焼きたてを通販で 「ロハコブレッド」コロナ禍で2倍に
オフィス用品のアスクルが手掛ける電子商取引(EC)、「ロハコ」がさまざまなヒット商品を仕掛けている。コロナ禍でヒットしたのが、焼きたてのパンが届く「ロハコブレッド」。日々食べるパンを通販専用の商品にすることで、意外なメリットがあったという。ECで日持ちのしない商品を届けられる仕組みを聞いた。
近年、ロハコが力を入れているのが、オリジナルの食品・飲料のプライベートブランド(PB)商品だ。商品が到着してからの取り出しやすさを工夫したオリジナルダンボール入りの5本入り「LOHACO Water 2L」。発送当日に精米することで鮮度の高い状態で自宅へ届け、ハサミ無しでも開封可能な「ろはこ米」が次々にヒット。消費サイクルの早い米や水は、ユーザーが何度もサイトを訪れたくなる仕掛けとなった。
そして、「通販で焼きたてのパンを買う」という新たなトレンドを生み出したのが、2019年9月に満を持して発売された「ロハコブレッド」だ。新型コロナウイルス感染症対策で外出自粛が続いた影響も後押しし、20年4、5月の売り上げは3月比約200%と伸びた。しかも「他商品と比べて圧倒的なリピート率がある」(ロハコ)というのが特徴だという。ユーザーの再訪を促す、同サイトの看板商品へと一気に駆け上がった。
開発のきっかけをアスクル マーチャンダイジング本部 LOHACO生活用品統括部で飲料・食品を担当する立花智子氏に聞くと、「通販のパン市場は巨大なブルーオーシャンだった」という答えが返ってきた。総務省統計局「家計調査(家計収支編・総世帯)」によると、1世帯当たりのパンの支出金額は11年以降ずっと米を上回り続けている。そこへ、高級食パンブームも到来。ロハコでも仕入れ商品である、ロングライフパン(特別な酵母を使用した消費期限の長いパン)の売り上げも伸びていたが、ロングライフパンは、菓子パンのような、甘くて味の濃いモノが中心。「お米のように、主食として食卓に並び、毎日食べられるパンを売り出したいと考え、開発に至った」(立花氏)という。
ラインアップも豊富だ。敷島製パンやタカキフードサービスパートナーズと協力して生産しており、水を一切使用せず、牛乳や豆乳のみで仕上げた「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込み358円)や、国産小麦にこだわったハード系のパン「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」(税込み239円)などがある。ユーザーからは「パン屋さんに行かずにこれだけの味を手軽に食べられるのは便利」と軒並み好評だ。
秘訣は注文直後に解凍して配送するシステム
ロハコブレッドがヒットした要因は大きく分けて2つ。1つ目は、ECでのパン販売を可能にした独自製法だ。焼きたてパンの通販は、技術的には高い障壁があった。「パンは消費期限が短く、手元に届くまで時間がかかる通販には不向き。冷凍して送れば消費期限の問題はクリアできるが、今度は送料が跳ね上がってしまう。またパンはスペースをとるため、家庭用の冷凍庫では容量を圧迫してしまう」(立花氏)
そこで考案したのが、パンを焼き上げた直後に、瞬間冷凍し、受注が入った数量のみを発送日に解凍する方法だ。「ろはこ米で採用している、発送当日の精米という手法がヒントとなった。長時間低温発酵させた生地を焼き上げて、急速冷凍させることで、解凍後も焼きたての風味や食感が維持できる」(立花氏)
2つ目の特徴は、サイズだ。一番人気の「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込358円)は、通常の食パンの8割ほどと小さめに作られている。市場調査によって単身の人を中心に、トースターを持たない人が増えていることが分かったため、「生食でもおいしく、手軽に食べきりやすい小さめのサイズを選んだ」(立花氏)。
ロハコブレッドのヒットは思わぬ好影響も生んだ。「パンのお供」としてジャムやオリーブオイルなどの商品が選ばれることも増えた。「最近では、メーカーからコラボ販売の提案をもらうこともある。例えば、食パンとスープの朝食セットやバケットとテリーヌのワインのおつまみセットというケースもあった。毎日の献立を考えるのは意外と大変。ユーザーの食卓に新しい提案が届けられると思うので、拡充していきたい」(立花氏)
今後はさらなるラインアップ拡充を目指す。パンは種類を増やせば増やすほど売り上げが伸びることが分かっており、ゆくゆくは人気ベーカリーとのコラボも視野に入れている。どこに住んでいても自宅で各地の有名店の味が楽しめるようになる。
ロハコブレッドは、26都府県のみでの販売だったが、好評を受け発送拠点を強化。20年6月26日より沖縄や一部離島を除く46都道府県で販売を開始し、さらに拡大を続けている。
(ライター 井澤梓、写真 fort)
[日経トレンディ2020年8月号の記事を再構成]
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