリノベーションした。

ホテルのほか、一階にはカフェやレストラン、地下にはクラフトビールメーカーのブルックリン・ブルワリー社が世界で初めて出店するフラッグシップ店「B」がある。店内は約20メートルという長いカウンターテーブルが圧倒的な存在感を示し、一角にはDJブースも用意されている。ブルックリンと兜町に共通するのはまさに「町の再生(リボーン)」だ。

「ブルックリンラガー」や「ブルックリンディフェンダーIPA」など「ブルックリン・ブルワリー」ブランドの基幹商品のほか同店でしか飲めない直輸入ビールやオリジナルビアカクテルなど多種多様なビールがそろう。食事は馬喰町駅近くの「北出食堂」が監修したタコスや、フライドポテトを提供する。

「松よし」の外観はそのままに、中に入ると真っ青でポップな店内に驚く

8月にオープンした3店が入居するのは2018年にのれんを下ろしたうなぎ料理店「松よし」の建物だ。戦後、東京証券取引所の再開とほぼ時を同じくして開業し、金融の歴史を見続けてきた。株価が「うなぎのぼり」の験担ぎから証券関係者でにぎわった店は、ビールやワイン、コーヒーが楽しめる店に生まれ変わった。築70年の建物の外観や梁(はり)はほぼそのままに、内装を大胆に改装している。

「オムニポロ」は2010年にブルワーとデザイナーの2人がスウェーデン・ストックホルムに共同設立した。ビールがビール以上の存在になることを目指し「ファッション・デザイン・スタイルを統合し、そのすべての経験を楽しんで欲しい」という新しい解釈でクラフトビールを提案する。兜町の「オムニポロス・トウキョウ」は「オムニポロ」によるアジア初進出の店であり、10種類程度のビールを提供する。

「松よし」が入っていた建物の内部には、ポップでオリジナルなデザインが随所に施されており、グッズ販売も手掛けている

フルーツビールシリーズの「マンゴーオレンジパッションフルーツクレームブリュレ」、スイーツを連想させる「ピーナツバターチョコレートビスケットバニラ」など、ビールの概念を覆すような商品が提供される。ボトルのラベルデザインやオリジナルグラスも特徴的で、外観からは想像もできないような真っ青な店内ではTシャツなどのグッズも販売している。

再生を目指す兜町の追い風になりそうなのが周辺地域の変化だ。8月1日現在、兜町を含む日本橋地域に住む人は5万1859人で、10年前に比べ1.5倍に増えている。兜町からほど近い日本橋もかつて週末の人通りは少なかったが、今では商業施設やマンションが建ち並び、平日以上のにぎわいを見せている。日本橋川の上を走る首都高速道路が地下化されれば、街の風景はまた新しいものになるだろう。歴史ある町並みと、若い世代による個性ある文化の発信が融合することで、兜町はさらに味わい深い街になりそうだ。

(中村奈都子)


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