意外としたたか 飛べないダチョウの生き残り戦略

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/9/6
ナショナルジオグラフィック日本版

南アフリカ共和国の喜望峰に程近い海岸線に堂々と立つ雄のダチョウ。体高2.75メートル、体重135キロにもなる世界最大の鳥にはユーモラスな魅力があるが、捕食者たちにとっては手ごわい相手だ(PHOTOGRPH BY KLAUS NIGGE)

ダチョウに、とぼけた鳥というイメージをもつ人は多いようだ。しかし、ダチョウの生存戦略は想像以上にしたたかだ。ナショナル ジオグラフィック9月号では、アフリカの大地に暮らす飛べない鳥の生態をリポートしている。

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身の危険が迫ると、敵の姿が見えなければ敵にも自分が見えないとばかりに砂の中に頭を突っ込む――このダチョウのイメージは、古代ローマの博物学者プリニウスが2000年も前に述べた説の受け売りにすぎない(彼はときに事実に反することを書いた)。

ダチョウの姿を思い出してみよう。骨張った長い脚、筋肉と羽根でできた大きなゴムボートのような胴体、首は潜望鏡のように長く伸び、地上2.75メートルの位置にあるくさび形の頭部にはゾウよりも大きな目玉が付いている。砂の中に頭を突っ込むことなど、できそうにない。

ただダチョウは、地面の近くまで頭を下げる。植物を食べたり、巣を手入れしたりするためだ。人間より10個も多い17個の頸椎をもつ彼らの首は軽く柔軟で、上下、左右、前後に楽々と動く。巨大な目は、いつも周囲を注意深く見張っている。

ダチョウが注意深いのには理由がある。第一に、彼らはライオンやヒョウ、ハイエナ、リカオン、チーターなどと同じ土地に暮らす 「特大のニワトリ」、すなわち飛べない鳥だからだ。ダチョウの成鳥は敵を蹴って骨折させたり、足の爪で敵の内臓をえぐり出したりすることもでき、簡単に餌食になることはない。ただ、戦うより逃げることに長けていて、逃げる速さは最高で時速70キロ近くになる。

警戒を怠らないもう一つの理由は、子どもが常に危険にさらされているためだ。ダチョウは開けた場所の地面に巣を作るため、腹をすかせた捕食者に狙われるのはもちろん、不注意なゾウに卵を踏み潰されるおそれもある。無事に育つには、かなりの幸運が必要だ。最初の卵を産んでから孵化するまで2カ月以上もの間、巣を隠し通すか、いつでも守れるように警戒していなければならない。孵化が失敗するのはよくあることで、ダチョウが一つの巣を共同で使うようになったのはそのためだろう。

そして、繁殖期のダチョウは、雌雄どちらも複数の相手と関係をもつ。進化の観点から言えば、複数の相手と交尾することは、できる限り多くの巣に多様なDNAを取り入れたり、大半の巣が駄目になる現実を補ったりするための方法なのだ。

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