2020/9/6

ほかの雌の卵も育てる「共同営巣」

ある日の午後、たくさんのダチョウが暮らす一角を見つけた。私たちの前方では、1羽の雌が巣に座り込んでいる。巣の主人である雄は数百メートル離れたところで草を食べていて、さほど注意を払っているようには見えない。ところが別の雄が750メートル以上も離れた場所に姿を現すと、断固たる足取りで侵入者に近づいていった。パートナーを独占するために、ライバルを追い払おうというのだ。

さらに驚くのは、巣を構えたつがいが、訪れてくる別の雌たちに対して示す反応だ。鳥のなかには、子育てという退屈な仕事を免れるために、自分の卵をほかの鳥の巣に紛れ込ませようとするものがいる。ダチョウ以外の鳥たちは、この「托卵(たくらん)」をする鳥を寄せつけないため、防御策を考え出してきた。

でも、ダチョウは違う。別の雌が近づいてくると、巣を守る雌は立ち上がって脇に寄り、訪問者に、自分の卵の横に産卵させることがよくある。ある研究によれば、巣を守る雌が首尾よく孵化させられる19~20個の卵のうち、通常、自分の卵は半分程度にとどまるという。残りは別の雌のものだ。

これは托卵というよりも共同営巣であり、複数の相手との交尾と同様に、危険に満ちた世界でダチョウが繁殖を成功させるための方法なのだ。

雌のダチョウたちの関係は姉妹愛に満ちているわけではない。1979年に共同営巣について初めて詳述した生物学者のブライアン・バートラムによると、巣を守る雌にはあまり選択肢がないのかもしれない。訪れた雌を拒めば争いが起き、ライオンなどの捕食者を引き寄せかねない。大半を占める自分の卵が割れるおそれもあるし、その臭いをかぎつけてハイエナやジャッカルがやって来るかもしれない。

共同営巣は巣を構えたつがいにも一定の利益をもたらすと、バートラムは述べている。一帯の多くの雌と関係をもつ雄にとっては、近隣の雌たちが巣に産みに来る卵のおそらく3分の1ほどは、自分が受精させたものだ。巣を守る雌にとっても、ほかの雌の卵を巣に入れることでリスクが減る。

どうやって見分けるのかは不明だが、雌は自分の卵を常に巣の中央に置き、別の雌の卵を外側に追いやるのだ。孵化してからも、より多くのひなが一緒にいれば、自分のひなが捕食者に殺される確率が低くなる。

(文 リチャード・コニフ、写真 クラウス・ニガ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年9月号の記事を再構成]

[参考]ここでダイジェストで紹介した「意外としたたか ダチョウの素顔」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2020年9月号の特集の1つです。このほか、工場、在庫管理、農場での収穫、介護などで、ロボットと人間が共生する現場をリポートする「ロボットがいる日常」、地球温暖化で文化や経済に影響が出始めた北米「五大湖 凍らない冬」、40年前に民主化運動を率いた労働組合が誕生したグダニスクの今を見る「ポーランド 反骨の港町」などが収録されています。Twitter/Instagram @natgeomagjp

ナショナル ジオグラフィック日本版 2020年9月号[雑誌]

出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210円 (税込み)