現状満足の部下 アスリートに学ぶやる気の引き出し方
(1)上方比較・下方比較
写真はイメージ =PIXTA
「心の法則を読み解く心理学は、ビジネスのあらゆる局面にかかわってくる」。心理学者であり、MP人間科学研究所代表を務める榎本博明氏はこう話します。心理学の知見をビジネスの様々な局面で生かせるようにQ&A形式でまとめた最新刊『ビジネス心理学大全』(日本経済新聞出版)から、「chapter1 モチベーションの心理学」の章を紹介、「どうしたらやる気が高まるのか」を考えていきます。
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仕事が今イチな部下がいるのですが、なぜか現状に満足している感じで、改善しようといった意欲がみられません。むしろ仕事ができる部下の方が自分の現状に納得していない感じがあります。どうも逆のような気がするのですが、どうしたら仕事が今イチな部下をやる気にさせることができるでしょうか?
仕事ができる人物の方が自分の現状に満足せず、さらなる実力向上を目指して自己研鑽に励み、未熟で力が足りない人物の方が現状に甘んじ、とくに危機も感じず呑気にしている。そのようなことは、たしかによくあることです。
それこそがモチベーションの違いでもあるわけですが、仕事が今イチな人物には、何とか力をつけてもらわないと困ります。給料を払っているからには、戦力になってもらう必要があります。そのためには、どうしたらよいのでしょうか。
そのような人物をいつまでも雇っていられる時代ではない、といった厳しい声も聞こえてきそうです。でも、そこには多くの人の中に潜んでいる心理が絡んでいるので、無下に切り捨てるわけにもいきません。その心理を理解すれば、対応の仕方も見えてくるはずです。
失敗談が好まれるのは、親しみがもて、警戒心が解かれるため
唐突に思われるかもしれませんが、ここで失敗談について考えてみましょう。
失敗談には、人の気持ちをほぐす心理機能があります。営業先でも、社内でも、雑談の中で失敗談を話すと場が盛り上がり、友好的な雰囲気になると言われるのも、そうした心理機能があるからです。